皆さんはmiRNA(micro-RNA/マイクロRNA)をご存知ですか? 普通の人は知らないでしょ、知らない方が普通というものです。
しかし、このmiRNAを利用して、新しく画期的な癌(がん)を発見する検査システムの開発が始まりました!!
8月18日に国立がん研究センター(以下、NCC)や東レ、東芝などは、13種類の癌(がん)や認知症をただ1回の採血で発見が可能な検査システムの開発を開始すると発表しました。
このシステムではmiRNA(マイクロRNA)と呼ばれる微小物質を、癌(がん)発見のバイオマーカー(目印)として使用します。miRNAは、血液や唾液などの体液に含まれ、人間においては2,500種類以上が確認されている物質です。
最近の研究では、miRNAはたんぱく質を作る遺伝子の働きを制御することが解かってきました。そして、癌(がん)などの病気の種類や状態によっては、血液中に分泌・増加するmiRNAの種類や量が変化し異なることも理解されてきました。
この様なmiRNAの性質を活用して、癌(がん)やそれ以外の重大な病気の発見を行います。これまでにも、血液から癌(がん)発生時に増加するたんぱく質などを検知する腫瘍(しゅよう)マーカー検査が実施されてはいますが、その多くは癌(がん)がある程度進行しないと有効な検出が出来ませんでした。miRNAであれば、癌(がん)細胞がより小さい状態でも分泌されるため、早期に発見出来る可能性が高いそうです。
NCCなどは患者への負担をできるだけ軽減するため、人間ドックや健康診断などの段階で早めに癌(がん)などを発見して、早期治療につなげたいとしています。
この開発事業は本年度から5年(2014年度~2018年度)をかけて、「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」という名称で運営される産官学連携の開発プロジェクトです。そこに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が総額79億円を助成することになりました。
具体的には、NCCに蓄積されている膨大な臨床情報やバイオバンクの検体、miRNAマーカーに関する研究成果をベースとして開発を進めていきます。また東芝もこの開発事業に参加し、専用診断機器の開発を担当、東レは自社が開発した(樹脂製の)DNAチップとNCCと共同開発した血液中に存在するmiRNAバイオマーカーの検索技術の確立と応用を目指します。
【開発テーマ】
・患者体液中マイクロRNAの網羅的解析
・疾患横断的に解析可能なマイクロRNA発現データベースの構築
・マイクロRNA診断マーカーとマイクロRNA検査/診断技術の開発
・臨床現場での使用に向けた検査システムの開発」
癌(がん)に関しては、胃、食道、肺、肝臓、胆道、膵臓、大腸、卵巣、前立腺、ぼうこう、乳房の癌(がん)と、肉腫、神経膠腫など13種類が検知の対象となります。
先ずはNCCが保有する癌(がん)患者6万5,000人分の血液の上澄み成分(血清)などの分析を始めるといいます。どの種類の癌(がん)でmiRNAがどの様に変化するのかを突き止めて、診断技術の確立を目指します。
因みにmiRNAとは、細胞内に存在する長さ20から25塩基ほどのRNAをいい、他の遺伝子の発現を調節・抑制する機能を有すると考えられているncRNA(ノンコーディングRNA)の一種です。
miRNAは、癌(がん)を始め感染症、生活習慣病および難聴などの様々な疾患や病気に関わっていることが知られていますが、その中でも特に、細胞の癌(がん)化に深く関与していることが多くの研究者らによって指摘されています。また癌(がん)に関わる正の制御をするmiRNAはoncogenic miRNA (onco miRNA) と呼ばれており、onco miRNAの発現量を低下させることで、癌(がん)細胞を消滅させるという方法が、癌(がん)の新たな治療薬の開発手法のひとつとして期待されてもいます。
この開発事業は、次世代の癌(がん)診断技術として「世界標準」を目指しているそうです。この様な医学と関連の医療技術の進歩が、国民の健康の増進とともに我が国の新たな産業分野の拡充や競争力の強化にも貢献することを、是非とも期待しています!!
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