我が音楽趣味とオーディオ遍歴 “第1世代/Season-1.0” 〈759JKI07〉

 ●プレーヤーはDD方式、パイオニア PL-1200

最後にレコードプレーヤーだが、パイオニア(Pioneer)の PL-1200(¥44,500-)を躊躇なく購入した。これもダイレクトドライブ(DD)フォノモーターとS字型トーンアームを採用した当時の新製品(前年1972年の発売)である。ちなみに前年くらいまでは、筆者もマイクロ(MICRO)製のMR322(定価、¥35,000-)などのベルトドライブ機をターゲットとしていたが、わずか1年でオーディオ界はDD全盛時代に一挙に移り変わっていたのだ。

少し前の1970年にテクニクス(Technics)が世界初のDD(ダイレクト・ドライブ)方式のターンテーブルであった SP-10を発売して以来、国産の普及価格帯アナログ・プレーヤーは一気にDD方式へと進み、各社が揃って同方式のターンテーブルを開発・発売を始めていたが、パイオニアがDD方式のモーターユニット MU-3000(1972年発売)に引き続き、同社初のDD方式のレコード・プレーヤーとして発売したのが PL-1200であった。

この機種は、駆動モーターに超低速ブラシレスDCサーボモーターを用いたダイレクトドライブ方式を採用している。ベルトやアイドラを介さず直接ターンテーブルを駆動することで、伝達系に起因する回転ムラやモーターの高速回転によるモーター振動を追放することに成功、低振動でワウフラッター0.06%以下(WRMS)でS/N 55dB以上という優れた特性を得ていた。

また、トランジスタとダイオードで構成されたサーボ回路により一旦、設定された回転数を自動制御し、周辺温度や電源電圧の変動に影響されない正確な回転数を実現した。更にレコードの回転速度切換えには、電子回路の定数切換だけで行える純電子式を採用しており、またターンテーブル外周に刻まれたストロボスコープを監視しながら、回転数の各々(LP 33 1/3回転、EP 45回転)で独立して±2%の範囲内で微調整が可能である。

トーンアームにはスタティックバランス方式のS字型が採用されており、アーム軸受部はピボット形状で、軸受部の形状・材質を吟味することにより感度が大幅に向上している。更にインサイドフォースのキャンセルには、スプリングとカムを組み合せたパイオニア独自のアンチスケーティング機構を用い、針圧目盛の数値がそのままアンチスケーティングバイアス値を示した。これはスプリングとカムを組み合わせた独自の構造のもので、針圧値に合わせることで適切なアンチスケーティングバイアスに設定される仕組みで、レコード演奏中にも調整ができる便利な機構となっていた。

またヘッドシェルも穴開き軽量型を採用、実効質量の低減を図ると共にトーンアームの重量バランスを考慮することでトレース能力の向上が図られた。

標準装備のカートリッジには、振動系の実効質量を軽減させて高音域でのセパレーションを改善した新開発のMM型カートリッジ PC-330を採用している。これは外径0.5mm肉厚40ミクロンの軽合金パイプカンチレバーとチタンベースのダイヤモンド針を組み合わせた0.6mgという軽質量の振動系により、可聴周波数以上までの再生能力を担保して、市販のレコードの最高録音レベルといわれる+15dBを1.7gという軽針圧で再生可能なハイ・コンプライアンス設計のカートリッジであった。また更に、出力コードには低容量コードを使用して超高音域でのロスを減らす措置を講じていた。

ターンテーブルは直径31cmで重量は1.4kgのアルミダイキャスト製であり、キャビネットはメタルベースとローズウッド仕上げの木質合板をガッチリと組み合せた新設計の二重構造キャビネットを採用していた。また高さ調整が自在な大型インシュレーターが充分に重量のあるメタルベースのキャビネットを支えて、外部振動を低減するガッシリとした防振構造を有していた。

またこの機種は、キャビネット上部の右手側のパネル上に操作部を集中したレイアウトにより優れた操作性を持っており、マニュアルプレーヤーながらパワースイッチと一体化されたアームエレベーションレバーがキャビネットの右手一番手前に置かれていて使い易い操作配置であった。

以上のように、PL-1200はパイオニア初のDD方式採用のレコードプレーヤーとして、当時としては性能的にも操作性でも非常に優れた、大変にコストパフォーマンスの高い製品であったと云えよう。

【 PL-1200:製品仕様】
ターンテーブル部 モーター:ブラシレスDCサーボホールモーター、 駆動方式:ダイレクトドライブ、 ターンテーブル:31cm径アルミ合金ダイキャスト製(1.4kg)、 回転数:33 1/3、45rpm(微調整可能)、 回転数調整範囲:±2%以内 各回転数独立調整、 回転数切換:電子式、 回転ムラ:0.06%以下(WRMS)、S/N:55dB以上

トーンアーム部 トーンアーム:スタティックバランス方式、 S字型パイプアーム(プラグイン式ヘッドシェル)、 実効長:221mm、 オーバーハング:15.5mm、 取付カートリッジ範囲:4g〜14g(自重)

カートリッジ部 カートリッジ:MM型(PC-330)、 針先:0.5milダイヤ針(PN-330)、 出力電圧:3mV(1kHz、50mm/s)、 周波数特性:10Hz〜28kHz、 適正針圧:1.4g〜2.0g

その他 付属機構:アームエレベーション機構、 アンチスケーティング機構、 ラテラルバランサー、 大型インシュレーター(水平調整型)附属、 使用半導体トランジスタ:12個 ダイオード:19個、  電源電圧AC100V、50Hz/60Hz、 消費電力:5.2W(最大)、 外形寸法:幅480×高さ185×奥行410mm、 重量10.5kg

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