4.雷装について・・・・・艦の中心線上に配置された61cm4連装魚雷発射管2基は、両舷いずれの方向にも旋回して発射が可能であった。またこの発射管は、船体中央部にある各々予備魚雷4本を収めた魚雷格納庫2基の前後に配置されており、フライング・デッキの支柱を避けながら片舷8門の投射能力を有していた。
『阿賀野』型軽巡の装備は当時の国内重巡並みの重雷装を誇り、米海軍の『アトランタ』級は53cm4連装魚雷発射管1基を両舷に配備していたが、英国の『ダイドー』級も53cm3連装魚雷発射管が両舷に1基づつ配置されているだけであり、『阿賀野』型は同時期に登場した米英の軽巡洋艦の雷装を遥かに凌駕していた。
5.機関について・・・・・『阿賀野』型の機関は艦本式ロ号重油専焼罐6基で、第一と第二の両罐は一室に収められ、他の罐には一区画を割り当てた5区画の罐室から構成されていた。
そしてこの罐の蒸気圧は日本海軍の歴代巡洋艦の中でも『大淀』型と共に最高の高圧高温罐であり、蒸気温度350度で蒸気圧力30kg/平方cm(主気初圧26kg/平方cm)であった。当時の重巡、例えば『妙高』型は蒸気温度300度で20kg/平方cm、『最上』型でも22kg/平方cmであるから、『阿賀野』型の高圧高温性能は画期的であった。
これに艦本式オールギヤード・タービンを組み合せて1基あたり2万5,000馬力の4基4軸推進とし、最大出力100,000馬力で最高速力35ノットを発揮したのである。
6.防御力・・・・・『阿賀野』型の防御は、一般的な軍艦の基本的な防御力の設定理念を踏襲し、自艦と同等の敵巡洋艦の放った15センチ級の砲弾に耐えられるものとされた。防御甲板には銅入り薄均質甲板のCNCが使用されており、重要区画には厚めの防御がなされていた。
舷側水線部の機械室や罐室側面には最厚部で60mmの防御が施され、艦橋操舵室の周りが40mm、弾火薬庫側面は30mm、上部甲板は20mm甲板で覆われていた。
7.船体・船型について・・・・・艦首は強く傾斜したクリッパー・バウであり、大きなシアー(船首部の上甲板が船首方向に進むに従ってなだらかに持ち上がっている形態)を持たせて凌波性を高めた平甲板型船体である。また水線下の艦首部は小型のバルバス・バウ(球状船首)となっており、速力の増大に役立っている。
艦首から順に1番主砲塔、そして背負い式の2番主砲塔の基部から艦の上部構造物が立ち上がり、対空機銃を挟んで艦橋とその頂上部に1.5m測距儀が、その後方に射撃方位盤を乗せた塔型艦橋が起立、更にその背後にトラス構造の前部マストが建っている。『阿賀野』型では、過去の多くの反省から艦橋構造物は小型でコンパクトなものとなっており、艦橋に引き続いて建つ一本化された集合型/結合煙突との間隔も適度であり、煙突の大きさとその傾斜角度も申し分ない。
この船体中央部の煙突の後には、水上偵察機等の運用に供する予備機用のプラットホームも兼ねたフライング・デッキ(飛行甲板)があり、水上機はこのデッキ後方のカタパルトにより射出された。そしてカタパルトの後方に後檣全体を引き締めている単脚式の後部マストと水上機の為のクレーンが設置されており、その後部マストの後ろの甲板上には3番主砲塔が後向きに設置された。
更に『阿賀野』型軽巡洋艦の特徴の一つには艦尾の形状があり、従来型の巡洋艦とは異なり、その艦尾はポツリと切り落とされた様な形で上甲板に向けて少し傾斜しており、艦尾の船底部分との境は鋭角となっている。そしてこれは所謂(いわゆる)「デストロイヤー・スターン」(駆逐艦型の艦尾)と呼ばれるもので、艦尾の船底部分が平面化され水線部付近にナックルをつけたようなこの形は、両舷から流れ込んで来た波・水流を押さえつけて推進抵抗の減少に役立ち、より少ない機関出力での高速航行を実現したとされる。
また元来、この艦尾の形状は高速航行時に艦尾から湧き立つ白波を防ぐ為に研究されたものとされるが、艦尾付近の水流の跳ね上がりを抑えて操舵性を良くすることにも貢献し、艦尾甲板での作業も行い易くなったとされる。
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