【製本講座】 本の構造を表す用語について 〈1647JKI34〉

製本や綴じ方の種類について…

・並製本…本文(本の中身)で使用している紙よりも丈夫で厚い紙を「表紙」として、針金や接着剤などで綴じる製本方法のことです。一般的に接着剤にはホットメルトというものを使用し、「表紙」と本の中身を同時に包んで後に三方を裁断して仕上げます。「表紙」と中身のサイズが同じ大きさとなり、「チリ」も「溝」もありません。そして「表紙」は、上製本とは異なり芯紙を使用せずに1枚の紙で仕上げ、「表紙」と中身が同じ用紙(紙質)となる場合もあります。綴じ方には、「無線綴じ」・「糸かがり綴じ」・「アジロ綴じ」等があり、「背」の形態は、原則として「角背」のみになります。

「並製本」のメリットは、「上製本」と比べて簡易な作りの為、製本コストが安価で製作期間が短縮可能で、新書や文庫本、雑誌、パンフレットやカタログなどに多く使用されますが、持ち運びに便利な反面、耐久性が低く傷みやすいので長期間の保存にはあまり向かない点がデメリットだと云えます。

しかし最近では、従来使用されていた接着剤のEVA(エチレン酢酸ビニル)より効果の高い、反応性ポリウレタン系ホットメルト接着剤を使ったPUR製本が普及し、EVAの場合と比較してほぼ倍の引張り強度が得られる為に、見開きのよく頑丈で長持ちする本が作れることや、環境対策に優れていることなど、様々な点で高く評価されています。

・上製本…「本製本」とも呼ばれ、「表紙」をボール紙などの芯紙に貼り「糸かがり綴じ」などの技法で「背」の部分に糸を通して本の中身を綴じて、更に補強としてボンドやニカワなどの接着剤を使用する高級な製本方法で、「並製本」の「ソフトカバー」に対して「ハードカバー」とも呼ばれます。尚「表紙」には、芯紙等に「表紙」を巻く二重構造が多いのですが、最近では1枚もののビニール(コーティングされた)「表紙」の場合もあります。

「チリ」と言って「表紙」部分を本の中身よりも 3mmほど大きく仕上げ、また、前後に必ず「見返し」をつけるようにします。表紙と「背」の間にも「溝」をつけ、見開き具合を良くしており、固い「表紙」が中身をしっかりと保護しています。綴じ方には、「糸かがり綴じ」・「アジロ綴じ」・「中ミシン綴じ」などが使われます。「背」の形態は本体の仕立てデザインの違いで、背の形が丸い「丸背」か、角張った「角背」となります。

「上製本」は高級な仕上がりの為、「並製本」より製作期間が長くコストが割高になってしまう点がデメリットですが、硬質な「表紙」により耐久性が高く丈夫で長持ちの為、長期保存に最適であり、布地(クロス)や革(レザー)など様々な素材で「表紙」を作ることが可能な為、その立派な外観によって高級感が得られることが大きなメリットとされています。そしてこの製本方法は、主に文芸小説や専門の学術・研究書、豪華な写真集・絵本・記念誌などに利用されます。

・中綴じ…「中綴じ」は、「背」を針金で綴じて断裁して製本します。二つ折にした紙の中頃にある折目を、即ち製本後にちょうど背にあたる部分を針金で留めて綴じるのですが、この方法は主としてあまり耐久性などを要求されない週刊誌などに用いられています。通常は針金を使って製本する方法の為、「針金綴じ」とも呼ばれます。

本の「のど」いっぱいまで開くことが可能ですが、「背」の部分が無いので「背文字」は印刷出来ません。また厚紙を使用する際には、スジ加工が必要となります。この「中綴じ」は製本の特性上、4ページ単位で増やすことになります。ちなみに、「中綴じ」製本の一種には「めがね」製本があり、これは針金を眼鏡のようにループ状にして綴じる方法で、「めがね」製本で「中綴じ」をすると、カレンダーのように壁に取り付けたり、紐をつけて保存することが可能となります。

・平綴じ…同じ針金で綴じる方法に「平綴じ」がありますが、「のど」の近くを側面から針金で綴じる製本方法です。紙の端から5mm程度を綴じ代として針金で留める場合が多い様です。比較的頑丈な製本が可能ですが、「のど」いっぱいまでは見開くことが出来きず、綴じ代の分だけ文字や図版などの印刷スペースが狭くなります。ちなみに最も簡易的な「平綴じ」製本には、1ヶ所止め、2ヶ所止めといった方法があります。

・無線綴じ…糸や針金などを使わないで、本の「背」を接着剤等で固めて「中本」(本文・本の中身部分)と接合・表紙で包んで綴じる方法のことで、「表紙」の部分も「中本」の「背」に塗られた接着剤の効果でしっかりと「中本」と接合されています。また、充分に丈夫で長持ちしますが、「見返し」などの加工をすると更に強度が上がります。

・糸綴じ…本の「背」を糸でかがって綴じ、更に接着剤で接合させます。丈夫で耐久性に富み、長期間使用される「上製本」などに使用されることが多い製本方法で、一般的に「かがり綴じ」とも呼ばれています。この綴じ方も、本の「のど」いっぱいまで開くことが可能です。

・ミシン綴じ…製本方法の一種には、糸ミシン機で「中綴じ」や「平綴じ」する「ミシン綴じ」がありますが、主にノートや絵本の他、預金通帳などに用いられています。ミシン目は通帳の場合の4mmくらいからノートの25mmぐらいまでの間隔で調節が可能で、糸は一区切りごとに自動的に切れるようになっています。針金等を使用せずに糸だけで綴じるので環境に優しく使用者にとっても安全で、また印刷面積/筆記面積を広くとることが可能とされていて、その為に絵本やノート等で多く利用されているのです。ちなみに糸ミシン機には、本縫い式ミシンや下糸を使わない仮縫い式ミシン、パスポートなどに使われる二重式ミシンなどがあります。

・アジロ(網代)綴じ…「無線綴じ」を改良したもので、折り工程で本の「背」の部分に切り込みを入れ、そこから接着剤を浸透させて接合し易くした製本方法です。「無線綴じ」よりも耐久性が高く丈夫で長持ちで、本の「のど」いっぱいまで開くことが出来ます。

・新聞型(スクラム製本)…針金や接着剤を使用せずに、二つ折りした用紙を重ね合わせていく製本方法です。「中綴じ」とは異なり“4”の倍数ではないページ数の場合でも、間にペラ紙を1枚挟むことで対応が可能です。主として、簡便な広報誌や申し込み用紙などに多用されています。

 

尚、和本については、巻子本・亀甲とじ・経本・粘葉装(胡蝶装)・大和とじ・四つ目とじ(唐本装)等がありますが、本稿では詳細は省きます。

 

書籍の判型などについて…

・A4判… 29.7cm × 21.0cm
・A5判… 21.0cm × 14.8cm
・A6判… 14.8cm × 10.5cm
・A7判… 10.5cm × 7.4cm(一般的な文庫サイズ)

・B4判… 36.4cm × 25.7cm
・B5判… 25.7cm × 18.2cm
・B6判… 18.2cm × 12.8cm

・AB判… 25.7cm × 21.0cm

・四六判… 18.8cm × 12.8cm

・単行本… 19.5cm × 13.5cm

・新書判… 11.0cm × 17.4cm

 

以上、書籍全般に関する用語や決まり事の一部をご紹介致しました。読書好き・古本マニアの方、是非、本の構造を知る上でのご参考としてください…。

-終-

【中古本講座】 本の状態を表す用語について…はこちらから

 

《スポンサードリンク》