【OIC/へぇー!そうなんだぁー♪】の第2回。
『〇〇年問題』というのは、過去にも色々とありました。
何かの危機が訪れる時、この『〇〇年問題』が必ずと言ってよいほど取り沙汰されたものです。
そして今度は、音楽ホールの『2016年問題』です。2年後には、何か音楽ホールに問題が発生するということのようですが・・・。
2016年に向けて、東京近郊の主な音楽ホールの一時閉鎖が相次いで始まるとのことです。時期的に多くの施設が建て替えと改築のサイクルに入る上に、2020年の東京オリンピックへの対応のための改修工事が重なるからです。
大きなハコ(会場)の使用のメドが立たずに、有名外国人ミュージシャンたちが極東ツアーから日本を外す動きも出ており、音楽業界には大きな危機感が広がっています。
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有名大物ミュージシャンに人気で、首都圏の大規模コンサートの主力会場となってきた「横浜アリーナ」と「さいたまスーパーアリーナ」ですが、「横浜アリーナ」は完成後25年を経て改修を検討中であり、工事の内容によっては一時的に閉鎖される可能性があるといいます。また「さいたまスーパーアリーナ」も開業後15年を迎える2015~2016年度にかけて、設備の改修工事のために数か月にわたり閉鎖される予定です。
また長年ロックファンの間で『御三家』と云われていた3つのホールの内、「東京厚生年金会館」は既に2010年に閉鎖されており、2015年秋には「渋谷公会堂」が同一建物内の渋谷区役所の解体工事に伴って一旦閉鎖されます。最後の『御三家』である「中野サンプラザ」も、隣接する中野区役所の移転・再整備に伴い、2021年以降閉鎖される計画が検討されています。両ホ-ルはともに移転工事終了後に再度オープンされますが、それまでは使用が出来ません。
更に問題を大きくしているのが、2020年開催のオリンピック対応の改修工事の発生です。例えばハンドボール会場に予定されている「代々木体育館」は、改修工事のために閉鎖される可能性がありますし、ウエイトリフティング会場となる「東京国際フォーラム」のホールAも、床などの強化工事のために一時閉鎖となるようです。「日本青年館」は、「新国立競技場」の建設に伴い移転することになり、2015年3月末に閉鎖し移転終了後の2017年の営業再開となります。
また昨年(2013年)秋にオープンした「EXシアター六本木」は、「青山劇場」が来年(2015年)3月末に閉鎖される影響で、既に来年の夏まではスケジュールが一杯だそうです。当初予定の稼働率は70%でしたが、現在はなんと90%とのこと。このように音楽系のライブ会場だけでなく、芝居・演劇の会場も足りないという状況で、演劇界もパニックとなっているそうです。
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コンサートプロモーターズ協会の中西健夫会長によると「実は首都圏のホールは、改修や建て替え工事に入る前の今の段階でも、かなり逼迫(ひっぱく)しています」とのことです。ミュージシャン側からすると、現状でも希望の会場の獲得は困難のようです。
この原因としては、ライブ需要の大幅な増加が挙げられます。ネット社会の進展で音楽の楽しみ方も変わりました。レコード店でCDを購入する代わりにインターネットからのダウンロードにより好きな楽曲を楽しむ人々が増え、またミュージシャンと直(じか)に触れ合えるライブの醍醐味が重要視されてきました。
CDなど音楽ソフトの生産金額は、2013年はピークだった1998年のおよそ40%にあたる2,700億円にまで落ち込んでしまいました。しかし逆にコンサート等の観客動員数は伸張を続け、2013年には1990年代後半の2倍強の3,885万人にのぼりました。2004年以前は1,000億円にも満たなかったコンサートの総売上高も、2013年には2,300億円と増加しています。Tシャツなど会場内で販売されるグッズ等を加えると3,500億円規模ともいわれます。今の音楽産業はライブ(興行)活動が支えているといっても過言ではありません。
また、かつては若者の文化だったロックやポップスなどの音楽ですが、ファン層も年を重ね、現在はシニアの「元若者」が会場に足を運ぶ時代です。ローリング・ストーンズやポール・マッカートニーのコンサートには60代くらいまでのシニアが多くつめかけています。コンサートの内容は、そのミュージシャンの往年の代表曲が中心のため、シニア層も馴染み易いのでしょう。
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この4月にまとめられた「我が国の音楽産業の国際展開に向けて」という報告書の中で、知的財産戦略本部(本部長は安倍首相)は、コンサートなどの会場確保が最も困難になる音楽ホールの『2016年問題』について、「業界と関係省庁が連携し、大規模コンサート会場の確保や代替施設の確保等に向けて取り組むこと」が必要と言及しました。
しかし大幅な財政赤字の最中、知的財産戦略推進事務局の田口重憲内閣参事官は「公的機関が造って赤字になっても(困る)・・・」と述べており、政府・官公庁がホールや会場の新設に加担することには極めて慎重な姿勢です。舛添東京都知事も、2020年東京オリンピックに向けて計画していた「夢の島ユース・プラザ」などの改装を、建設費等の高騰を理由に見直す方針を表明しています。
1964年に開催された前回の東京オリンピックを機会に、「渋谷公会堂」や「代々木体育館」、そして「日本武道館」など多くの施設が建築されました。その後、各種のスポーツ・イベントや音楽コンサート会場として長く利用されてきたこれらを例に、会場の新設に期待していた音楽業界では「造っても決して無駄にはならない。コンサートなどに有効利用できるはず」と訴えているようですが・・・。
-終-
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