アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で描かれた、月面に「ロンギヌスの槍」が突き刺さっている場面を実際に再現しようという計画が発表されたそうです。その話を聞いて『エヴァ~』ファンだという若い友人が「凄~い!」と盛り上がっていましたが、彼女はこの槍の元々の由来を知らないと言っていました。そのことが、ちょっと残念だった私は「ロンギヌスの槍」の本来の姿を、簡単にご紹介したいと思います・・・。
『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』とは・・・
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場した「ロンギヌスの槍」を模した槍を、長さ240mm、重さ30gのチタン合金製(予定)で製作して、実際に月面に突き刺すことを目的としたプロジェクトが発動しました。
このプロジェクトは、アニメ放映20周年を記念して有志企業やメンバーなどによる『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』実行委員会によって実行されます。また実務面は民間団体HAKUTO(ハクト)が協力して行われるそうです。
打ち上げに必要な費用1億円は、クラウドファンディング「READYFOR」(応募期間は1月30日(金)から4月5日(日)23時までの65日間)によって『エヴァ~』ファンから集めるそうです。尚、目標金額を下回った場合は計画は中止(返金)となります。
また、この槍を月まで運ぶロケットの打ち上げは2015年末から2016年末を予定しているといいます。
「ロンギヌスの槍」とは・・・
さて本来の「ロンギヌスの槍」とは、もともとはキリスト教の新約聖書に記載されている「聖なる槍」=「聖槍」・「神槍」に由来しています。そしてこの「ロンギヌスの槍」を制するものは、世界を制すると云われてきました。
聖槍(せいそう、Holy Lance)は、ゴルゴダの丘で十字架に磔にされたイエス・キリストの生死を確認する為に、イエスの脇腹を刺したとされる槍のことで、刺したローマ兵士の名前が「ロンギヌス」(ローマ帝国の百卒長とされる)だったのでこの名称となったと伝えられています。但し、この兵士の本当の名前は「カシウス」であるとの説も有力です。この場合、槍の名は単に「カシウスの槍」だったものからイエスを刺した後に、「ロンギヌスの槍」と呼ばれる様になったとされますが、勿論、実際にイエスに槍を刺した人物がいたかどうかについても定かではありません。
また他の説には、ギリシャ語で槍を表す「ロンケー」が訛ったのだとする説や長い槍だったため「ロング」が訛ったとする説、そして古代ローマでは、「ロンギヌス」は「暗殺者」という意味だったので「ロンギヌスの槍」と名付けられたとする説等があります。
さて(実在したと仮定して話を続けますが)、ローマ兵士のロンギヌス(もしくはカシウス)のその後については、彼は目が不自由(白内障とも云われる)だったのですが、自身の眼がイエスの血に触れたことで視力を取り戻し、その後も様々な奇跡に遭遇したことを契機として回心し、キリスト教の洗礼を受けたとされます。後にカッパドギアで捕らえられ、改宗を迫られますが拒否して斬首刑に処されました。その結果、彼は殉教者『聖ロンギヌス(St. Longinus)』として敬われることになり、バチカンには『聖ロンギヌス像』が飾られています。
実は、聖書において「ロンギヌスの槍」などという名前の槍は登場していません。わずかに『ヨハネによる福音書』に短く「兵士が十字架にかけられたイエス・キリストの遺体を槍で刺したところ、血と水が流れ出した」という記述があるのみ(第19章34節)だとされていますし、その後どうなったかという記載もありません。
また、ローマ兵士ロンギヌス(もしくはカシウス)についても、福音書のいずれにも彼の名前は登場しませんが、外典の1つである『ピラト行伝』にその名が記載されているそうです。
こうしてイエスを刺し貫いた「ロンギヌスの槍」は、イエスの血を受けた「聖杯」や遺体を包んだ「聖骸布」、そして磔の刑に使われた「聖十字架」と並んで『聖遺物』となりました。
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