1970年代半ば~1990年代初頭には、オーディオ業界では革新的な技術の進歩が数多くみられ、新製品が毎年のように市場を賑わしたものだ。
ところが、90年代の中頃以降、すなわちインターネットの勃興と入れ替わるように、音楽視聴の舞台もネットの世界へと移っていった。それに伴い、世に出るリアルなオーディオ機器のヒット商品も極めて少なくなりオーディオ機器の市場は縮小していった・・・。
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、オーディオ機器の国内出荷額は1988年の6,620億円をピークにどんどん下降して、2013年は1,017億円まで縮小している。
そこで縮小を続けるオーディオ市場の活性化の為に、CDと比べてより高音質なハイレゾリューション(ハイレゾ)と呼ばれる音源の再生が可能なオーディオ機器の普及をめざして、オーディオ業界が標準化へと動き出した。
標準化の牽引役である業界団体の日本オーディオ協会は、ハイレゾの普及が市場立て直しの鍵であるとして、ハイレゾ普及を当面の活動の中心に据えるとした。
具体的な動きとして、同協会は6月12日にハイレゾの定義と標準機能を発表した。ソニーが持っていたハイレゾのロゴマークの商標権も同協会が譲り受け、同協会会員の企業や団体は一定の基準を満たせば無償で使用できるようになるという。
これまでのハイレゾ音源とは、CDの規格である44.1キロヘルツ/16ビットを超えるものを対象としていたが、同協会はハイレゾの定義を、デジタル系の場合、CDを上回る96キロヘルツ/24ビット以上と定め、これに当てはまるオーディオ機器はハイレゾロゴの使用を認めるとした。
以下に発表された基本的な考え方と定義、ロゴの付与条件を転載します。
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【ハイレゾに対する基本的な考え方】
1.「HiFi オーディオ」につながる、「新しい時代のオーディオ」表現として捉えます。
2.「ハイレゾ」の対応機器は、民生用として録音から再生に至る一貫した機器とします。(デジタル・アナログを問わず)
【ハイレゾの定義】
1. 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)公告(25JEITA‐CP 第 42 号)を原則としますが、協会が示す「ハイレゾ」対応機器とは、以下に付記した「付帯項目」を満たしたものとして定義します。
2. 録音、及び再生機器並びに伝送系において以下の性能が保証されていること。
<アナログ系>
(1)録音マイクの高域周波数性能 :40kHz 以上が可能であること。
(2)アンプ高域再生性能 :40kHz 以上が可能であること。
(3)スピーカー・ヘッドホン高域再生性能 :40kHz 以上が可能であること。
<デジタル系>
(1) 録音フォーマット: FLAC or WAV ファイル 96kHz/24bit 以上が可能であること。
(2) 入出力 I/F: 96kHz/24bit 以上が可能であること。
(3) ファイル再生: FLAC/WAV ファイル 96kHz/24bit に対応可能であること。(自己録再機は、FLAC または WAV のどちらかのみで可とする)
(4) 信号処理: 96kHz/24bit 以上の信号処理性能が可能であること。
(5) デジタル・アナログ変換: 96kHz/24bit 以上 が可能であること。
3. 生産若しくは販売責任において聴感評価が確実に行われていること。
(1)各社の評価基準に基づき、聴感評価を行い「ハイレゾ」に相応しい商品と最終判断されていること。
【コンポーネントオーデ協会推奨ロゴの使用(付与)条件について】
(1)協会推奨ロゴの使用は、協会法人会員を原則とします。
(2)協会が決めた「ハイレゾ」の定義(付帯項目を含む)を満たす商品のみ推奨ロゴの使用を認めるものとします。
(3)協会推奨ロゴの海外使用は「商標」として適法に使用できる海外主要地域を前提に使用可能とします。
(4)協会と使用申請会員企業とが結ぶ「ハイレゾ・ロゴ使用同意書」に同意した会員企業とします。
(5)(1)項~(4)項を満たしているロゴ使用については原則無償とします。
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現実のマーケットでは、ソニーの場合など、昨年の秋以降ハイレゾ対応オーディオ機器の販売を強化しているそうだ。既に約25機種を発売し、ハイレゾ対応ウォークマンが一時的に店頭で売り切れになるなど、大きな人気を集めているという。
最近は、ポータブルオーディオの世界においても高音質化へのニーズが強くなり、従来のHi-Fi オーディオの延長線上に、新時代のオーディオ機器のトレンドとしてハイレゾを位置づけている。
果たしてハイレゾが、オーディオ業界の救世主となれるだろうか? もちろん、大いに期待しているが・・・。
-終-