【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第4回、『戦う翼』と 『空爆特攻隊』〈18JKI15〉

“バズリクソンズ” の「Round Trip Ticket」ピンナップガール手描き A-2 革製フライトジャケット

ミリタリークロージングの有名ブランド“バズ リクソンズ(Buzz Rickson’s)”の名の由来となったのが、『戦う翼』の主人公バズ・リクソン大尉。このバズを演じたマックィーンのフライトジャケット姿は、同年(1963年)公開の映画『大脱走』のシュルツ(ヒルツ)大尉のA-2が有名ですが、『戦う翼』でもB-3がバッチリと板についています。こうしてみるとこの映画とマックィーンは、後の我国のミリタリーファッション界にも大きな影響を与えたことになりますね‥‥。それから助演のロバート・ワグナーに関しても、筆者には想い出深い俳優さんであり、1969年から1971年にかけて国内で放送されていたテレビ番組『プロスパイ』(後に『スパイのライセンス』に改題)が大好きで、当時、よく観ていました。

また『空爆特攻隊』は、本連載記事で紹介する他の映画に比べて我国での知名度は低いものの、B-17実機を使用した迫力の飛行場面が見物の映画です。

※連載第1回はこちらから ⇒  【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第1回、『空の要塞』と『空軍/エア・フォース』 〈18JKI15〉

※連載第2回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第2回、『コンバット・アメリカ』と 『戦略爆撃指令』〈18JKI15〉

※連載第3回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第3回、『頭上の敵機』〈18JKI15〉

※連載第5回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第5回、『最後のミッション』と『メンフィス・ベル』〈18JKI15〉

※連載第6回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17の登場する映画 第6回、『フライング・フォートレス』と『マイティ・エイス/第8空軍』〈18JKI15〉

 

『戦う翼』(The War Lover/1963)は、コロンビア映画の作品で、アメリカ人作家ジョン・ハーシー(John Hersey)の小説『戦争を愛する者(The War Lover)』(1959年)を原作とした戦争映画です。フィリップ・リーコック(Philip Leacock)が監督、出演者はバズ・リクソン大尉を演じたスティーヴ・マックィーン(Steve McQueen)、ボーランド中尉役にロバート・ワグナー(Robert Wagner)、ボーの恋人ダフニー役にシャーリー・アン・フィールド(Shirley Anne Field)などが配されています。

※原作者のジョン・リチャード・ハーシー(John Richard Hersey)は、1945年に小説『アダノの鐘(A Bell for Adano)』でピューリッツァー賞 小説部門を受賞しました。また1946年には、原爆投下直後の広島での取材をまとめたルポルタージュ『ヒロシマ(Hiroshima)』を発表し、大きな反響を得ました。

先行の『戦略爆撃指令』や『頭上の敵機』と比べても、意外に爆撃や空戦・戦闘シーンが多く、同じ映像(胴体着陸のシーンなど)が使い回しされている部分もありますが、ビラ配りの任務に憤慨したリクソン大尉が超低空飛行で基地飛行場の上空を通過(パス)するシーンは、なかなか迫力があります。また前半に登場する胴体着陸のシーンは、映画『頭上の敵機』のものが巧みに再利用されています。

出演者に関しては、比較的アンチヒーロータイプを演じることが多かったマックィーンですが、この映画ではまさしく破滅的なダーティヒーロー像に挑戦しており、過酷な戦闘の日々を送りながらも、唯我独尊、常に強がる彼がある意味で純真にも思えて不思議と魅力的なのでした。一方、ロバート・ワグナーは常識を持ったごく普通の軍人役として、没個性ながら誠実で真面目な人物を演じていますが、恋人との逢瀬のシーンではその甘い二枚目ぶりを如何なく発揮しています。

さて筆者は原作の『戦争を愛する者(The war lover)』を読んだことはありませんが、そこでの“The war lover”とは、まるで戦争を恋人としたかの様な狂気の破壊者バズ・リクソン大尉のことを指すのでしょうが、イギリス婦人と恋に落ちた常識人ボーランド中尉とその恋人ダフニーの存在が、バズの言動との対比を際立てていることは間違いありません‥‥。

 

“Bloody 100th”と呼ばれた第100爆撃航空群、第148爆撃飛行隊所属のB-17編隊

ストーリーの概略 第2次世界大戦の欧州戦線、アメリカ陸軍航空部隊の第8空軍に所属するB-17爆撃機の機長バズ・リクソン大尉(スティーヴ・マックィーン)と副操縦士のボーランド中尉(ロバート・ワグナー)は、過酷な空爆任務に明け暮れていました。

