現在、「ロンギヌスの槍」と伝えられているものは、ウィーンのホーフブルグ宮殿で展示されているものを始めとしてカトリックの聖地バチカンの宝物館やポーランドのクラコウにあるゲガードバンク修道院など、世界中に数本が存在しています。しかし、どれが本物であるか、あるいはその全てが偽物であるかは、以前として確定していません。
何故(なぜ)複数の「ロンギヌスの槍」が存在するのか、ということに関しては、その背景に捏造問題があります。前述の様に、この槍の入手はイコール勝利の獲得に繋がり、戦闘において兵の士気を高める為に、キリスト教国では「ロンギヌスの槍」を発見し入手したという偽情報を流したというのです。
例えば、11世紀に第1回十字軍がアンティオキア攻囲戦で苦戦している時、イスラム軍に対して劣勢であった十字軍の兵士たちに、「ロンギヌスの槍」が見つかったとの情報が報じられたという逸話があります。
トゥールーズ伯レイモンの家臣ペトルス・バルトロメオという者が、聖アンデレのお告げにより聖槍を発見したと声をあげました。この報に接し、十字軍の将兵たちの士気は高まり、戦いに勝利を得ましたが、発見された槍の真贋を疑う声も多かった為に、真偽を問う裁判が行われました。バルトロメオはこの槍を携えて果敢にも火に飛び込みますが、大きな火傷を負って数日後には死亡してしまいます。
そして、(案の定)この聖槍はその後、行方不明となります。
またその所在に関しても、ホーフブルグ宮殿やバチカンなどの明確な場所以外でも、南極大陸で密かに保管されているとする説、ドイツの某所に隠されているという説、すでに失われたとする説、そもそもそんな槍は初めから無かったとする説もあります。
ところで、上記の南極説に関連した話としてヒトラーが南極で生きていたとする都市伝説がありますが、当然、信憑性は極めて低く、というか絶対にゼロでしょうね・・・。
さて、現在でもキリスト教徒に尊重されている『聖遺物』のひとつである「ロンギヌスの槍」。この槍の由来について解説してきましたが、そこには多くの説があり、本当のところは謎のままです。
しかし、人類の運命に大きな影響を与えてきた槍であることは確かな気がしませんか。今でも複数が保存されていて、『聖遺物』、そしてレガリアとして大切に保管されているのですから。
このプロジェクトは、もし成功すれば大きな話題となることは間違いありません。しかし同時に、なんだか危険な扉を開けてしまう様な気がします。宗教に根差した物について、あまりに浮かれて騒ぐのはどうでしょうか。つまりこれって、キリスト教の『聖遺物』を冒涜することにはならないのか、ということです。
でも、欧米のエンターテイメント作品(映画や小説etc.)にもバチカンを舞台にしたり、聖杯などを題材にしたものも沢山あるし、取り敢えずそんなに気にすることも無いのかなぁ、そうだ、あまり考え過ぎのは止めよう、と思うことにしました・・・(笑)。
-終-
【続報】
1月30日にクラウドファンディングサイト「READYFOR」にてスタートしたエヴァンゲリオン20周年記念特別プロジェクト『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』が、4月5日の午後11時に締め切られました。
最終的に集まった支援額は5,469万5,000円で、目標の1億円には届かず、プロジェクト不成立となりました。また支援金は返却となるそうです。
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