《購入後の感想と新たな音楽生活》
さて、現実にこの組合せセットから出てくる音は、非常に軽くあっさりとした感じであった。良く言えば不必要な重たさがなく軽やかに鳴り、それほどボーリュームを上げなくてもバランス良く聴けたところが魅力。反面、芯が細く何か物足りないところのある音で、クラシックの小品やポップなボーカル曲向きだろうか…。
今振り返ると、この SX-3+JA-S5のナチュラルでマイルドな音色ではハード・ロックをメインに聴くにはパンチが欠けていただろうに、と思ってしまう。プレーヤーはともかく、アンプも少々素直過ぎたタイプかも知れないが、当時はとにかく雑誌の批評記事におけるスペック評価最優先、しかもハイ・CPであることが選択条件の全てであった。
但し後年にジャズを聴き出してからは、特に中小音量でコンボやボーカルものを聞く場合などにはこの音の性格が好結果に繋がった。ある意味、SX-3は歌伴ジャズの為にある、そんな感じのスピーカーであったのだ。
またこの頃は、まだカートリッジの重要性にさほど気付いていなかった…というよりも、そこにコストをかける資金的余裕が無かったことも重要なポイントであろう。SPの置台にはブロックを敷いていたが、スピーカーコードもSX-3購入時に付属していたものをそのまま使用していたハズである。プレーヤーの設置も無造作に行い、ガタツク安物のラックにそのまま置いていたと記憶している。
しかし、念願かなってようやく入手したこの初代のメンバーは、今考えてもなかなか良い組合せであり、間違いなくこの年(1973年)の同価格帯の製品ではBESTのチーム構成の一つだっただろう。当然、筆者も暫くの間は、充分に満足しながら自身の音楽生活に浸っていたのだった…。
そして、このステレオセット購入後、最初に買ったLPはレオン・ラッセル( Leon Russell)の『カーニー(Carney)』であったが、たぶんジョージ・ハリスン(George Harrison)やクラプトン繋がりで見出した不気味なこのミュージシャンを、筆者は何故か当時はえらく気に入っていた様だ。同LPに収録されている〈タイトロープ(Tight Rope )〉という曲をピアノ弾き語りで練習したりもしたが、当然ながらあの独特の味わいは出せず、ひたすら気持ちの悪い浪曲の様ながなり声の歌声を家人からは(近所迷惑だと)厳しく注意されてしまう。仕方なく、ビートルズの〈レット・イット・ビー(Let It Be)〉や同じく〈ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(The Long And Winding Road)〉を弾いていたが、結局、自己流のピアノ演奏はものにならなかった…。
ところで、その頃親しくしていた同級生の女の子に、一番好きなレコードを貸してと言われて勇んで渡したのがこのレオン・ラッセルのLP。今考えれば至極当然だが、即、突き返されたあげくに「気味が悪い、あなたも」と宣告されて、ひどく嫌われてしまった悲しい思い出だけが残った(笑)。
更に、近所の質屋でモーリス(Morris)のフォークギターを安価で手に入れて、エレクトーンの名手であった友人A(男子)とギター弾きの女の子&コーラス希望の女子と4人でフォークロックのバンドまがいを結成したのもこの頃であったが、チューリップの〈心の旅〉や〈夏色の想い出〉、青い三角定規の〈太陽がくれた季節〉、ガロの〈学生街の喫茶店〉等、洋楽であればサイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)の楽曲を多少練習したくらいで音楽的な方向性の違い!? から早々に解散となる(笑)。
←知人が所有しているモーリスの入門版アコギと同じモデルの写真。筆者の手に入れたものは、たぶんF-10かそれ以前のエントリーモデルだったと思われるが、詳細は不明。尚、現在でも筆者が所持しているYAMAHAのFG-301Bは1980年製で当時3万円くらいで購入した安価なものだが、15年くらい前にギター職人さんにリペアしてもらって、今でも良く鳴る。
筆者はやはり洋楽・ロック志向で、この後、同級生のクラプトン大好きB君と組んでクリーム(Cream)のコピーに走るが、A君の方がはるかにギターのテクニックが上で、しかたなくベースを担当することになるが、この時点ではエレキベースを持っていなかったので知人から借りたエレキギターでギターパートの1オクターブ下の音程でベースラインを弾いていたとうろ覚えに記憶しているのだが、よく考えるとそれではクリームの楽曲のコピー演奏は難しく、実際にどの様にしていたのかの詳細は失念してしまった。どちらにしても情けない話であったが…。
こうして念願のステレオセットを手に入れた中学2年生の筆者は、ブリティシュ・ロック全般、特にプログレ(イエス/ Yesやピンク・フロイド/Pink Floyd、ELPなどやオランダのバンドであるフォーカス/Focus等)に傾倒していた短い時期を別として、3年生になるとビートルズであればジョージ・ハリスン 一推し、そこから既に触れたクラプトンへと流れ、『レイラ(Layla)』を経て『461オーシャンブルーバード(461 Ocean Boulevard)』等を挟みながら、今度はデュアン・オールマン繋がりでオールマン・ブラザーズ・バンド(The Allman Brothers Band)に関心を持ち、以後はレーナード・スキナード (Lynyrd Skynyrd)、アトランタ・リズム・セクション(The Atlanta Rhythm Section)などの米国のサザンロック勢(特にマーシャル・タッカー・バンド/The Marshall Tucker Bandが好きだった!!)へと大きく興味の矛先を転じた。
更に高校1年の頃にはサザンロックに加えて、アメリカ大陸を西へと向かいウエストコーストのロック、ドゥービー・ブラザーズ (The Doobie Brothers)やイーグルス(Eagles)などやフォークロックのクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(C.S.N.&Y.)などのLPを購入していた。また楽器演奏の試みでは、特にオールマンの『ブラザーズ&シスターズ(Brothers and Sisters)』に収録されているインストナンバー〈ジェシカ (Jessica)〉のリードギターパートのコピーを試みたが途中で挫折したことも懐かしい。
しかし高校も2年生くらいになると、筆者の音楽人生に一大転機が訪れるのだった。即ちモダン・ジャズとの出会いであるが…詳しくは次回以降にて。
近所の総合スーパーの電器売り場で、アンプにプレーヤーとスピーカー2本を購入すると、用意した予算が全く残らずにオーディオ・ラックが買えないので困まってしまう。売り場のお兄さんを泣き落として、現品の一番安そうなラックをサービスしてもらう。その時は優しい店員さんで良かったと思ったものだが、実は後年、筆者はこの売り場にアルバイトのヘルパー(メーカー派遣の応援販売員)として入ることになる…。
-終-
我が音楽趣味とオーディオ遍歴 “第0世代/Season-0”…はこちらから
我が音楽趣味とオーディオ遍歴 “第1.1世代/Season-1.2”…はこちらから
我が音楽趣味とオーディオ遍歴 “第1.1世代/Season-1.4”…はこちらから
我が音楽趣味とオーディオ遍歴 “第1.5世代/Season-1.5”…はこちらから
《スポンサードリンク》