P8対潜哨戒機は老朽化が進むP3C対潜哨戒機の後継機であり、在日米国海軍は昨年12月から段階的に6機の嘉手納基地への配備を進めている。
P8の米国外への配備は初めてだが、日米両政府ともに10月の安全保障協議委員会(2プラス2)で「12月から日本に同機を配備することを確認」しており、米国々防総省担当官は「以前からの計画に基づくもので、中国による防空識別圏設定とは無関係だ」と発言している。
しかし米国海軍は中国海軍の活動海域の拡大を受けて東太平洋での偵察監視活動を強化しており、対潜哨戒機についても従来のP3CからP8への移行を進めていると考えられる。この結果、米国海軍の当該海域における潜水艦や他の船舶を発見・偵察する能力は大幅に向上すると見られる。
↓従来のP3C対潜哨戒機
P8対潜哨戒機はボーイング社製で、レーダーと空対地・空対艦ミサイルなどを搭載している。従来の四発ターボプロップ(プロペラ)エンジンのP3C対潜哨戒機に対し、双発ターボファン(ジェット)エンジンのP8対潜哨戒機は速度も航続距離も大幅に伸びている。また多目的任務を考慮しながら旅客機の737型機を母体として設計し、MAD(磁気探知装置)を廃止するなどコストダウンを図った。
【性能諸元】
- 全長:38.56 m
- 全幅:35.81 m
- 全高:12.83 m
- 自重:62,730 kg
- 最大離陸重量:83,780 kg
- 搭載量:34,096 kg
- システム:ボーイング総合防御システム
- エンジン:CFMインターナショナル社製 CFM56-7B ターボファン 2基
- 推力:27,000lbf(120kN)×2
- 最高速度:906km/h
- 乗員:9名
ちなみに我が国の海上自衛隊もP3Cの後継機として、純国産対潜哨戒機P1の2015年度までに計8機の導入を開始している。
P1は、機体、エンジンなど全てを新規開発した純国産機で防衛省技術研究本部と川崎重工業が開発し、川崎重工業が製造、海上自衛隊が保有・運用する哨戒機である。四発ターボファン(ジェット)エンジンの中型機で、航空自衛隊のC2輸送機と機体や部品、システム等を共通化してコスト上昇を抑えた設計だ。対潜システムに人工知能を採用し、実用機では世界で初めて光ファイバーを導入、操縦時のデータ通信効率や電磁波への耐性を上げた。
深海爆弾や航空魚雷、対艦ミサイルASM-ICやAGM84を搭載、更にAGM-65マーベリック空対地・空対艦ミサイルも搭載しているなど、かなり攻撃力を重視した仕様で哨戒機というよりは、対潜・対艦目的の攻撃機といった趣もある。
純国産で開発すべきか?四発エンジンは必要か?などという当初の議論や、その後のエンジントラブルなどもあったようだが、一部にはP1が米国のP8よりも優れているのでは、との声さえある優秀機のようだ。
-終-
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