旅の楽しみの一つに食べ物がありますよね。特に鉄道には「食堂車」という、ほかの交通機関ではお目にかかれない「食事専用」の空間が存在します。流れゆく車窓の風景を見ながらおいしいものを食べる楽しみ。今では、すっかりその姿を消してしまった「食堂車」ですが以前は特急列車を中心に当たり前のように連結されていました。シリーズ3回目、今回はなつかしの食堂車の記事です。
いつもの1966年の時刻表を見てみると、長距離を走る特急・急行では昼の列車も夜行列車も、その多くが食堂車を連結していました。それも長い編成に限らず、例えば山陰本線の「やくも」や奥羽本線の「つばさ」といった特急は7両という短い編成の中に食堂車が1両連結されています。また、列車の走行時間が短いのに、食堂を営業している列車もありました。東海道本線を走る「比叡」という急行は、名古屋と大阪を結ぶ列車です。走行時間はわずか2時間30分。それでもこの列車では、列車の中では食事を提供していました。では、食事のメニューはどんなものがあったのでしょう。時刻表の巻末のほうにメニューが載っているので書き出してみます。一例としてサーロインステーキ350円、ハンバーグステーキ200円、カレーライス150円、エビフライ280円など。これだけでもなにやらきちんとしたメニューであることがわかります。
また、本格的な食堂車が連結されていなくても「ビュフェ」という簡易食堂が連結されていました。ビュフェは立ち食い形式のものや少数の椅子を窓方向に一列に配置しているなど、簡易的なものが殆どでした。変わったところでは東海道本線を走る急行「なにわ」で営業されていた「寿司」のビュフェです。これも当時の時刻表に載っているので見てみると、いか20円、まぐろ30円、えび60円 などといったメニューです。走り行く風景を眺めながら、握りたての寿司を食べる。これもまたアリなのではないでしょうか。特に東海道本線を走る列車ですから、小田原から先、駿河湾を眺めて寿司をつまむなんて、想像するといい感じですよね。それ以外にも東北方面や中央本線の急行には、そばやうどんを提供する列車もありました。走る立ち食いソバ屋感覚で、食事ができたのではないでしょうか。
ちなみに当時の食堂車の気になるお値段ですが、同じ時刻表に掲載されている駅弁の値段を見てみましょう。横浜のシウマイ弁当150円、長万部のかにめし150円など、だいたい150円前後で買えるようです。それと照らし合わせてみても、少々お高いことがわかります。筆者の子供時代も、食堂車で食事をするのは夢のようでした。今の列車の旅は駅弁が主ですが(もちろん駅弁も最近は趣向を凝らしたものも多く、いいのですが)、出来立ての料理を乗り物に乗りながら食べるなんて、贅沢だと思いませんか。今では豪華列車やイベント列車などでしか楽しめなくなってしまった食堂車。またいつか、日本のあちこちで復活してほしいものです。
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