今年は『不思議の国のアリス』発刊から150+1周年!! (その2) ついでに映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』公開記念!! 〈2288JKI24〉

『地下の国のアリス』の複製本と手書原書のその後

『不思議の国のアリス』の出版から20年後の1886年には、『地下の国のアリス』の複製本が出版されます。それはキャロルが、『アリス』シリーズの変わらぬ人気を受けて、読者の為に物語の原型である『地下の国のアリス』の複製本を出版することを考えたのが切っ掛けでした。

キャロルは出版にあたり、既にハーグリーヴス夫人となっていたアリスから了解を得て原本を借り受けて写真撮影し、それを基に書籍化したのです。ちなみにこの時、撮影を依頼したカメラマンに写真のネガを持ち逃げされたり、探偵を雇ってそのカメラマンを探し当ててネガを取り戻したりと、散々な苦労の末にキャロルは『地下の国のアリス』の複製版を刊行(1886年12月にマクミラン社から出版)しました。そしてこの複製版が完成すると、モロッコ革で特別に装丁した一冊をアリスに贈呈したそうです。

 

さてテニエルによって差し止められた『不思議の国のアリス』初版本の2,000部は、1,952部が未製本で紙の束のままでしたが、キャロルはこれをテニエルの許可を取った上で米国ニューヨークのアプルトン出版社に売却しました。

この内1,000部が初版第二刷として米国で製本・販売されました。また残りの952部については、英国から送った本文と米国で印刷されたタイトルページとを併せて製本し、初版第三刷として米国で販売されました。(現在、この合計1,952冊はコレクターの間で非常に高値で取引されている)

一方、英国では刷り直した版を第二版として1866年の日付で販売(但し実際には1865年11月には販売開始)しました。

友人や知人に配布した製本済みの最初の48冊は、刷り直した改訂版(第二版)と交換で返却され、その後、それらはロンドンなどの子供病院等に寄付されたとされていますが、これらは現存していたら、とてつもない価値(軽く数千万円以上)がつくでしょうね。(この内22冊の所在が確認されており、現在は5冊を除いて博物館や図書館が所蔵)

また、世界中でただ一冊しかないキャロルの手書本『地下の国のアリス』は、1926年に夫のレジナルドを亡くして困窮していた74歳のアリス・ハーグリーヴスによって売却されてしまいます。

そして1928年5月4日のサザビーズのオークションで最終的に当時の史上最高額である1万5,400ポンドにて、米国の書籍ディーラーであったA.S.W.ローゼンバックが競り落としました。

しかしローゼンバックは、やはりこの本は英国にあるべきものだと思い直して、大英博物館に対して1,000ポンドの寄付を沿えた上で買値(1万5,400ポンド)で売り渡す交渉をしましたが、これは博物館側に拒絶されてしまいます。

その後、この本は他の収集家の手に渡りましたが、第二次世界大戦後の1948年には、米国議会図書館の司書ルーサー・H.エヴァンズを中心とするアメリカ人有志により5万ドルで買い戻された後、大英博物館に寄贈されて、現在も同図書館において展示されています。

-終-

今年は『不思議の国のアリス』発刊から150+1周年!! (その1)・・・はこちらから

 

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