【ビジネス情報】 匿名サービスの逆襲 〈93JKI19〉

匿名9ダウンロード匿名サービスの逆襲が始まったようだ。この10年間ほどはFacebookに代表される実名サービスが隆盛を極めたネット社会だが、再び新たな匿名のサービスがいくつかリリースされている・・・。匿名の課題や問題点を排除し、その利点・良さを最大限に引き出せるだろうか? 

 

世の中には、やはり匿名だからこそ貴重な情報発信が出来ることも数多く存在しているし、一概に匿名性に問題があり、実名の方が良い、という訳でもないと考えられる。

また匿名性を否定することによって、インターネットの重要な長所の一部が低減してしまうという意見も、相変わらず多いようだ。

一方で、匿名性により無責任な発言や悪意を持った誹謗・中傷などが発生し、この様な迷惑行為などを抑止することが難しいという現実がある。また逆に実名であっても、誇大広告や虚偽を含んだ売名行為などへの利用を制限することも、また困難である。

 

結局は、匿名にしろ実名であれ、どちらが優れているかの二者択一の問題に、単純に結論を出すことはいささか乱暴に過ぎると思われるのだ。

 

こうした中、我が国においては、匿名性が際立った『2ちゃんねる』や半匿名性の『mixi』、実名性の『Facebook』、そして匿名性が高い『twitter』などの各種ネット・サービスの興隆の結果、現在に至っている。※最近はメッセンジャー・アプリの『LINE』が伸長している。

この様な経緯を経て、日本のネット社会には匿名性が特徴のサービスがしっかりと根付いているようだ。しかし片や実名化も進んでいる。どうも日本人は、器用に匿名性と実名性を使い分け、ネット社会においても見事な「二重人格」を演じることの出来る民族のようだ。

 

海外(欧米)では、ネット社会における匿名性がもたらすデメリットに、大方の議論が収斂しているように見受けられる。まさしく性悪説とでも言えようか・・・。

(日本人には大袈裟に思えるが)彼らには、圧倒的に匿名の及ぼす被害は大きく、ごく普通の人々が一旦、匿名の仮面を被ると、その行動は加速度的に一線を超えて、悪魔か犯罪者の如き活動を始める、という認識が極めて高い。

そこで2000年代初期以降は、実名性を重視したネット・サービスが優位を得て拡大してきたのである。

また、特にディベード文化の成熟している欧米社会では、無責任な匿名発言はまもとに取り合ってもらえないということと、それ以上に日本などとは異なり、(宗教的な背景なども含めて)匿名性の闇の部分を放置すると想像以上に社会にダメージを与える危機が発生してしまう、という意識が強いのだろう。

 

どうやら我が国のネット社会が、いまだに匿名性を維持し大いに許容しているのは、日本人の国民性が欧米などの諸外国の人々より、(よく言えば)協調性やバランス感覚がある為、ではなかろうか。

つまり、匿名性が必ずしも悪い事だらけではないことを、日本人はよく知っているのだ。

そして最近では、欧米においても、この点を認識する意見が増加してきているようだ。
この様な意見には、匿名性が「悪意」や「攻撃」といったものを引き起こすだけではなく、「善意」や「協力」を増幅させる場合もあり、それはそのサービスの運営次第であることを強く主張している。

 

今年(2014年)1月30日(現地時間)に、完全に匿名のまま交流できる新しいソーシャル・ネットワーク・サービス『Secret』がiOS端末ユーザー向けアプリで開始された。まったく個人が特定できない状態で交流できるSNSと云えよう。

『Secret』は、「批評や批判に晒されること無く自由に自分の意見や主張を公開するためのサービス」だという。「匿名性の良さを引き出し、気取ったり取り繕うことなく、飾らない考えや感情を投稿できる」としている。

投稿者の側だけでなく、その投稿に対するコメントや「ハート」(Facebookの「いいね!」に相当)の付与も、ハンドル名さえない完全匿名で行われる。投稿者の情報としては、投稿の場所のみが表示される。

『Secret』に参加するにはiPhoneアプリから電話番号あるいはメール・アドレスでサインアップして開始する。サインアップ時に利用者自身のスマホ端末内の連絡先データの閲覧を『Secret』に許可し、その中から他の『Secret』利用者(がいれば)が自動的に抽出され、『Secret』上の「友達」になる(但しこの連絡先データは『Secret』側のサーバには保存されないという)。しかしこの「友達」さえ誰だか特定は出来ない。

そして投稿は先ず、この「友達」にのみ表示される。友達が3人未満の場合は、個人が特定できないように投稿の場所ではなく「Friend」と表示されるそうだ。

投稿方法は、背景(用意されている壁紙か自分の端末で撮影した写真など)を選択して文章を入力するだけだ。写真は匿名性を守るために「ぼかす」などの編集も可能となっている。

『Secret』の投稿はスマホ対策で縦スクロールでの閲覧が可能で、コメントと「ハート」付与の他に、気に入った投稿者に★印((Twitterのフォローに当たる)を付けることも出来る仕様だ。投稿相手が誰かは分からないが、お気に入りの投稿は★付きで表示され、「友達」の「友達」にも表示されるようになり、情報が広まる仕組みだ。逆に不適切な投稿は運営者に報告し、閲覧ブロックをする機能もある。

こうして誰の投稿かという価値判断ではなく、投稿そのものの内容評価で情報が共有されていくのが、この『Secret』大きな特徴だ。

 

