2013年11月26日に中国海軍初の空母『遼寧』が僚艦4隻を従えて青海を出港した。28日には台湾海峡を通過して南シナ海に入った模様だ。
この空母は、ウクライナから中国が購入した未完の『ワリャーグ』を改造・完成させたもので、基本スペックは下記の通り。旧ソ連において造艦中止となっていたものだけに、現在の水準からするといささか物足りない点が多々あるのだが、それなりの6万t級の中型空母であることも確かだ。
基準排水量 53,000t
満載排水量 59,100t
全長 305m
全幅 73m
速力 最大29ノット
乗員 1,960名
搭載機数 殲15 他 50~67機(推定)
「尖閣問題」に関連して中国が新たに設定した「防空識別圏」が、日米vs中国に加えて韓国や台湾なども巻き込んで一触即発の危機として問題視されている中での出航である。不測の事態が起きなければ良いのだが・・・。
ところで『遼寧』は、スキージャンプ台式の飛行甲板であるため重艦載機の発艦は難しい。強力な兵装と燃料を満載した艦載機を発進させるためには、どうしてもカタパルトのような設備が必要となる。そこで中国海軍は最新鋭の電磁式カタパルトを開発中であるという情報もある。面白いことに、高速鉄道の建設にあたり中国がJR東海の超伝導リニア技術の導入に積極的と言われた裏側には、この電磁式カタパルトへの応用を考えてのことである、との憶測もあった。
↑艦上戦闘機 殲15 (「日本周辺国の軍事兵器」より)
さて、モノづくりの見地から「空母」を考えてみると、数ある軍艦の中でも極めて維持・運用の困難な艦種であることは否めない。建造そのものはコストと時間をかければある程度可能かも知れないが、人材も含めた総合運用(艦載機関連、メンテと訓練、各種システムetc.)が極めて大変で、莫大な費用が継続してかかるのが現代の航空母艦だからだ。
また空母は単艦では防御力が弱く、対艦ミサイルや潜水艦から身を守る為にイージス艦などの複数の護衛艦を必要とし、このために空母打撃群/機動部隊を複数の各艦種で構成して初めて有効な戦力となる。更に通常の任務行動は3~5ケ月/年間であるため、常備戦力として1個の空母打撃群/機動部隊を編成するためには2~3隻程度の空母でのローテーションが必要だ。パイロットの育成も含む艦載機に関連する幾多の課題を考えるまでもなく、まさしく「どんだけ~」というくらい、カネはかかるし人員・組織や装備・設備の構築に時間がかかるのが「空母」なのである。【本記事の初出は2013年11月29日alruに掲載のもの】
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他の連載記事は こちらから ⇒ “「空母」を考える ”シリーズ
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