TV番組『信長のシェフ』の続編が7月10日から始まります。内容は随分と荒唐無稽ですが、めずらしく若い人向けの時代劇です。
さて昨今、時代劇が衰退していると云われて久しいのですが、本当にそうなのだろうかと疑問に思い・・・調べてみました。
【時代劇は衰退していない】
最近では、時代劇は制作費が高くつくとか、老人層にしか人気がないからスポンサーが獲得出来ないとか、いろいろと理由があってどんどんと少なくなっていると言われています。
しかし実態は、決して若年層の時代劇離れが一方的に進んでいる訳ではないようなのです。
雑誌SPAのwebサイト 日刊SPA! が、全国の30代の男女100人を対象に、「テレビ時代劇は好きですか? 」とアンケートを試みたところ、「好き」が27%で「嫌い」と断言したのは18%に止まり、「どちらでもない」という回答が55%でした。
【テレビ時代劇は好きですか? 】
好き | 27% |
嫌い | 18% |
どちらでもない | 55% |
【好きな理由】
歴史が好きだから | 62.96% |
単純に楽しい | 33,33% |
人の生き様にロマンを感じる | 29.63% |
想像が膨らむ | 25.93% |
セットや舞台装置が面白い | 25.93% |
チャンバラが好き | 25.93% |
歴史の勉強になるから | 18.52% |
現実を忘れられる | 14.81% |
役者の本当の技量がわかる | 14.81% |
現代劇と違って物語に入り込める | 11.11% |
その他 | 14.81% |
【嫌いな理由】
見慣れていないので馴染みがない | 50.00% |
古くさい | 33.33% |
物語の前提・背景がよく分からない | 27.78% |
物語に入っていけない | 27.78% |
歴史について詳しくないから | 22.20% |
現実的ではない | 16.67% |
年寄りが観るものだから | 16.67% |
セリフの意味が分からない | 11.11% |
歴史が嫌い | 0% |
その他 | 11.11% |
【どちらでもない理由】
取り扱う時代や主人公、テーマによる | 40.00% |
「好き」というほど歴史に詳しくない | 32.73% |
好きな過去の作品はあるが、最近はめっきり観ていない | 23.64% |
面白い時代劇がないから | 21.82% |
小さい頃から馴染みがないから | 12.73% |
そもそもテレビでやっていないから、観る機会がない | 7.27% |
その他 | 1.82% |
「どちらでもない」と答えた人の理由を聞いていくと(複数回答)、「取り扱う時代や主人公、テーマによる」という人が40%。また、「好きな作品はあるが、最近、めっきり見ていない」が23.64%です。
つまり、多くの人が「時代劇が好き」と断定出来ないのは、最近たまたま、自分の好きなタイプの時代劇が見当たらないからということだけかも知れません。
逆に、「嫌い」と回答した人の理由から伺える事は、「古くさい」という回答が30%以上あったものの、圧倒的に多かったのが 「見慣れてないので、馴染みがない」というものです。次いで、「物語の前提・背景がよくわからない」 「(分かりにくいので)物語に入っていけない」が、ともに27.78%。「セリフの意味がわからない」という人が、なんと11.11%もいます。
それほど決定的に「時代劇が嫌い」ということではなく、なんだか馴染みがなくよく分からないから、「嫌い」としておこう、といった感じなのです。
このアンケートの結果からだけで結論付けるのはムリがあると思いますが、分かり易くて面白い時代劇があれば若い人たちも結構観るのではと思われますが、それにしてもある程度、時代劇に馴染めるほどに身の回りに時代劇の放送がないことに、きっと問題があるのです。
NHKを除くと、民放ではたまに放送するスペシャル番組以外には、最近ではほとんど時代劇が作られていません。あまりにもマーケットから商品(時代劇)がなくなってしまい習慣的な消費(視聴)が出来ない状況にあることで、TVの時代劇が市場に受け入れられなくなっているのが現状なのではないでしょうか。
【『信長のシェフ』への期待 】
さて、ここで『信長のシェフ』が、この様な時代劇の低調な現状を打破する格好の試金石となるのでは、と期待される訳です。
テレビ朝日系列のTV番組『信長のシェフ』は、原作が西村ミツルで作画は梶川卓郎による漫画をドラマ化した作品で、主演はジャニーズ Kis-My-Ft2の玉森裕太。2013年1月11日から3月15日まで放映された第1シリーズの続編として、この7月10日から毎週木曜日の19:58~20:54のゴールデン・タイムに放送されます。
第1シリーズでは、多少の歴史知識がないと分かりにくい戦国時代をカジュアルに描き、時代劇に馴染みのない若者たちにも馴染み易い内容で人気を博し、深夜枠ながら平均10.8%と好視聴率を記録しました。
漫画を原作として、主役に若者に人気のタレントを起用、分かり易いストーリーで史実にはそれほど固執はしていないと思います。いやいや固執していないどころか、タイムワープというSFの要素と現代の若きフレンチの料理人が、料理の腕で織田信長の天下統一のために活躍するという、破天荒な物語です。
年配層からみると、あまりにもストーリーが飛躍しすぎていて逆に混乱するのでしょうが、この様なタイプの時代劇があっても良いのではないでしょうか? 重厚な語り口と時代考証に重きを置き過ぎても、時代劇自体が廃れていっては元も子もない、とも考えられます。
現実に、前作が若年層に支持された結果として続編の放映が決まり、ましてやゴールデン・タイムへの進出となった訳ですから、大いに歓迎したいところです。
【時代劇だからこその可能性】
また、他にも時代劇だからこそできる物語もあるでしょうし、例えば本格的なサスペンスやミステリーとかは、現代劇では現実味が薄れ成立しないものも、工夫次第では時代劇の方がリアリティを持って描くことが可能かも知れません。
そして、アクション・シーンはやはり時代劇の方が適していますよね。現代のアメリカで銃の乱射が発生してもごく当たり前のシーンですが、我が国では(ありがたいことですが)その様なシーンは、まだまだ非現実的に映ります。アメリカでは大統領暗殺は現実にあったことですから、フィクションで描いても説得力がありますが、日本ではいまひとつリアリティがないでしょう。
しかし、これが時代劇だと何とかなるんです。将軍様や大名の殿様の暗殺を狙う一味と、それを阻止する側の勢力の暗闘、よくあるパターンですが、現代劇でやると相当にしらけそうです。
とにかく、先ずは分かり易い時代劇を少しでも多く放送して、多くの人が時代劇と馴染む環境をつくることが肝心です。 『信長のシェフ』が成功するのならば、どしどし模倣して若者にもウケるTV時代劇を1本でも多く放映していくことが、時代劇の復権に繋がると考えられますが、如何でしょうか・・・。
-終-