【科学ニュース】 マラリア対策で遺伝子操作 6世代以内に蚊を絶滅!! 〈750JKI11〉

蚊2funny-mosquito-clip-art_412028怖ーいマラリアを撲滅する為に、遺伝子操作で蚊を絶滅させるという、これまた怖ーいお話のご紹介です。

まるでSF映画や小説の様ですが、本当の話です・・・。

 

 

マラリア(Malaria)とは、ハマダラカ(Anopheles属)などの蚊を媒介として感染する病気です。熱帯・亜熱帯地域を中心に感染者数が多く世界中で100ケ国余りで流行しており、世界保健機構(WHO)によると年間3億人以上が感染し100~150万人以上が死亡していると推定されています。

主な症状は、発熱や寒気、頭痛、関節痛などで、意識障害や急性腎不全、肝障害などの合併症を引き起こしやすい病気です。

感染したマラリア原虫の種によって病型や治療法も異なりますが、治療が遅れたり、特に悪性の場合は短期間で重症化し死に至ります。現在、もっとも被害が大きい地域はサハラ砂漠以南のアフリカ諸国や中南米地域と言われており、乳幼児が特にその犠牲となっているそうです。

 

マラリア対策の究極の切り札として、蚊の遺伝子を組み換えて大半が雄になるようにし、最終的にはその蚊の個体群全体を全滅に追い込むとした研究論文が、英国の科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載されました。

英国ロンドン大学インペリアルカレッジ(Imperial College London)の生物学者チームが発表した論文によると、通常の蚊の個体群では50%の割合で雄が生まれますが、世界で初めて実験室内で雌の子孫の産出抑制に成功したこの性別産み分け技術を用いると、生まれてくる世代の約95%が雄になります。

その結果、生まれる雌の割合が極端に少なくなる為、この蚊の個体群は最終的に絶滅。また、マラリア原虫を運ぶ雌が激減・消滅することで人間にとってのマラリア感染のリスクを大幅に抑制することができる可能性があるそうです。

遺伝子組み換え操作により、雄の蚊の胚の遺伝子に一続きの酵素DNAを組み入れることで、この成虫で作られる精子のX染色体は正常に機能しなくなります。その結果、子孫の性別を雌に決めるX染色体の数はほぼゼロになり、大半の精子は雄を作るY染色体を運ぶものばかりになります。
遺伝子組み換えの雄からは、遺伝子組み換えの雄の子孫しか生まれず、これは雌の個体が残らなくなるまで同様に繰り返され、やがて絶滅します。

今回の遺伝子操作の実験では、5つの内4つの蚊の集団で、6世代以内に該当の個体群が全滅したと報告されています。

尚、この研究では、マラリア原虫の媒介蚊として最も危険度が高いガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)をターゲットにして成果を得た、とのことです。

しかしこの取り組みに対し、環境保護論者からは遺伝子組み換え(GM)種を自然界に開放することで、生物多様性のバランスや地球本来の生態系や生物の進化に未知の影響が及ぶ可能性があるとし、多くの懸念が表明されています。

また、ある地域の蚊の集団が全滅した場合には、近隣から人間に害を及ぼす恐れのあるライバル種の蚊の集団が移動してくるだけではないか、とも環境保護論者らは指摘しています。

 

実は、2012年7月に英国の『ガーディアン』紙が報じた記事によると、ブラジルにおいて、英国の企業 Oxitec社の研究者たちにより遺伝子組み換えをされたネッタイシマカが、放たれた地域の蚊の数を85%も減らした、とのことです。

この蚊たちの雄は、成長と生命の維持にテトラサイクリン系のある抗生物質を必要とするように遺伝子操作を施されており、抗生物質を摂取できない自然環境ではやがて死に絶えることになり、子世代の雄も同様の性質を持ちます。

 

ブラジルでの実験以前、Oxitec社は、強固な反対活動により米国のフロリダ州での遺伝子組み換え蚊の実験を行うことを断念していました。

これに対して、ブラジル以外ではマレーシアやケイマン諸島でこの実験は実施され、遺伝子組み換え蚊は、地域の蚊の集団に放出されたそうです。

この手法は効果的でコストの負担も少なく、間違いなく化学物質からなる殺虫剤等よりも環境への害は少ないとOxitec社は説明していますが、しかし先進国では、遺伝子組み換えの結果を恐れる世論から非常に多くの反対にあっている様です。

環境保護団体 Friends of the Earth が指摘しているように、もし実験室で遺伝子組み換えをした蚊や、その蚊の子孫が新たな環境に適応して進化を遂げたらどうなるでしょうか?

決して蚊の適応能力を侮ってはいけないという意見が強く、現にこれまでも、人間社会の文明化に対応して夜行性から昼間活動への移行など、高い適応能力を示してきたようです。

 

科学技術の進歩は素晴らしいことですし、マラリアやテング熱などの病気を撲滅できたらイイですよネ。でもやっぱり、何んだか怖ーい話です。人間の都合で、ひとつの種を根絶やしにしていいんでしょうか??

昔、『ザ・フライ』という米国映画がありましたが、(蚊ではなく)ハエの遺伝子と融合してしまった男の悲惨な末路を描いていましたが・・・。

遺伝子操作の研究や技術に関しては、賛否両論があります。是非、いろいろと検討した上、慎重に進めて欲しいと思います。

-終-

《広告》