火災による高齢者の被害が後を絶たない中、耳の遠いお年寄りや聴覚障害のある人に火事の発生をどう知らせるのか?
そこで「光る火災警報器」の設置の義務づけについて、消防庁が検討を始めた・・・。
火災の犠牲者のおよそ7割が65歳以上だそうだ。つまり消防庁が光る警報器設置の義務化を考える理由の一つは、高齢者が犠牲になる火災の多発による。
消防庁のまとめでは、火災による死者に占める高齢者の割合は年々増え続け、昨年は全国の住宅火災による死者のうち、70.4%が65歳以上の高齢者だったという。記憶に新しい、昨年(2013年)10月に福岡市で発生した診療所火災では、亡くなった10人全員が70歳以上だった。
一般的な火災警報器が煙や熱を感知して音で火災の発生を知らせるのに対し、光る警報器は強い光の点滅で火災の発生を知らせる。4,000~5,000円で販売されている一般住宅向けの光る警報器を自宅に設ける聴覚障害者は増えているようだが、ホテルや劇場、百貨店、病院など、大規模な集客施設での設置は進んでいないとのことだ。
消防法は集客施設などに、音で知らせる従来の火災警報器の設置を義務づけているが、現状では発光による警報器についての規定はない。
東京理科大の小林恭一教授(消防防災学)は「現在の安全基準の多くが、障害のない働き盛りの成人を想定してつくられている。高齢化時代に合わせた新しい基準づくりを進める時期にきている」と指摘する。
ただ、対象となる大規模な集客施設などの、病院やホテルなど大きな建物で新たに光る警報器を設置する場合、合計で数百万~1千万円単位の費用がかかる。この為、法律で義務化を推進するためには、公的な支援制度を整えるなどクリアすべき課題も多いだろう。
消防庁によると、欧米や韓国ではすでに集客施設に光る警報器の設置を義務づける法整備が進んでいるという。国内で新たに法律化を進める上では、こうした海外の状況も参考にするべきである。
また火災警報器には、音や光で知らせるもの以外にも、振動や文字表示で知らせるものなど様々なタイプがある。特にユニークなものとしては、消防庁消防研究センターなどが数年前に開発した匂いによる火災警報装置があり、警報音を感知してわさびの刺激臭のする香料を噴き出す仕組みだという。
既に商品化されているが、1台5万円程度と高額な為に、消防庁予防課では「海外での使用実績からみても、まずは光る警報器の導入が現実的だ」と説明している。
更に消防庁は、聴覚障害者の協力を得て、今年1月から光る警報器の実証実験を始めた。
現在は、病院や空港、百貨店や地下街など全国の合計25ケ所での実験を終え、参加者から回収したアンケートなどの結果を分析している。光る警報器を設置する数や、設置1台がカバー出来る面積など、設置基準の作成に役立てる予定だ。
今後は、老人や身障者の立場で災害に対処していく仕組みの整備が、高齢者大国の我が国では急務であり必須となっていく だろう。費用対効果をよく精査して進める必要があるとは言え、その優先順位は非常に高い・・・。
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