【超入門】 ダッフルコート(Duffel coat)について 〈13JKI00〉

ダッフル171uNp+MjHtL._UL1500_軍用外套(オーバーコート)として発展してきたものを色々紹介してきたが、ここらで真打登場と願おう。

それは、ダッフルコート(duffle coat,duffel coat)である・・・。

誰にでも防寒着として親しみのあるこの外套(コート)も、海軍用の被服として発達したミリタリーファッションを代表するアイテムの一つなのだ。

 

ダッフルコート(duffle coatもしくはduffel coat)は、外套(オーバーコート)の一種である。原則としてフード付きで、またトッグル・フロントと呼ばれる独特の前合わせを特徴とする、厚手のウール地の防寒コートだ。

このコートも、その防寒性能と機能性から英国海軍が制式採用したことが切っ掛けで、第二次世界大戦後になってその余剰在庫が一般に放出されたことで急速に民間市場に広がったとされている。

軍用のものは、各種制服の一番上に着用される事を想定した被服として、膝丈までの大きくゆったりとした作りとなっていた。その為、フードなども帽子の上から被れる大型のサイズである。

フロントはトッグル(toggle)と言われる留め具とそれに対応したループ状の麻紐によって留められる為、通常のボタン・フロントとは異なり、手袋等をしたままでも着脱が可能である。トッグルは浮き型で素材は本来は木製だったが、最近では動物の角製等もある。 同様の理由(手袋のまま使えること)からサイドの大きな箱形のフラップ付きパッチ・ポケットは大振りな作りとなっている。

また前合せの左右を簡単に入れ替えることが出来ることも、風雨の強い艦船の上や屋外で使用する外套の代表的な特徴である。

他には、フードの口を絞ったり開けたりするためのフード・ストラップや、襟元からの風の進入を防ぐチン・ウォーマー、袖口にはカフ・ストラップがあり、サイドには歩行をスムーズにするためのスリットが入っている。留め部分には補強の為に、三角形の布や革が縫い付けられていることが多い。また、裏地を付けないタイプがほとんどである。

 

もともとダッフルという名称は、ベルギーのアントワープ(アントウェルペン)近郊の町の名ダッフル(デュフェル)に因み、またそこで織られていた起毛仕上げの厚手のメルトン生地の名前でもある。

誕生の起源には諸説あり、ノルウェーなどの北欧の漁師が作業着として着ていたもので、17世紀頃に生まれたという説が有力だが、オーストリアのチロル地方の農夫が仕事着に使用していたとする説、フランドル地方の羊飼いの外套説などと様々である。

またダッフルコートの別名にはコンボイ(輸送船団の船員に由来)コート、モンゴメリー/モンティ(英国陸軍のモントゴメリー元帥に由来)コートなどがある。

 

さてダッフルコートといえば、イギリスのグローバーオール社の製品が有名だ。

ダッフル341AS3Ccd-PLそのグローバーオール社の前身であるモリス被服製造(M&H Morris Industorial clothing company)は、元来、高級注文服の製造を主な事業としていたファミリー企業(既に大戦中には軍に軍服等を納めていた)だが、第二次世界大戦の終了後、1951年から英国々防省の委託により余剰となった大量のダッフルコートや防寒手袋などの販売に従事した。

その結果、ダッフルコートの人気が高く売れ行きがすこぶる好調であった為、自社でもダッフルコートの生産を開始して、社名もグローバーオール(”グローブ”と”オーバーオール”に由来)と改名したのだ。

現在では、グローバーオール社の製品はダッフルコートの代名詞となり、世界40以上の国に輸出されていると云う。更にイギリスのファッション業界の中で、アウターウェアーのカテゴリーにおいては、バーバリー社、アクアスキュータム社に次ぐ知名度を得るまでになっているとのことだ。

ダッフルコートは従前より無骨でタフな作業用の防寒コートとして発展してきたが、グローバーオール社がデザインや素材、縫製などにこだわり、一般のタウンウェアとして人気のものに変えていったのだ。

他にはフランスのブランド、オールドイングランドのものが人気のようだが、製造は英国で行われているらしい。このブランドのものは、カラーバリエーションも豊富でデザイン的にも女性に人気の様だ。

 

ダッフルコートは我国でも長い間、学生の定番コートとして定着していたが、近年では新たなデザインや素材の採用により、アイビーファッションが流行した時代とはまた異なった着こなしを楽しめる様になっている。

最近では、メルトン素材ではなくポリエステルやフリースなどの生地を用いた、外見の形状のみがダッフルのデザインを踏襲したコートもある。そのフォルムも伝統的なゆったりとしたものとは異なり、ストレッチ素材を加えたコットンなどを使用した細身のタイトなシルエットが、今風でモダンなデザインとされている様だ。

カジュアルシーンでは、ローゲージで編んだざっくり目のニットとの相性が良いが、特に他のアイテムとの組み合わせでも問題は無い。ボトムスも種類を選ばないが、ジーンズであればオーソドックスなネイビーのデニムカラーから、ウォッシュドで穴あきのクラッシュ/ダメージタイプのジーンズまで、どの様なものともコーディネイトし易い。

ダッフル771e0MsEvfVL._UL1500_色合いは、ダッフルカラーとも言えるネイビーがその代表色だが、近年では、以前よりのキャメルに加え、落ち着いたベージュ、シックな黒やグレー、明るいイエローにレッドなど、カラーバリエーションも豊富となっている。

基本のネイビーをベースとして好みのカラータイプを2着目以降に揃えれば、飛躍的にコーデの幅が広がると思われる。

とにかく色々なものと合わせ易く、利用フィールドの広いアイテムと言えるのがダッフルコートなのだ。

また、スーツに合わせたビジネスシーンでの活用も可能であり、そして年齢や世代にとらわれることなく、40代以降の年齢層でも充分着こなせるコートでもある。

 

ちなみに英国海軍では、下士官・兵がキャメル色を着用、士官がネイビー色(もしくはホワイト)を着る規則があるという話もあるが、個人的にはキャメルも捨てがたい。

勿論、民間人としては、そんな規則には左右されずに自由にコーデを楽しむことになるが、ミニ知識として知っていると何かの役に立つかも知れない・・・。

-終-

 

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