米国上院は1月6日(現地時間)、オバマ大統領から連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に指名されたジャネット・イエレン氏の指名承認を採決した。
採決は6日午後5時半(日本時間7日午前7時半)に実施され、2010年以降副議長を務めてきたイエレン氏(67)が承認され、1月末日で任期が切れるバーナンキ現FRB議長の後任として、初の女性議長となる。
今年1月末で任期を終えるベン・バーナンキ議長の後任として指名されたジャネット・イエレン連邦準備制度理事会(FRB)副議長(67歳)だが、上院は昨年12月20日にイエレン氏の議長指名に関する審議打ち切り動議を59対34で可決しており、承認採決でも十分な支持が集ったようだ。。FRBの議長・副議長は大統領が上院の承認に基づいて任命し、任期は4年間。民主党が多数派となっている上院は問題なくイエレン氏の指名を承認し、女性初のFRB議長の誕生となった。
イエレン氏は1971年に、イェール大学でジェームズ・トービン教授(1981年ノーベル経済学賞受賞)の教え子として博士号を取得した。失業のコストと原因を研究し、中央銀行は失業率の低下に貢献できるというトービン教授の考えを学んだようだ。その後、クリントン政権時代の経済諮問委員会(CEA)委員長、サンフランシスコ地区連銀総裁などを歴任し、10年以上にわたってFRBに在籍している。その経済分析には定評があり、オバマ大統領をはじめ民主党幹部や市場関係者からの評価・支持が高い。ユースギャングやシングルマザー、最適な金融政策、等々幅広いテーマで著書を発表している。
FRBの副議長時代においては、バーナンキ議長と共通の政策であったFRBにおけるインフレ目標の公式採用が大きな成果だった。インフレ目標2%の導入は理事当時からの主張で、FRBでは長年事実上採用されてきたが、これはイエレン氏の影響力の結果と言えよう。
イエレン氏はFRB関係者としての経験・実績が豊富なので、金融政策のスタンスは明確で予見性は高いと思われる。政策はバーナンキ路線の延長線上にあり、当然ハト派的なものとなろう。また彼女は指名を受けた10月9日、「多くの米国民が仕事をみつけられず、生活や家族のことを心配している」と述べているが、彼女の雇用創出に重きを置いた金融政策に期待する人々は数多い。
懸念材料は、民間金融機関での経験が無いことと、共和党一部の緊縮財政論の茶会(ティーパーティ)派と出口戦略の推進を性急に希望する一部の金融機関の存在などだ。そうした連中が、イエレン新議長に対して抵抗勢力として足を引っ張る動きに出てくるだろう。これをどのような舵取りでかわして行くのかが、気になるところだ。
ところで、イエレン氏の夫であるジョージ・アカロフ氏は、レモン市場/情報の非対称性に関する研究で2001年にノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者だ。
一流大学の教職に恵まれなかったイエレン氏とアカロフ氏は、共にFRBのエコノミストだった1977年にFRBのカフェテリアで出会ったという。それが今では、夫はノーベル経済学賞受賞者、妻は次期FRB議長である。結婚当初の二人は、そんな未来を予測できただろうか・・・。
また夫婦での共著の論文も多い。更に夫妻の子息は現在、蛙の子供は蛙ということか経済学の教授となっている。このおしどり夫婦には切手収集という共通の趣味もあり、素晴らしいコレクションを保有しているそうだ。
ちなみに、FRB(連邦準備制度理事会)とは大統領が任命する7人の理事で構成され、うち1人が議長として全体を統括する組織で、他国のいわゆる中央銀行にあたる。また、議長はきわめて重要な職責で米国経済に影響を与えるだけでなく、全世界の経済に影響を与える世界で最も重要な人物の1人と言える。
女性初のFRB議長としての話題性も高く、2期目に入り閣僚などへの女性登用に陰りが見えるオバマ大統領にとっては追い風となる人事である。
またバーナンキ氏のハト派政策を継続するだろうイエレン新議長の就任は、当面市場に安心感を与えるものである。
そして、女性ならではの柔和な語り口でありながら明解で説得力のある発言が市場の安定に繋がると期待されているが、当面は量的緩和の縮小を継続するだろう。
-終-
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