どんなコーディネートにもマッチするスポーティな上着だし、男女を問わず着用できる・・・。
最近ではバリエーションも豊富で色合いや素材も様々である。
19世紀の後半頃から、英国海軍が艦上の乗組員の防寒上着として採用していたのがピーコート(Pea coat)だ。艦橋などでの見張員用に用いられたことからブリッジ・コートやウォッチ・コートと呼ばれたり、他にパイロット(航海士)・ジャケットやパイロット・コートとも言う。
軍用以外としては、一般の漁師たちの間でも広く着用されており、現代でも特にフランスのブルターニュ地方の漁師などはよく使用している様だ。
もともとは、オランダで発祥した厚めの外套のことで、オランダ語でラシャのコートを意味する「pij jekker(ピイ エッケル」が英語の語源とされている。pijはラシャ(メルトン)のこと、jekkerとはジャケットで、18世紀の前半にはピーコートの原型が誕生していた。
両前6つないし8つの錨(碇)をあしらった大きなボタンの使用がトレードマークで、幅広のリーファー・カラーと手を温めるために縦に切り込みを入れたマフ・ポケット(中に着用した服のポケットに手が届く、切れ込みタイプのスラッシュ・ポケットを採用することもあり=ポケットに入れたものを取り出しやすく利便性も抜群)が特徴。素材はネイビーのメルトンなどが多く採用されているダブル・ブレスト型の腰丈のコートである。
尚、素材のメルトンとは、縮絨加工を施した後に表面を毛羽立たせた厚手のウールのことで、ラシャ(羅紗)とも呼ばれる材料だ。
ピーコートは、艦船上での厳しい気象条件の下で着用する為、風向などにより左右どちら側からでも上前を変えることが可能であり、また片方のボタンが破損したり外れても他方で留められる仕様となった。
ファッション性を重視した民生品は、シャツやセーターの上に直接羽織るタイプで細身のシルエットに作られており、通常の丈を更に短くしたデザインが多いが、昨今では逆に丈の長い婦人服もある。
また「両前仕立て」で左右どちらあわせでも着こなせる利点から、小ぶりなものならば、そのまま男女共用として利用することも可能だ。
最近では素材も、ウールだけではなく、モヘアやコーデュロイ、ストレッチ素材を加えたコットン、ポリエステル、ナイロンといった化繊素材などと多様多用となっている。
この様に、外套類(コート)の中でも丈が短くて軽快に動きやすく、気軽に着こなせる為にカジュアルな印象が強く、また様々なスタイルにもマッチすることから、男女を問わず幅広い年齢層に受け入れられているが、我国では比較的若年の社会人や学生層に普及している。
インナーにはタートルネックが相性抜群だ。羽織るピーコートがネイビーカラーならば、ホワイトやベージュ、グレーなどのタートルでコントラストをつけたコーディネートはバッチリだ。勿論、オーソドックスにネイビーやブラックなどのモノトーンテイストの重ね着も悪くない。また、タートル以外にも普通にシャツとかニット、カットソーもマッチする。
ボトムスには、エレガントなウールのスラックスからカジュアルなコットンパンツやジーンズまで種類を選ばない。
とにかくコーディネートの幅が広く、着こなしが簡単なのがピーコートの大きな特徴である。
カラーバリエーションもブラックやグレー、ブラウンにとどまらず、カーキやレッドなどと豊富になってきた。
伝統的なタイプにとらわれずに、その時々のTPOやコーディネートを意識してデザインやカラーを選んでみては如何だろうか・・・。
-終-
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