我が音楽趣味とオーディオ遍歴 “第1.1世代/Season-1.2” 〈759JKI07〉

本格的にJazz、特にモダン・ジャズの虜となった切っ掛けは、1975年の後半ごろに自宅の近所に小さなジャズ喫茶が開店したことにある。親しい音楽仲間の友人と彼の兄に連れられて初めて店の扉を開けた時は、今迄に体験したことのない大人の世界に足を踏み入れた気がしたものである。当時、その友人の兄貴は大学生で某大学のジャズ研究会の猛者であった。以後、この兄者(アニジャ)から受けた影響は大きいが、その2年後には就職してきっぱりとジャズ人生から足を洗ってしまった。

こうして毎日の様に通い始めたジャズ喫茶は、有名なジャズアルバムの題名をその店名にしていた。夕方からの開店で、明け方の4時頃までの営業である。筆者は深夜12時を過ぎてから、こっそりと家を抜け出してはチャリで5分とはかからないこの店に向かった。そして学校の宿題も、ほとんど真剣には取り組まなかった受験勉強も、実はこの店でコーヒーを飲みながら過ごした時間に行っていた。またアルコールを注文する客を見掛けた記憶がないので、酒を置いていなかったのかも知れない。更に深夜帯は他の客はほとんどいなくて、筆者一人がポツンとレコードを聴いていることが多かった。

やがて常連客としてマスター(当時の年齢は30代後半から40代前半だっただろうか…。眼鏡をかけた穏やかで知的な感じの人で、外見はユーミンの旦那の松任谷正隆氏に似ていた)とも親しくなった。ジャズ初心者の筆者にとっては、当面の師匠的な役割を果たしてくれたのがこのマスターであったが、この後、共に通っていた友人たちと張り合いながら急速にジャズの知識を身に付けていくことになるが、それは当時、弟子の中で誰が一番早くジャズにより詳しくなって、我らのマスター(師匠)に認められるかを競っていたからである。

アルテック A7

刻苦勉励!?と高い訪店頻度の甲斐があってか、筆者は3年生になる頃にはマスターが買い出しなどで留守の時には店番を頼まれるまでになっていた。取り敢えずコヒーの淹れ方を学び、必死でジャズの知識を学習したおかげで、ほぼ一般的なリクエストにも応えられる程度にはなっていたのである。

開店間もない店にはマスターが以前から収集していた1,000枚超くらいのジャズLPが置かれていたが、筆者は新しく入手したLPのディスコグラフィのデータをレコード帳(バインダ式のノート)に記入する仕事なども手伝っていたので、どの様なレコードを保有しているかも充分に把握していた。

コレクションの傾向はハード・バップ期のコンボ主体(特に金管楽器のアンサンブルものが多く、ワンホーンやピアノトリオ等は存外に少なかった)ではあったが、ヴォーカル物(40年後半から50年代の女性白人ヴォーカル)もけっこうあったと記憶している。また当時の幻の名盤ブームのあおりを受けて、毎月掘り起こされる旧譜の購入には随分とコストがかかっていた様である。

プリアンプはこんな感じだったが…

さてこの店のサウンド・システムについてだが、実は意外なほど詳しく覚えていない。スピーカーがアルテック(ALTEC)のA7だったことは間違いないが、しかしそれ以上の詳しいこと(バージョン、各ユニットの構成やネットワーク・エンクロージャーの詳細)などは解からない。

残念なことに、アンプに関してもウロ覚えだ。海外製品で、その外見はソニー(SONY)の TA-E88+TA-N88の様な(薄型の)デザインのセパレートアンプを使用していたことは間違いないのだが、今般、本稿執筆に当たりネットなどで調べ直しても判明しなかった。ちなみに TA-E88+TA-N88は、大学時代の知人が所有していたので、その姿をよく覚えていたオーディオ機器だ。

AUDIO OF OREGON BT-2

また、このアンプに関しては、後に再会した友人で当時この店でよく顔を会わせていた人物が、オーディオ・オブ・オレゴン(Audio of Oregon)の BT-2とCC-2の組み合わせだったと話していたが、発売時期の若干のズレやそのシャーシの色味の違いから、筆者の記憶とは相違している。

 

DENON DP-7000

プレーヤーは、開店当初はトーンレス(Thorens)のものを2台並べて使用していたと思うのだが、暫くしてターンテーブルがDENONのたぶんDP-7000あたりで、トーンアームはSAECのWE-308シリーズの何れか(もしかしたらSMEの3009シリーズかも)を使ったものを、これも2台並べたツイン設置に替わる。但し、申し訳けないがカートリッジの機種は忘れた。二つのプレーヤーともシェア(SHURE)V15 type-Ⅲだっかなと思うが確証はない。

SAEC WE-308N

また当時、マスターから、ジャズにはシェア(SHURE)のV15シリーズが向いていると聞いた。音離れの良さや打楽器のカラッとした響き、前に出る中低音。どの専門誌にも同様のことが書いてあり、以来、筆者にはそのことが心に刻まれてしまう。

 

だがその後、筆者が大学に入学する直前に我家は神奈川県横浜市の郊外に転居してしまい、転居後にも数回は訪問した覚えがあるが、結局、この店との付き合いはわずか2年少々で終わってしまった…。

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