また5月21日(現地時間)には、Android版(バージョン4.1以上に対応)も公開された。また、日本を含む世界各国での利用が可能となった。

その後、6月9日(現地時間)、新機能『Secret Den』が発表された。現在クローズβテスト中だ。

Denには隠れ家や組織という意味があり、『Secret Den』は、企業や大学などの組織内でのみ投稿を共有できるようにするサービス。

この機能が一般に公開されれば、利用者は自分のDenを開設しメンバーを招待できる。Den内でだけ共有するメッセージを投稿するには、投稿に「@Denの名称」を書き込んでおく。Den内の投稿は、通常の『Secret』の投稿と同様に誰が投稿したものかは分からない仕組みだ。

 

Secret社は、もとGoogle社のデビッド・バイトウ氏とクリス・ベイダー氏がサンフランシスコで2013年10月に事業を開始した。CEOであるバイトウ氏はナムコからGoogle社に入社し、その後ジャック・ドーシー氏のSquare社でテクニカルディレクターを務めた後、ベイダー氏と共同でSecret社を創業した。

 

このサービスは、当然ながら他者への誹謗・中傷や個人が特定できる投稿は禁じられており、自分の素直な感情や思いついたアイデアなどの投稿が推奨されている。

また、数ある匿名SNSの中で、『Secret』の特徴は、投稿者は匿名ながら投稿自体は「友達」間で共有されること、及びその使い易く洗練されたUIにあるといえよう。

『Secret』と並んで注目を集める匿名SNSアプリが『Whisper』だ。

『Whisper』は、昨年(2013年)秋の公開以来著しい成長を遂げている。Android版が公開されてからは、一層多くの特に18~24歳のヤングアダルト層の利用者の増加が著しい。

このサービスは、他のユーザーと簡単に匿名で秘密を共有することが可能なアプリだ。利用者は画像をアップロードあるいは検索し、そこにテキスト・メッセージを付けることが出来る。投稿した 「Whisper(ささやき)」はアプリの全利用者と共有され、他の利用者から得られた「ハート」やレスポンスの数に応じて、最も人気の高いものが公開ページに掲載される。

 

公開レスポンスとは別に、『Whisper』利用者は互いにプライベート・メッセージの交換が可能だが、その為には料金を支払わなければならない。

この機能が『Whisper』の最大のウリであり、最大の収入源となっている。誰しも他人の秘密ほど蜜の味はないのであり、互いに秘密の共有者ほど大事な人はいない・・・ということか。

 

さて、匿名で誰にでもメールを送信できるネット・サービスである『Leak』が7月28日(現地時間)に公開された。『Leak』の運営者によると、公開後3日間で2万件を超える匿名メールが送信されたという。

利用方法はいたってシンプルだ。「To」に相手先のメール・アドレスを入力し、「From」で相手との関係を幾つかの候補(家族・友人・同僚・友人の友人・誰かなど)から選択する。「Message」に内容・文面を入力して「SEND THIS LEAK ANONYMOULY」ボタンを押して送信。既に日本語メールの送信も可能だ。

受信者側にはメールに返信することも、誰からのメールかを確認することも出来ないという説明が為されるが、しかし『Leak』からのメールをブロックするための機能の紹介もされる。

自分のメール・アドレスを登録すると、前週の「ベストリーク」が毎週月曜日に届くそうだ。この辺は単なるメール送信サービスではなく、おふざけ・洒落メディアとしての機能も有している。

運営者側は、「脅迫やいじめ、差別などの悪意のある使い方はせず、メール送付先である相手への親切心や敬意を忘れずに楽しんで使って欲しい」と述べている。また『Leak』側が利用者および送信先相手の個人情報を保有することはないとしているが、利用規約で利用者は送信したメールの内容を『Leak』がコピー、公開、流用することを認めることになっている。この点は気になる部分ではある。

匿名性の問題点や課題を意識して、『Leak』の運営者側はこのサービスが完全には匿名ではなく、違法なメールの場合は送信者を突き止めることが可能だと警告している。また、利用規約でも大変細かく利用の規定(ルール)を定めている。

尚、『Leak』のTOPページでは、サンプルとして「我々は社内では敵対していることになっているが、前回のプロジェクトでの君の働きは素晴らしかったと言っておきたい(同僚より)」「会社はもっとチームの飲み会をやるといいと思います(同僚より)」といった文面や「あなたとは、あなたが顔が広いから仲良くしているだけ」という打算的な友人からの文章や、「今日ノーパンです」という同僚からのとんでもない告白など、「これを送ってきたのは誰だ!?」と動揺してしまうような、まさしくリーク(Leak)な文例が掲載されている。

『Leak』は(運営者ページによると)フランス在住のローラン・デサリー氏とセバスチャン・ティリエ氏の二人が中心となって開発したサービスだ。また前述の『Secret』に影響されて『Leak』の運営を開始した、とデサリー氏は言う。

 

友達や同僚に直接言いにくいことでも、匿名であれば素直な気持ちを伝えられるだろうか・・・。

そしてこの特徴ある匿名性に関し、利用者のモラルを保ちながら発展させることがどこまで出来るだろうか。『Secret』や『Leak』をうまく使うことで人間関係がより良好となればHAPPYなのだが・・・。結果が待たれるサービスだ!!

-終-

 

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