ボーランドは健全な常識を備えた軍人でしたが、上官のリクソンは歪んだ考え方の持主で、彼は殺戮と破壊の中に人生の生き甲斐を見出しており、戦争そのものを愛していました。

たしかに腕のいい操縦士であるリクソンでしたが、無謀で強引な行動が多く、命令を無視して部下や僚機をも危険に巻き込んで戦いを続けていきます。が、ボーランドはそんなリクソンを庇ことも度々でした。しかし、リクソンが気に入らない部下を追い出して死に至らしめるに至り、遂に二人は反目し合うことになります。

また物語の中では爆撃隊の活動と並行して、ボーランドがダフネー(シャーリー・アン・フィールド)という英国人の女性と知り合い、その後に二人が付き合う姿を描きますが、リクソンが彼女にちょっかいを出す場面などもあり、そこでの言動からリクソンとボーランドの性格の違いを浮き彫りにしていきます‥‥。

映画の終盤、クライマックスにかけては、リクソンとボーランドが搭乗するB-17“ボディ(Body)”号の最後の出撃が描かれます。攻撃隊指揮官のエメット大佐の乗機が墜落、リクソン大尉が残存の部隊の指揮権を引き継ぎ、ドイツ本土ライプチヒの石油工場への爆撃作戦を継続します。

しかし帰還の途上、ドイツ軍の多数の戦闘機の襲来を受けてリクソン機も被弾、死傷者を出しながらもリクソンとボーランドの二人は必死の操縦を続けて、どうにかフランスの海岸上空を通過しますが、“ボディ”号はどんどん高度を失いつつあり、しかも未投下の爆弾が1個、爆弾架にひっかかったままで、このまま海上に着水すれば大爆発は必至です。

そこで先に搭乗員達を脱出させ、更にリクソンに突き落とされたボーランド中尉も海上へ落下傘で降下しました。只一人機内に残るリクソン大尉はあくまで英国への帰投を目指しますが、結局はドーヴァーの白い崖を越すことが出来ず、彼の操縦するB-17“ボディ”号は絶壁に衝突して紅蓮の炎と化して粉々に砕け散ったのでした‥‥。

 

『空爆特攻隊』(THE THOUSAND PLANE RAID/1968)は、1968年のMGM作品。ボリス・サガル(Boris Sagal)が監督、主役のブランドン大佐をテレビ番組『ラット・パトロールシリーズの〝トロイ軍曹〟役でも有名なクリストファー・ジョージ(Christopher George)が演じ、共演者としてガブリエル・エームズ中尉役のラレイン・スティーブンス(Laraine Stephens)、アーチャー中尉を演じるベン・マーフィー(Ben Murphy)、戦闘航空団司令官トラフトン将軍役のゲイリー・マーシャル(Garry Marshall)等が出演しています。

筆者未視聴のこの映画、低予算の為か、1,000機もののB-17の大編隊の迫力を再現することにはほど遠く、物語の展開も地味で鈍重との評価が多いのですが、実機を使用した低空飛行するB-17の姿は凄いと評判です。尚、B-17 G型のチン・ターレットを外してF型風にした実機が登場していますが、流石に複数機の準備は難しく編隊飛行のシーンでは記録映画のフィルムが流用されています。また本作はカラー映画ですが、モノクロの記録映像をカラー化して使用しており、不時着シーン等も『頭上の敵機』のフィルムをカラー化して利用しています。

この映画を観たことがある友人によると、物語に起伏が乏しく地味な内容であり、日本国内では知名度も低い作品ながら、B-17のファンやボンバージャケットのA-2やB-3マニアの方は必見かも知れないとのことでした。

ストーリーの概略 1943年、アメリカ陸軍航空部隊・第8空軍の第103爆撃航空群の指揮官のグレッグ・ブランドン大佐(Christopher George)は、(ドイツ本土を1,000機もの爆撃機で昼間爆撃するという)野心的な爆撃計画を、J.D.キャノン( J. D. Cannon)演じる上官のパーマー将軍に繰り返し提出していました。その結果、遂に計画は発動し多くの隊員が集まる中、婦人部隊士官の恋人エームズ中尉や“タフィ”トラフトン司令官との関係を織り交ぜながら、作戦の実現・達成に向けてブランドン大佐の苦闘が始まります‥‥。

連載5回目の次回は、遂に名作『メンフィスベル』の登場です。また併せてテレビシリーズ『最後のミッション』も紹介致します。

※連載第5回はこちらから ⇒ 【ミリタリー映画館】B-17が登場する映画 第5回、『最後のミッション』と『メンフィス・ベル』〈18JKI15〉

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