私の周りにもフィリップ・K・ディックが好きなSFファンは多い。
そのディックの作品に関して、SF界の老舗出版社である早川書房が『PKD総選挙』と銘打って、人気投票を実施するそうだ・・・。
ちょっと、おふざけが過ぎるそのネーミングには抵抗感があるが、一票を投じてみたくもなる。
偉大なるSF作家フィリップ・キンドレッド・ディック(Philip Kindred Dick)は、1928年12月16日、米国イリノイ州シカゴにて二卵性双生児の一子として生まれた。双子の妹ジェイン・シャーロット(Jane Charlotte)は40日後に早逝したというが、彼女の死はディックの性格や作品に大きな影響を与えたとされる。
父は農務省の役人だったそうだが、ディックが5歳のとき両親は離婚し、1938年7月以降は母親と共にカリフォルニアで暮らした。
その後、バークレーの高校に入学したディックだが、なんとアーシュラ・K・ル=グウィン(Ursula Kroeber Le Guin)とは同学年生(1947年卒)だったが、当時は互いを知らなかったという。そして高校卒業後には、カリフォルニア大学バークレー校に進学してドイツ語を専攻した。
1948年から1952年までは、大学へ通うかたわらアルバイトとしてレコード店員をしていたそうだ。1950年代の初期に執筆した処女作『市に虎声あらん』は、SFではなく一般の文学作品だったが、暴力的な表現などが原因で2007年までは出版が出来なかった。
1951年の作品『ルーグ』も修正の末、雑誌に掲載できたのは1953年だった。この作品以降は専業作家となったが、商業誌に最初に作品が掲載されたのは1952年の『ウーブ身重く横たわる』である。そして、やっと1955年に長編小説『太陽クイズ(偶然世界)』がヒットする。
彼は生涯に44編の長編に加え約121編の短編小説を書き(2010年1月現在)、そのほとんどがSF雑誌等に発表、掲載された。
主な代表作としては、1963年、歴史改変SF『高い城の男』でヒューゴー賞 長編小説部門を受賞し、その後1975年には、未知のパラレルワールドで目覚めた有名人を描いた『流れよ我が涙、と警官は言った』でジョン・W・キャンベル記念賞を受賞する。
『高い城の男』がヒューゴー賞を受賞してSF界では天才として迎えられたが、生前のディックはさほど経済的に恵まれなかった。
しかし死後になって彼の作品の多くが、『ブレードランナー』、『トータル・リコール』、『スキャナー・ダークリー』、『マイノリティ・リポート』といった映画となりヒットしている。
また、『バルジョーでいこう!』(Confessions d’un Barjo )のような一般映画も、ディック作品を原作として生まれている。
ディックは自らを “fictionalizing philosopher”(小説化する哲学者)と称していたが、1982年3月2日に死去。ディック最後の長編は『ティモシー・アーチャーの転生』で、1982年、彼の死後に出版された。
彼の小説の作風は、政治的でかつ社会学的だったり、形而上学的テーマを探究したものが多く、独占企業や独裁的政府を扱ったり、変性意識状態の登場人物がよく登場したりする。
また物語の枠組みには、戦争やパラレルワールドなども多く登場し、その小説のストーリーでは、近未来において強大な独占企業や巨大な政治的陰謀により、日常の世界が実際には構築された幻影だということに主人公が徐々に気づいていき、その生きる世界が超現実的なファンタジー空間へと変貌していく、といった物語が多い。
こうした客観的な事実が否定され、現実が崩壊し幻影の中で生きるという強烈な感覚は、「ディック感覚」と呼ばれている。
後期の作品では、形而上学と神学への作家本人の興味をより反映したテーマが多くなり、個人的な自身の体験に基づくもの、例えば薬物乱用や偏執病、統合失調症とか神秘体験などが、『暗闇のスキャナー』や『ヴァリス』といった作品を生み出した。
「ディックに誓って、ガチです。」という触れ込みで、SFマガジン(早川書房)編集部は、SF作家のフィリップ・K・ディック関連の作品を対象とした「PKD総選挙」の投票開始を告げた。
「SF者ならAKBよりPKD」として、メールかTwitterで「推しメン(作品)」への投票を呼び掛けているのだ。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」などディック本人の作品全てに加え、「ブレードランナー」などの彼の作品が原作となった映画など『ディックがこの世に送り出した作品、すべて』が対象だという。
投票はポイント制で実施する。1人の持ちポイントを10ポイントとし、対象の作品に振り分けて投票を行う。例えば「アンドロイド~」に4ポイント、短編集「アジャストメント」に3ポイント、「パーキー・パットの日々」に2ポイント、「トータル・リコール」(映画、90年版)に1ポイント──といった具合だ。「流れよわが涙、と警官は言った」に10ポイント全部など、振り分けは投票者次第だが、但し、小数点以下の振り分けは出来ない。
投票は専用メールアドレス pkdsousenkyo@gmail.com 宛てか、Twitterでハッシュタグ #PKD総選挙 を付けてツイートして欲しいとのこと。仮名やペンネームなどでの応募も可能だが、複数のアカウントでの投票は禁止とし、合計10ポイントを越えたものも無効となる。
また「メディア違いの同名の作品がある場合は末尾にメディア名を記入」とのことで、特に映画「トータル・リコール」は「『1990年版』『2012年版』など、分かり易く」としている。
締め切りは7月25日まで。「絶対的センター『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が君臨するか? チームM(movie)の総監督「ブレードランナー」か?」という結果はSFマガジン10月号(8月25日発売号)で発表される。
以下に「PKD総選挙」の詳細を転記する。
◆投票対象
フィリップ・K・ディックがこの世に送り出した作品、すべて。
長篇、短篇はもちろん、短篇集、ディック原作映画も含みます。
(近日中に当ページにリストをアップいたします)
◆投票方法
一人手持ちの票を「10ポイント」といたします。
その10ポイントを、応募対象の作品に振り分けてください。
複数作品に投票しても、一つの作品にまとめて投票してもOK!
例1:『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』4ポイント
『アジャストメント』(短篇集)3ポイント
「パーキー・パットの日々」(短篇)2ポイント
「トータル・リコール」(映画、90年版)1ポイント
例2:『流れよわが涙、と警官は言った』10ポイント
メールアドレス pkdsousenkyo@gmail.com 、もしくはツイッターのハッシュタグ「#PKD総選挙」にて、投票をお願いします!
*複数アカウントからの投票はおやめください。
*合計10ポイントを越えたものは無効とします。
*合計10ポイントに満たないものはそのまま有効票とします。
*複数タイトル・複数訳がある場合、すべて同一の作品とみなします。
*小数点以下のポイント振り分けはおやめください。
*メディア違いの同名の作品がある場合(例:トータル・リコール)は、末尾にメディア名を記してください。映画「トータル・リコール」については、あわせて「1990年版」「2012年版」など、わかるよう明記してください。
◆応募規定
以下事項を記入のうえ、ご投票ください。
・氏名(PNも可)
・投票する作品と、その作品へのポイント数
・寸評(100字以内)
締切:2014年7月25日いっぱい
*寸評は10月号に掲載予定です。また、誌面の都合上、寸評を一部割愛する場合がございます。
◆問合先
PKD総選挙事務局(【E-mail】pkdsousenkyo@gmail.com)
以上
関心のあるSFファンは、貴方の「推しメン(作品)」に投票してみては如何だろうか・・・。しかしディック先生の性格からして、「PKD総選挙」は場違いなネーミングのような気がしてならないが(笑)。
-終-
『 ブレードランナー2049』の予告編が公開される!!・・・はこちらから
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