日本女子チームが平昌の冬季オリンピックで銅メダルを獲得した“カーリング”に似たスポーツは、実は大変多く存在しているそうです。
と云うのも、昨日、親しい友人たちと会食をした席で、“カーリング”の話題が出た時、その場にいた一人からたまたま類似の競技“ローンボウルズ”に関する話が聞けたのですが、すると別の一人が“ペタンク”について語り出しました。なるほど何れの話も、それらの祖先は似通ったスポーツなんだろうと想像させるに充分なものでした。
ところがその時、他にも兄弟関係・親戚筋に当たる競技があるらしいと聞きました。そこで、帰宅した後に詳しく調べてみましたので、【日々是好日記】の一篇としてご紹介することにしました。
先ず最初に、個別の競技に言及する前に全体を見まわして思うことは、何れの競技も人間が石などの物を投げたり転がしたりして、目標に命中させたり近づけたりすることを競った同じ様な遊びに端を発している、と云うことです。
そしてこれは太古の人類が、獲物を捕ったり敵と戦ったりする上で重要と考えられた、生存の為の行動(自己防衛や狩猟)を習得する訓練の一つだったと考えられるのです。何時の時代、何処の地域であるにせよ、生き残る為に古代の人々はこの様な運動能力(ある意味、戦闘的な行為)を発達させる必要があったのでしょう。
やがて人間たちは石を研ぐという技術を知り、握って遠くへ投げたり、転がり易くする為に石を磨いて丸くする様になりました。こうして、球形の石を使用した様々なボール競技が生まれていきます。そして球体を投げたり転がしたりして標的に近づけ、または相手の球にぶつけて弾き飛ばすというゲームスタイルが発明されたのでした。
さて、この様な何らかの目標に球などを投げて近づけ合うゲームは、かなり古い時代からあったとされますが、その端緒は既に古代エジプトで見受けられ、近年のピラミッドの遺跡調査により一対のボールと目標球(らしき球)が発見されていますが、その後、古代のエジプトからギリシャやローマへとこの様な遊びが伝えられたと考えられています。
※エジプトの原始王朝時代、もしくはそれ以前には、既にこの様なゲームが存在していたとの説があります。石棺の中で、子どものミイラと一緒に一対のボールと一個の目標球が発見されたことがあり、それらは紀元前5,200年頃のものと推定されたのです。またボーリングの起源ともとれるものに、同じく紀元前5,000年頃に古代エジプトで行われていた遊びとして、ピンを災いや悪魔に見立てて、それを沢山倒すことが出来たならば、その災いなどから逃れることが出来るという一種の宗教儀式があったとされます。
※ローンボウルズの世界団体であるワールド・ボウルズ(World Bowls Ltd./WB)では、エジプトの遺跡から7,000年前にバイアス(重さの偏り)のある石球を使ったスポーツがあったことを示す出土品が見つかっていると表明していますが、その真偽は不明です。
以後、古代ギリシャには、“スファエラ(Sphaera)”(球体の意)と呼ばれる球技が行われていたという記録があったり、また古代ローマ時代の壁画にも人々がこうした球技を楽しむ様子が描かれているそうです。やがて時代を経ると共に、“人類最古の球技”とされるこれらの競技がヨーロッパ全土に伝播していったと思われ、地域毎に名称を変え、細かいところが異なるゲームとして分化していったのでしょう。
即ち、どの競技もご先祖様は一緒で同じものだと推測され、その同じものを冬季に氷上で行う形としたものがカーリングであるとすれば、やはり基本のルールが極めて似ていることも頷けると云うものです。
では先ず今回は、イギリス発祥の“ローンボウルズ”を紹介していきます。
ローンボウルズ( lawn bowls)とは、芝生の上で“ボウル(bowl)”と呼ばれる偏心球(重心が偏った球、スピードが遅くなるとカーブする)を転がして、先に投げて設置した目標球“ジャック(jack)”にどれだけ近づけられるかを競うイギリス発祥の球技です。ボウリングの前身との説もあり、特に現在でも英連邦の国々では身近なスポーツとして親しまれています。また欧米では、単に“ボウルズ(bowls)”と呼ばれることが多く、“ローンボウリング(lawn bowling)”とも言われます。更に、このボウル(bowl)という言葉は、野球やテニスなどの用語であるボール(ball)とは明確に区別されているそうです。
