ちょっと美味しいワインとチーズでも買おうかと思うと、隣の駅にある 『成城石井』まで出かけることがある。高級輸入食品ならば、ここでの購入が確実で安心だ、と思い込んでいる自分がいるようだ。
国内のコンビニ第2位のローソンが、高級食品スーパーの『成城石井』(本社:横浜市)を買収するそうである。
ローソンは9月29日に、成城石井を傘下に持つ投資ファンドの丸の内キャピタルと10月中にも全株式を譲り受けることで合意した。有利子負債を含む買収総額は550億円規模とみられる。また、この買収劇には三越伊勢丹ホールディングスやイオンも名乗りを上げていたらしい。ちなみに、買収後も『成城石井』のブランド/店名は継続されるという。
今回の買収は、コンビニ事業でのノウハウを成城石井の店舗(特に駅構内の小型店など)に活用することはもちろん、ローソンが本年(2014年)度中に100店ほど出店する予定の、魚介類なども含む生鮮食品にウエイトを置いた大規模コンビニ店(ミニ・スーパー)、『ローソンマート』等での、成城石井の事業との相乗効果を狙っての事だという。
成城石井はもともと小田急線成城学園前駅の駅前にあった果物店として1927年に創業。1976年にはスーパーに業態を転換して、海外のワインやチーズなどの輸入食料品を扱う高級スーパーとして発展したが、2004年10月、レックス・ホールディングス(現レインズインターナショナル)が創業者一族から65億円で買い取り、完全子会社化した。
その後、レックス・ホールディングスから三菱商事系のファンド、丸の内キャピタルが約420億円(推定)で買収したが、物流拠点統合などが一定の成果を上げたことから、株式の売却に向けて、ローソンなどと本年(2014年)5月ごろから交渉を継続していたという。
豊富な食材や食品の品揃えが特徴のスーパーとして、現在、関東や関西、中部地区に110店舗を展開しており、最近では駅ナカにも出店している。各種ワインや高級輸入食材、それから自社開発のオリジナル総菜などに人気があり、以前ほどの高級食品スーパーというイメージは薄れてきたが、いまだに成城石井を支持する富裕層の常連顧客は多い。
尚、同社については、輸入食品に関するMD力の強さに加えて、展開店舗が都市部の好立地にあることや、その成長率の高さと収益体質の良好さが大きく評価されている。
決算公告によれば、2013年度の売上高は543億円(前期比5%増)、営業利益は33億円(同約7%増)。営業利益率は約6%と高く、平均的なスーパー業界の2~3%をはるかに上回る高水準である。
小売業界はこの4月の消費税の8%増税後、一部の都市部の百貨店やスーパーを除き、全国的に厳しい状況が続いており、ローソンも同様に既存店舗の大部分が売上前年割れとなっている。
前述のローソンマートの展開や、8月にはシネコン(複合映画館)のユナイテッド・シネマを買収するなど事業多角化を進めているローソンだけではなく、中長期的には確実に縮小傾向にある国内消費者市場を背景に、来年(2015年)4月からの消費税率の10%引き上げも想定して、小売業界の再編機運は大きく高まっているといえよう。
根強いファンの多い成城石井だが、ローソンの傘下で独自色を保ち続けることができるか? 結果が待たれるところだ。
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