子供のころに乗った赤とクリームの特急電車、あれでもう一度旅をしてみたいと思いました。それも、あまりお金をかけずに、東京から日帰りでいける範囲で。そこで乗ったのが、新宿駅から土日に運転される「ホリデー快速富士山」でした。その乗車記です。
新宿駅11番線ホーム。頻繁に走る中央線や総武線のステンレスの通勤電車。そんな平成生まれの電車に混じって、赤とクリームも懐かしい特急車両が入ってきました。これが今回目指す「ホリデー快速富士山」。存在感・人気ともに抜群で、車内をのぞきこむ人たちやカメラを向ける人たちが多く見られます。この列車は快速なので、特急料金は不要!新宿から河口湖までの運賃のみの2560円。座席は指定席1両、自由席5両の計6両編成。駅弁と缶ビールを買って、好きな席に座ってシートを倒せば、そこには非日常空間のできあがり。車内は特急時代そのまま。トイレも洗面所もついています。これから河口湖までの約2時間、特別な列車の旅の始まりです。
ほぼ満席の状態で、8時14分新宿駅を出発。大久保の手前から左へカーブし、直線区間へ。東中野から国立まではなんと23.8キロも直線が続きます。東中野、中野などのホームの端にはカメラを構えたマニアの姿。優越感に浸りながら見なれた風景の中を走ります。しかし、思ったほどスピードが出ません。停車駅も八王子までは三鷹、国分寺、立川と停車を繰り返します。三鷹あたりで立ち席も出て、このまま混雑が続くのかと思いました。それこそ、昭和の観光シーズンの特急列車を思い出します。あの頃は、特急も混雑していました。デッキに立てればいいほうで、揺れる車内、シートの背もたれを握りしめて旅を続けたものです。しみじみと思い出している間にも列車は走ります。八王子で席に座っていた客も降り始め、高尾ではハイカーがかなり降りて全員が着席できるようになりました。列車はやっと、スピードを上げ始め、山を登っていきます。東京都と神奈川県の境となる新小仏トンネル(2594m)で高尾山の北西をくぐりぬけます。やがて進行方向左手の下のほうに相模湖が見えてきます。ここを過ぎて、上野原の手前で山梨県に。ここからトンネルや、橋梁をわたり、9時35分に大月着。
ここから線路は左にカーブし、富士急に入ります。大半の乗客が降りてしまい、車内は閑散としてしまいました。列車は中央本線を離れ、民家と木立の間をぬってかなりゆっくりしたスピードで単線の富士急を走ります。三ツ峠の駅では列車交換。対向で来たのは、これまた懐かしの115系!横須賀線のイメージカラーである白砂青松と同じ色なので、山を走る横須賀線、略して「山スカ」の愛称でマニアの間では呼ばれています。
そのあと、車窓左側にはなんと突然、ブルートレインが!ここは「下吉田駅ブルートレインテラス」。寝台特急「富士」と、沿線から望める富士山とかけて、置かれています。車内は入場証で見学自由。その先の富士山駅はスイッチバックの駅。進行方向が変わり、今来た道を引き返していくように、進みます。今までの沿線風景とは一変、大きなジェットコースターの脇を抜けるように富士急ハイランド駅に停車。そして最後の河口湖駅に10時26分、到着。今回私は、このコースを初めて乗りとおしました。都心から郊外、トンネルあり、鉄橋あり、懐かしい電車もみられて、実に充実した2時間でした。乗り換えなしで新宿から来られるし、また来てみたいと思います。
昭和の鉄道の旅を「安く」満喫できる旅。お勧めです!ちなみに帰りは京王高速バスを利用しました。こちらも新宿まで、1500円と安い!トイレもついているので飲んでも安心・快適でした。