実際のゲームは、平らな天然芝、または人工芝の専用コート上で行われ、ボウルの特性であるカーブの具合とコートの芝の状態などを読みながら試合を進めて、ボウルを如何にジャックに近づけるかを競います。またその際、ビリヤードの様にボウル同士の接触・衝突を利用して自軍の球を有利な場所に配置したり、逆に敵軍の球を妨害したり排除したりすることも出来ます。これらがカーリングと近似しており、ボウルの投擲と配置に戦略的思考を要する大変面白いスポーツです。
一般的な競技場(専用コート/グリーン)は、凡そ 35m 四方に作られており、そのスペースを6等分~8等分にしますが、其々のスペースはリンクと呼ばれ、各リンクで個別に試合が行われます。
※専用コートは、31m 以上 40m 以下の正方形であることが多い様です。リンクは、アウトドアでの競技の場合、幅が 4.3m ~ 5.8m、インドア競技の場合の幅は 4.6m ~ 5.8m とされていますが、平均の幅は 5.5m くらいの様です。
※原則として芝生の上で行われるこのローンボウルズは、“グリーンボウルズ”とも呼ばれており、平らな芝生の上で行うものが“フラットグリーンボウルズ”、中央部が15~30cmほど膨らんだ芝生の上で行うタイプが“クラウングリーンボウルズ”と呼ばれて区別されています。
競技人数と種類は、1対1で行う個人戦(“シングルス”)から、2対2(“ペアーズ”)、3対3(“トリプルズ”)、そして4対4でおこなう“フォアーズ”というチームプレイまで、合計で4種類あります。但し、競技する人数や使用するボウルの数が増えると、ただジャックに近づけるだけでなく、相手のボウルを弾いて妨害したり、自軍のボウルを別の味方のボウルでブロックしたり、ジャック自体を移動させたりと云った複雑な戦略も必要となります。
先攻がまずジャックを転がして、次にジャックの到達点までと同距離のリンクのセンターライン上にジャックを置き、それを目標として試合がスタートします。以下、敵味方交互にボウルを投げますが、シングルスでは1人4投、フォアーズの場合は1人2投を1投ずつ交互に行ない、手持ちのボウルが無くなると競技は終了です。終了時点で相手方よりもジャックとの距離が近いボウルの数が得点となります。
ボウルは、相手方のボウルやジャックに当ててもOKです。既述の通り、例えば、自軍のボウルを当ててジャックを移動させたり、ジャックの近くにある相手方のボウルを自軍のボウルで弾いて、ジャックから遠ざけたりリンク外に飛ばしたりすることも作戦の一つとされています。
ジャックに当たったボウルは“タッチャー”と呼ばれ、目印をつけられます。通常、ボウルがリンク外にはみ出して“ディッチ”(グリーンを囲む溝)に落ちると無効となってしまいますが、タッチャーの場合は有効とされます。
ボウル(bowl)は、完全な球体ではなく重心が偏った球で、投げるとカーブして転がるという特徴を有しています。色は黒か茶色が多く、重さは最大で1.59kgを超えてはいけないことになっています。またその材質は木製、あるいはゴムかプラスチックなどの合成樹脂製と規定されています。ジャック(jack)はボウルよりも小さな球で、このジャックを標的にボウルを転がしますが、これは“キティ(kitty)”と呼ばれることもある様です。またその色は白もしくは黄色で、重さは225g~285gです。ボウルの投球には、芝生の上にフットマットを敷き、その上から行なうとされ、その際はヒールの無い靴底が平らな靴を履きます。競技時の服装は、白かクリーム色を基本としています。
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