【ビジネス情報】 次世代農業『スマートアグリ』ビジネスに挑戦する電機各社!! 〈658JKI19〉

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3月に本格稼働したパナソニック福島工場内(福島県福島市)に設置した植物工場 (同社提供)

国内の大手電機・通信メーカーの間で、システム制御やソリューションなどのIT関連技術を駆使して、生産性を飛躍的に高める次世代農業『スマートアグリ』ビジネスに参入する傾向が顕著となってきた・・・。

TPPを見据えた規制緩和による農業改革や、世界的な食料需要の増大など、この事業分野の成長は今後とも極めて高いと判断し、自社の得意な技術を活用しながら新たに核となる事業として大きな収益源に育てるのが狙いのようだ!! 

『スマートアグリ(Smart Agri)』とは、従来の農業の技術・経験と最新のIT技術を融合することで、収穫量の安定向上や人員・コストの効率化、栽培作業の自動化などを実現する先進技術農業のこと。

具体的には、光や風、温度、湿度、土質や養分その他の農業生産物の適正な生育状況を、映像機器や各種センサーネットワーク等で監視・感知して、コンピューターなどの制御機器と連携して、高度先進農業技術を活用して栽培環境を自動化した植物工場で野菜などを生産するものだ。

この『スマートアグリ』を桁違いのスケールで実施しているのが、世界第2位の農業輸出国オランダである。オランダは国土や農地も狭く、人口も少ない。しかし、日本はもとより、世界最大の農業大国のアメリカよりも土地利用がうまいのだ。

国土面積が日本の50分の1しかないオランダだが、平坦な土地が多く耕地面積は日本の4分の1ほどである。農業従事者の(総人口に対する)比率は2.5%と同規模だが、農業人口の絶対数は日本の305万人に対して、オランダは43万人と日本の7分の1以下の規模だ。

また、緯度の関係で年間を通して低温が続き日照時間も少ない土地柄。しかし、農業輸出の規模は年間680億ドルでアメリカに次ぎ世界第2位であり、これは我が国の30倍にも相当する金額だ。

現在、オランダの農業ビジネスは世界最高の250億ドルの黒字だそうだ。小さな国でも大きな国に伍して戦える農業大国を具現化している。

そこには、最先端の『スマートアグリ』技術が数多く導入されており、非常に効率の高い次世代農業が実践されているのだ。

 

TPP交渉への参加に向けて、日本政府の産業競争力会議もオランダ流の『スマートアグリ』に注目しているが、我が国でもこの『スマートアグリ』に乗り出す大手電機・通信企業が相次いで現れるなど、動きが加速してきている。

 

例えばパナソニックは、福島市のデジタルカメラ工場の一部を植物工場に改装し、本年(2014年)3月から本格稼働を開始した。自社の植物工場の運営ノウハウを活用して、今年度中に一般農園のビニールハウス向けなどに光や水、温度・湿度などを最適に管理する制御システムを販売する計画だ。

同じく農業ビジネス分野への進出を目指す東芝も、自社の資産を生かし新たなビジネスを開拓したいとする。パナソニックと同様に、その一環として本年(2014年)5月には神奈川県横須賀市の遊休地に植物工場を建設した。予(かね)てよりの半導体製造のノウハウをうまく活用し、クリーンルーム内でレタスなどの無農薬野菜を生産する計画だという。本年度中には海外でも大規模な植物工場を設営して、関連機器やシステムの販売にも進出する方針を発表している。

農業ビジネス分野へは、既にシャープや富士通などの電機・通信メーカーも参入を表明済みだが、日立製作所もこの6月から植物工場向けの生育環境や栽培設備のデータ収集を開始し、リアルタイムで栽培状況を遠隔監視するソリュ-ションの事業化に成功するなど、『スマートアグリ』ビジネスは電機・通信メーカー各社が進出する新規事業の、いまひとつの戦場と化しつつある。

 

背景には、農業従事者の高齢化と減少や従来の農法による低生産性などで、食料自給率の下落が危ぶまれる国内の農業生産量の状況と、世界的な人口増加の傾向が続く中で、食料需要の拡大が続く新興国向けの食糧輸出と『スマートアグリ』のシステム自体の販売への期待値の高まりがある。

2006~2007年頃から次世代農業への取り組みは顕著となり始めていたが、その大多数は小規模なベンチゃー企業のチャレンジであった。それがここにきて、我が国を代表する巨大企業の参戦で、にわかに風雲急を告げる戦況となりつつあるのだ・・・。

尚、調査会社の矢野経済研究所は、国内の植物工場の運営事業の市場規模は、平成37年に現在の6.4倍の1,500億円規模に急成長すると予測している。

但し、上記の通り、『スマートアグリ』ビジネスのノウハウはオランダのメーカーなどが先行している。この為、国際的な競争に勝利するには国内各社が連携し、ハードからソフトまで総合的に提供するべきだ、との研究機関(三菱総合研究所)からの指摘もある。

 

旧来の農業がIT技術によってサポートされることで、新たな成長産業として生まれ変わる可能性が出てきたということだ。

つまり新たな産業革命が農業分野からもたらされるかも知れない。それが『スマートアグリ』である!!

-終-

【続報】産経新聞が(2015年)3月24日に伝えたところによれば、パナソニックはセンサーを内蔵し、温度や日照量を自動制御するハイテクのビニールハウスを発売した他、福島市の工場敷地内に発光ダイオード(LED)と空調を用いた植物工場を設置し、腎臓病患者用の低カリウムレタスなどの栽培を開始している。

 

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