『少女終末旅行』について
文明が崩壊した終末の世界を”ふたりぼっち”で生きる少女“チト”と“ユーリ”。半装軌車の“ケッテンクラート”に乗って雪原や廃墟を彷徨いながら、食料や燃料を求めて移動を続ける二人は、その冒険旅行の途中で様々なかつての文明の痕跡に出会ってゆくのですが…。
↓ TVアニメ『少女終末旅行』PV @girls_last_tour #少女終末旅行 提供:KADOKAWAanime
本作の登場人物を紹介すると、主人公のひとりでリーダー役の“チト”は黒髪で小柄な女の子。普段の性格は冷静沈着ですが、天然系の“ユーリ”の行動に巻き込まれて失敗をおかすことも。また手先が器用で機械いじりが得意、加えて“おじいさん”から教えられたことや文献から得た過去の文明の知識を持っています。趣味は読書で、数冊の本と時折書いている日記を大切にしています。苦手なことは泳ぎで、高所恐怖症でもあります。そして“ユーリ”のことは「ユー」と呼びます。
もうひとりの主人公が“ユーリ”で、金髪で背が高く何事にもマイペースで食べることが大好きなのんびり屋さんです。読み書きや考えることは不得意ですがその運動能力は高く、銃の射撃が得意。また“チト”のことは「ちーちゃん」と呼んでいます。
このふたりが“おじいさん”と呼ぶ人物がいましたが、孤児の“チト”と“ユーリ”を拾って育ててくれた育ての親で恩人であり、ふたりを“ケッテンクラート”に載せて(戦乱? から)逃がしてくれました。
その他の登場人物には、終末世界の地図を作ることを生きがいにしている青年の“カナザワ”や、かつての空軍基地(航空博物館?)に住んでいて過去の記録を元に飛行機を製作している女性“イシイ”などがいます。尚、“カナザワ”も“イシイ”のその後も消息不明ですが、生存を暗示する別れ方にはなっています。
また登場する人名から推測すると、物語の舞台は日本でしょうか。但し“ユーリ”は、その名前や金髪であることからロシア人かロシア系の日本人かも知れません。また仏教寺院や美術館の廃墟も登場、宇宙ロケットや進歩したAIに彷徨える自立型ロボット等も出てくるのですが、何故か武器の多くはWWⅡ仕様の旧式の様です。
この作品は、主人公たちのほのぼのとした会話のやりとりやのんびりとした探検旅行での日常生活の様子と、彼女らを取り巻くかなり厳しい(正直なところは絶望的な)現実や環境のギャップが特徴的な未来SF・終末ファンタジー物語。
核戦争? などの世界大戦等により文明が崩壊した世界(ディストピア)を生き抜いていく二人の少女の、悲惨な境遇にめげないどこかほのぼのとした冒険旅行を描いてはいるのですが、読者が冷静になってその世界観を観察すると、実はそこには過酷な状況ばかりが存在し主人公たちの明るい未来を感じさせる事実や話の展開は極めて少なく、健気に生き抜くふたりの少女の将来を心配してどこか肌寒い感覚にとらわれてしまうのです。
まさか結末が『フランダースの犬』の様なことにはならないでしょうが、アニメ化されて音声が付いた動く画像を観ていると、漫画版での所々のギャグ調の雰囲気が低減されてシリアスさがつのり、ストーリーの進展に対する不安感が増してくるのです。だが、こうした冒険の結末に不安がよぎる流れの中でも、ふたりが動じることなく(どこ吹く風といった感じで)明るく元気に旅を続ける様子に救われると共に、初めから幸せの何たるかとか正常な社会の在り様を知らない者は、恐れや不幸な感覚・喪失感などは抱かないのかも知れないと考えさせられるのでした。しかしこうした点が、本作に他の漫画やアニメ作品と異なる独特の魅力をもたらしていることは否めないのですが…。そして読者は、ただただ絶望と仲良く暮らす少女たちの幸せな結末を祈るしかないのでしょう。
-終-
【余談】どことなく『メイドインアビス』に繋がる悲しみや寂寥感があると思うのですが如何でしょうか。但し、アビスの方では秘境の大穴を下へ下へと目指す主人公たちですが、こちらの主人公たちは逆に過去文明の廃墟を上へ上へと目指すことが多いのですが…。
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