【今日の気になる言葉】「度し難い」 ~アニメ『メイドインアビス』より~ 〈1129JKI37〉

今日の気になる言葉は、話題のTVアニメ『メイドインアビス(MADE IN ABYSS)』の主人公のひとりであるレグ君の口癖「度し難い(どしがたい)」に決定!

またこの作品は、今クール(2017年7月~9月)放送中のアニメ番組の中で、そのカワイイ作風の見た目とは裏腹に、冷徹でシビアなストーリー展開と斬新な世界観で魅せる物語です。

ではこの言葉の意味と、『メイドインアビス』について簡単に紹介します…。

 

「度し難い」の意味とは

先ずは「度し難い」の意味だけれども、道理を言い聞かせても解らせることが出来ない様子。つまり救いがたいことどうしようもないといった意味合いの表現でもともとは仏教用語だそうです。

因みに、関連した言葉の代表例に「縁なき衆生は度し難し」がありますが、これは、仏縁のない者のことはすべてに慈悲を垂れる仏でも救えないという意味で、 転じて、人の忠告を聞こうともしない者は救いようがない、との教えです。またここでの「縁」とは、仏教との繋がり、仏縁のこと。「衆生」とは、すべての生物を指しますがここでは特に人間のことです。

更に「度す/度する」は「済度」の略で、本来は救済することを意味する仏教用語。仏や菩薩が、迷妄の中で迷い苦しんでいる衆生(人々)を導き救って〈これをという〉、悟りの彼岸(境界)にわたす〈これをとする〉ことですが、そこから転じて、苦しみや困難から救うことを意味します。

しかし意外なことに、「縁なき衆生は度し難し」というこの言葉の出典は、実は仏典ではなくて江戸時代の寛保3年(1743年)に成立した国学者・多田南嶺の『鎌倉諸芸袖日記(かまくらしょげいそでにっき)』という浮世草子だとの説もあるのですが、但しその基本となった原理は、法華経の『 方便品(ほうべんほん)』(法華経二十八品の第二にあたる経文)に記されているそうです。

TVアニメ『メイドインアビス』について

『メイドインアビス』の概要

続いてTVアニメ『メイドインアビス』についてですが、この作品はつくしあきひと氏によるファンタジー漫画が原作で、現在、 竹書房のウェブコミック配信サイトである『WEBコミックガンマ』にて連載中です。

その舞台は、人類最後の秘境と呼ばれる底知れぬ巨大な縦穴“アビス”。そしてアビスを探検しては「遺物」と呼ばれる宝物を探す「探窟家」の少女とロボットの少年の冒険を描きます。

ヒロインのリコは孤児院で暮らす「探窟家見習い」の12歳の少女で、仲間の子供たちからは好かれながらもその性格は少々独善的でマイペース、容姿は金髪のツインテールにメガネを掛けています。そして“アビス”の謎を解き明かすことを夢見ていた彼女は在る日、探窟の訓練中に少年そっくりのロボットを助け、レグと名付けました。

やがて自身の母親ライザ(「殲滅卿」/「殲滅のライザ」)が偉大な伝説級の「探窟家」だったリコは、ライザの痕跡を探しに“アビスの底を目指すことになり、レグもリコを守って彼女と共に多くの危険なモンスターが生息する“アビス”の底に向かいます。しかしこの“アビス”と呼ばれる謎の大穴は、深く潜るほどに上昇・帰還時に「探窟家」たちの肉体と魂を蝕み壊していく『呪い』と呼ばれる現象を持ち、この『アビスの呪い』からは(人間は)誰も逃れることが出来ないのでした。

そして幾多の困難に遭遇しながらも徐々に深層に降りていくリコとレグ。やがて新たな仲間を加えながら危険な冒険を続けていくことになりますが…。

因みに、頻繁に発せられるレグの口癖が「度し難い」であり、それはリコの母親ライザの口癖でもありました。また物語の中で、かつてレグがライザに同行していた可能性が幾度となく示唆されます。

『メイドインアビス』の魅力

さてこの作品は、幼児向けの絵本の様な温かみのある画風ではありますが、そこには主人公たちを待ち受ける容赦のない困難が多く描かれており、冷徹な現実に対峙するリコやレグのとまどいや恐怖とそれを乗り越える為の智恵や勇気が丹念に描写されています。

もちろん、画風通りのホンワカとした場面やギャグシーンもありますが、決して少年少女の単なる「楽しい大冒険」的な物語ではなく、実際には常に死と隣り合わせの危険な探索行を描いており、主人公たちも多くの悲劇に見舞われます。また物語の随所に巧妙に敷かれた伏線と登場キャラクターたちの過去にまつわる謎がミステリアスな展開を増長しており、全編を通じて独特の“背徳感”の様な雰囲気が漂ってもいます。

そしてその世界観の設定は意外に詳細であり、またストーリー展開はファンタジーの趣だけではなくSF的な面もしっかりとあり、原作においてはこうした優しくソフトな絵柄・画風と冷徹でハードな現実とのギャップが、最近の予定調和的ストーリー展開に飽きていたアニメ・ファンに受けてヒット作品となりました。

 

作中でのレグ君は、普通はよほどの諦めの境地に至った場合に発するべきこの言葉を連発していますが、(レグ君はロボットだけど)人の口癖とは知らず知らずの内に口をついて出るものですからそれも致し方の無いことなのでしょう。でもよくよくアニメの展開や進行を観ていると、確かに「度し難い」状況の連続ではありますが…。

また、ついつい多用しているこの仏教用語の本当の意味を、レグ君本人は知っているのでしょうか!? しかしこの点も、仏教の「済度」とはかけ離れたアニメの中の登場人物の口癖となっていることのギャップがカワイイので、アニメ・ファンの間でにわかに話題になっているとも云えるのでした!!

-終-

 

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