映画『世界の果ての通学路』に想うこと。 〈18JKI07〉

現在、日本をはじめ、先進各国では子供たちが教育を受けることは当然であり(国民の義務であり権利)、また、その通学路は原則として比較的近距離の徒歩圏か、専用のスクールバスやその他の交通機関の利用で充分通える距離とされている。そして、子供たちも親たちも、長い歴史的な背景と先人たちの数限りない試行錯誤や紆余曲折の結果によって、(多額のコストに支えられた)この現実が構築さていることを、ごく自然のこととして受け止めているのが実情だ。

そこで、「学校に通うということ」を、私たち日本人はどう考えているのだろうか? 大多数の人々が、上記の通りに特に考えるまでもなく当たり前のこととして捉え、中には、出来ることならば「通いたくはない」と思っている子供たちや、「通わなくても良い」と考えている親たちもいるに相違ない。

一方、世界の国々には、この映画に登場する子供たちのように、まったく整備されていない苛酷な通学環境の中を、「学校に通いたい=学びたい」という目的のために、毎日、危険を顧みず登校しているケースもあるのだ。

 

かつて明治の日本人たちは、西欧列強の国々に比べて大きく立ち遅れた我が国の科学技術や各種の産業、政治・経済から軍事力などの諸事情を鑑み、万民、皆が(たぶん中には遠距離の危険な通学も厭わずに)必死のおもいで「勉学」に励んだ。決して裕福とはいえない、どちらかと言えば貧しき生活の中で、それぞれの立場に応じて、精一杯真摯に「学ぶこと」に力を注いだ結果が、近代(戦前)において日本をアジアで唯一の先進国に育てあげたともいえる。

しかし、今日の日本の現実といえば・・・一部の親たちはモンスターペアレントと化し、ある者は幼児虐待に走る。子供たちの間ではいじめがはびこり、先生たちはサラリーマン化して教育に関する情熱の多くは失われた。まさしく、こんな日本に誰がした・・・と言いたい。豊かさの中で、人(ひと)はやがて本当に大切なことを忘れていくのだろうか・・・。

 

私たち日本人は「学校へ通うこと」、いや「通えること」がいかに幸せであるかを忘れて久しい。だからこそ、「学校に通える」ことの有難さを、子供たちともども、もう一度よく考えてみよう。そのきっかけとなるのが、この映画 『世界の果ての通学路』ではないだろうか。

「学校へ通うこと=学ぶこと」は人(ひと)にとって未来への扉を開く鍵であり、その鍵を開けるために、世界のどこかで、今日も子供たちは道なき道を何時間もかけて通学するのだ。さて、日本の子供たちよ、君たちはどうする?  

映画『世界の果ての通学路』は、4月から東京・シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開される。

 

↓最後にコメントをいくつか紹介しよう。(いずれも映画公式サイトより)

かつてこれほど刺激的で、夢あふるる通学路があっただろうか!学校への道を突き進む子供たちは、美しい。 (石丸謙二郎/俳優)

目を輝かせて学校に通う子どもたち、たくさんの愛で見守る家族。見ているだけで、胸がジーンとなる。(久保純子/フリーアナウンサー)

都会に暮らす親にとって、これ以上、シュールな現実はない。学校へ送り出す朝、神へ切なる祈りを捧げる親と、 あまたの危険を避けながら、道無き道を行く子どもたち。学校へ着くことそのものが、まるで奇跡のような・・・。 小さな胸に宿す、大きな夢だけが頼りだなんて!ここには、厳しくも、成長することの煌めく尊厳がある。 これが、お伽話でないことを肝に銘じます。 (内田也哉子/文筆業、sighboat)

「毎日が大冒険!」な通学路。信じられない日常に、ハラハラドキドキ!地球のでっかい大自然と、 子ども達の胸キュンな笑顔に心を洗われた後、 これまでの全てに感謝したくなる。学校って、こんなに貴い場所だったんだ!(たかのてるこ/旅人・エッセイスト)

どんなに危険でも、どれ程時間がかかろうと子供達はひたすら学校に通う。それは抱いた夢を実現したいからだ。(草野仁/TVキャスター)

 

-終-

【参考】前売り券のWEB購入専用ページから『世界の果ての通学路』の全国共通前売り券を購入されると、開発途上国の飢餓と先進国の生活習慣病の解消に取り組むNPO法人TABLE FOR TWO Internationalを通じて、1枚につき学校給食1食分である20円が寄付される。

 

【おまけ】

2014年3月7日(金)に放映された日本テレビの『なんでもワールドランキング ネプ&イモトの世界番付』でも、「世界の危ない通学路番付」が発表された。これまた、まさしく世界の果ての通学路に相応しい内容だ。

第1位 中国 新疆ウイグル自治区のパーミアン高原ヒーピー村の命懸けの集団登校
毎年9月、村の子供たちは200km離れた寄宿学校まで、役人たちに護衛されて旅立つ。途中には、切り立った山や崖が沢山あり危険極まりない。最初に激流を渡り、次に300mの断崖絶壁を登り、最後の難所は砂漠地帯だ。炎天下をひたすら歩き、更に山や谷を丸2日間歩いた後に、やっと学校に無事到着できた。 

第2位 南米コロンビア 天空の通学路
ある山奥の村。8人の少年少女は、橋の架かっていない巨大な渓谷を、滑車につないだロープを体に巻きつけて、時速50kmもの速さでワイヤーにぶら下り渡る。谷は200mもの深さがある。 

第3位 フィリピン タイヤのチュ-ブで激流下り
二人の姉弟は、大きなタイヤ・チューブに乗り、激流を下って学校まで通う。姉は手に持ったサンダルで、弟は絶妙な体重移動でチューブを操っていく。そして帰りは岸辺をチューブを担いで帰るのだ。

 

【続報】 『世界の果ての通学路』が、2016年4月30日にNHK・Eテレ15:00~で放送された。

 

 

《スポンサードリンク》