エブル(Ebru)とはトルコのマーブル・アート(ペーパーマーブリング)のことです。日本でいえば、まさしく墨流しですネ。
もともとはイスラムの経典(コーラン)や書物を飾るための紙の装飾美術で、古来よりの伝統的な技法だそうです。
エブルは、トラガカントガム(樹脂からつくる糊)を溶いた水をはった底の浅い容器(トレー)に、色とりどりの液体染料(化学物質は一切含みません)を垂らし、クシのような器具を使って引き伸ばしたり、筆で引っ張ったり、団扇(うちわ)であおいだりして、垂らした絵の具が偶然に作り出す美しい模様を紙に写しとります。英語ではペーパーマーブリングといわれ、水面にはった墨に油を垂らして模様を描く我が国の墨流しとも(色の使い方を除けば)極めて似ています。
その起源はインドとも中国とも言われていますが、カラフルなトルコのエブルは独自の発展を遂げてきました。中でも花模様の描き方は、19世紀の後半に初めてトルコで確立されたものです。花びらも葉っぱも全てマーブリングで描かれています。
元来は製本用に製作されていましたが、現代のトルコではエブルそのものを額に入れて飾る習慣が根付いています。また、作画の傾向は様々ですが、代表的なものは、花模様、カリグラフィー(アラビア書道)、大理石の模様などです。
では、そのまるで魔法のような芸術の製作過程を動画でご覧ください。
「Ebru Art – Silk」 制作:Duke Dillard
「Ebru Art – Seyit Uygur.mp4」 撮影:Huynh Tam
水面がまるでキャンパスのようです。その偶然にできた色彩と絵柄には魅入ってしまう美しさがあり、そのカラフルなマーブル模様を織りなしていく作者たちの筆先の動きからは目が離せません。また、水面上をクシのような器具を走らせると、たちまち違う模様に変わり、最終的に完成するまでに幾通りもの魅力的な姿を見せてくれます。
通常の絵画や染物にはない独特の魅力があり、体験してみることもできるようです。
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