今年は『不思議の国のアリス』発刊から150+1周年!! (その2) ついでに映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』公開記念!! 〈2288JKI24〉

『不思議の国のアリス』の刊行

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ジョン・テニエル画、『不思議の国のアリス』の挿絵(1865年)

ようやく1865年7月には、『不思議の国のアリス』と改められた物語が出版されます。この本は、前述の『水の子どもたち』と同じ18cm✕13cmの判形に赤い布地に金箔を押した装丁で、当初の部数は2,000冊でした。

キャロルは早速、刷上がった本を友人や知人などに配りますが、そこで挿絵画家のテニエルからストップの声がかかりました。何とテニエルは、初版本の挿絵の印刷具合が気に入らないと言うのです。

何度も書き直しを要求されたテニエルが、まさか仕返しの為に敢えて文句を付けたとは考え難いのですが、確かに残されたこの初版本には、インクの量が多過ぎる為か字が反対側の頁にまで写り込んでいる処があり、裏面の挿絵部分を邪魔していました。

その為、キャロルはマクミラン社と相談の上で一旦出版の中止を決め、初版本を全て回収して文字組みの段階からやり直すことにしました。

当時のキャロルは「今度の初版2,000部が全部売れたとしても200ポンドの損害。第二版の2,000部が売れれば、300ポンドの費用で500ポンド入るからそれで収支は合う。もっと売れたら利益が出るが、そんなことは無理だろう・・・」と悲嘆に暮れた様子を日記に書き記しています。

しかし、それから3ヵ月後の1865年11月、児童文学不朽の名作『不思議の国のアリス』は無事出版されて、各紙の書評でも賞賛を受け、また多くの読者に好評を持って迎えられました。

初版本の製作のやり直しは、費用を負担しているキャロルにとって大きな痛手でしたが、再度刷り直した版は、テニエルの挿絵も上々の評価を得て1867年までに1万部を売り上げ、再版を重ねて1872年には3万5千部、1886年には7万8千部に達しました。これには収支が合えばいいが、と気を揉んでいたキャロル自身も驚きました。

この『アリス』の出版により、ルイス・キャロルの名は瞬く間に世間に広く知られるようになりました。好評を受けたキャロルは続編『鏡の国のアリス』の執筆に1866年頃より取り掛かりました。そして続編は1871年のクリスマスには出版され、翌年のキャロルの誕生日(1月27日)までの短期間に1万5千部を売り上げます。

その後、二つの『アリス』の物語は連綿と版を重ね、マクミラン社はキャロルが死去した1898年までに『不思議の国のアリス』を15万部以上、続編の『鏡の国のアリス』を10万部以上出版しました。

また1890年には、幼児向けに短く翻案した(易しい文体で書き直されている)『子供部屋のアリス』が出版されています。また、この作品ではテニエルが自らの過去の挿絵に彩色を施しています。

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