ネット検索業最大手の米グーグル(Google)社は、軍事用ロボットなどの開発で有名な米ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)社を買収した。グーグルはボストン・ダイナミクスの買収を認めているが、金銭面での条件等については非公開だ。グーグルがこの半年のうちに買収したロボット関連会社はこれで8社目になるが、果たしてその目的は何なのだろうか・・・。
← 人型二足歩行ロボット『ATLAS』
【ボストン・ダイナミクスとは】
ボストン・ダイナミクスは、マーク・レイバート(Marc Raibert)氏によって1992年に米マサチューセッツ工科大学関連のベンチャー企業として設立され、合衆国の軍や国防総省傘下の国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency/DARPA:軍事利用のための技術開発および研究を行う機関)と共同でロボット開発を行ってきた。DARPAからの資金提供による、歩兵に随伴可能な物資輸送(輜重)ロボットの『BigDog』の開発で世界的にも有名になったロボット開発会社であり、陸軍の先端装備調達部署REF(Rapid Equipping Force)からも資金を供与されるなど、軍事産業の中でもロボット関連の先端技術の開発を担う企業である。また、その開発中のロボットの多くが「生物模倣型ロボット」であることも特徴だ。
↑四足歩行 輸送ロボット『BigDog』
『BigDog』は2005年にボストン・ダイナミクスとジェット推進研究所やハーバード大学が共同で開発した四足歩行ロボット。全長は約1m、高さ約70cm、重量約75kg。15馬力の2ストローク単気筒ガソリンエンジンを搭載し油圧により脚などを動かしている。また、154kgの物資を積載して時速5.3kmで歩行し、最大35度の斜面を登坂可能、とされている。最近の発表では、このロボットに腕(アーム)が付けられてコンクリートブロックなどの物体を放り投げることができるようになった。
↑『Cheetah』 の改良型『WildCat』
『WildCat』は時速45kmで疾走することができる四足歩行型最速ロボット。偵察や奇襲に使うのだろうか?まさか特攻兵器ではないよネ。
↑『LS3』四足歩行ロボット
『BigDog』を大型強化したロボットだ。呼べば答えるカワイイやつ・・・ってか。
↑人型二足歩行ロボット『ATLAS』
兵士用装備の試験用として開発された『PETMAN』の進化・汎用型が『ATLAS』だ。軍事用のみならず防災対策や災害救助にも利用が可能と考えられる。その歩行は日本勢や韓国製と比べても、なかなかスムースだ。
グーグルはボストン・ダイナミクスの買収に関して、軍事産業に進出する意図はなく、あくまでも商用・民生用ロボットの実用化にボストン・ダイナミクスの高度なロボット技術を応用していく予定だが、ボストン・ダイナミクスが合衆国の軍・国防総省などと締結している契約は継続する、と発表している。
【グーグルの野望】
グーグルはロボット技術のみならず、死亡事故0を目指す無人運転車(ロボットカー)の開発や、高々度気球ネットワークによる通信脆弱地域へのインターネット網の供給事業「Project Loon」、来年(2014年)発売予定で有料評価プログラムを実施中のメガネ型端末「Glass」 など、革新的なウェアラブル・デバイスから世界的なインフラ構築まで、各種の最先端技術を活用した事業展開に極めて積極的だ。
またグーグルのロボット事業部門はロボット開発会社の買収に意欲的で、この半年間で日本の東京大学傘下の人型ロボット開発のベンチャー企業シャフト (SCHAFT Inc )をはじめとする世界中のロボット企業7社を買収し、ボストン・ダイナミクスで8社目だ。このロボット事業部門を率いるのは、なんとグーグルの携帯端末用基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」開発責任者だったアンディ・ルービン(Andy Rubin)氏。グーグルはこれまでロボット事業の今後については発表を差し控えているが、ソフトのアンドロイドを世に送り出した後は、ハードというか本当(リアル)のアンドロイドを創るつもりなのだろうか?
最強最大のネット検索事業者としてインターネット業界に君臨し、更に「Google Map」で世界中の詳細な地理・地形情報を持つグーグルが、ロボット技術をどのように発展させて人類の未来に寄与するのか、非常に興味もあり期待も抱く反面、得体の知れない恐ろしさも感じるのだが・・・。
-終-
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