【実写版『攻殻機動隊』】撮影開始・・・ついでに「全身義体」や「光学迷彩」の実現に向けての話。 〈44JKI15〉

さて義体化に関する最近の現実世界の話題については、義肢に“感覚”取り戻す「人工指先」の話があります。義肢の人でも、センサーを搭載した人工の指先の感覚を電気信号に変換(返還精度は96%)して、指先で対象物をなぞった時のザラザラやツルツルといった感覚を神経に伝達して判別できる技術を、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とイタリアの聖アンナ大学院大学(SSSA)が共同で開発したと報じられました。

また手や腕を失っていない人の場合も、外科手術を施さずに専用の針を刺して肌内の神経に接続することで、同様の判別が可能とされています。

そしてこの技術は、感覚神経のメカニズム解明といった医学の基礎的な研究を始めとして、外科医療やレスキューへの活用、高度義肢の開発などの人体工学、そして製造業などのロボットの感覚センサーにも応用が期待されています。

 

続いては「光学迷彩」。これは、『攻殻機動隊』の作中において特殊な最先端光学技術を用いて装着者(物)を光学的及び熱領域で、視覚的並びに一部では電子情報的にカモフラージュする技術及びその装備の総称のことです。

使用時には、人間(ヒト)の視覚ではほとんど透明に近く見えるのですが、装着者(物)はあくまで実体として存在するので、音や圧力などの発生で探知され得るものです。加えて高湿度や塵や埃のある環境下では著しく効果が損なわれてしまいます。

 

そしてこの光学迷彩が、現実に実現しようとしている話です。この件に関連する技術としては、ここ15年間において「メタマテリアル」などの新素材を用いることによって一定の透明効果の実現が立証されており、また光学的な迷彩の対象となる物に「再帰性反射材」などを塗布した上で、対象物の背後の映像を外部よりプロジェクタで投影することで、ある程度の光学迷彩効果の実現が可能となっています。

最近では、米国のアイオワ州立大学が開発に成功したと発表した、レーダー波を抑える「メタスキン」の開発も同様の目的です。このメタスキンはフレキシブルで伸び縮み可能な素材なので、これで覆うことで物体をレーダーから発見され難い状態とします。今後、研究を進めれば可視光でも見えなくすることが可能とされ、まさしく「隠れ蓑」となるのです。

シート上のシリコンに、外径5ミリで厚さが0.5ミリ程度というリング状の物体を埋め込み、そのリングには液体金属のガリンスタン(ガリウム、インジウム、スズの合金)が注入されています。そしてこのリングはインダクタ(コイル)となり、また各々のリングが持つ1ミリ程度の空乏層によりコンデンサーともなるのです。その結果、リングは共振器として作動して一定の周波数のレーダー波を抑えることが可能とのことです。

実験の結果、8GHzから10GHzのレーダー波に関しては約75%程度を抑えることが出来たと発表されています。現行のステルス技術とは異なる手法ですが、研究が進んだ将来はステルス航空機などへの応用も見込める他に、該当のデバイスを更に小型化すれば、より短い波長の電磁波である赤外線や可視光からも見え難くすることが可能かも知れません。尚、この研究結果は『Scientific Reports』に掲載されています。

 

実写版の映画とは直接関係ありませんが、現実の世界で「義体化」や「光学迷彩」の開発・研究がその実現に向けて動いていることは大変興味深いですね。また現実が空想の世界に追いつき、やがて追い抜いていくかも知れない点では「電脳化」も然りで、今後、20年も経れば実際に『攻殻機動隊』のような組織が活躍しているかも知れません。でも第三次、第四次といった大規模な(核)戦争やテロの勃発はまっぴら御免ですが・・・。

-終-

 

 

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