過去、ゲーム業界の勢力地図は次々に塗り替わってきました。専用プラットフォームの時代は去り、昨今ではスマートフォン(スマホ)向けゲームアプリの成長が止まりません。そこで、その市場動向を調べてみました・・・。
今年(2014年)のスマホ向けゲームの世界市場規模は約217億ドルで、前年比124%と大きく伸長しました。2017年にはスマホ向けゲーム市場は354億ドル近くにまで拡大し、家庭用ゲーム機市場を大幅に超えるとの予測もあります。(市場規模調査・予測はゲーム調査会社NEWZOOによる)
また、日本国内のスマホ向けゲーム市場に関しては、2013年が5,468億円、今年2014年は6,584億円程度で前年比+20.4%と拡大しますが、来年(2015年)以降の伸びは+10~14%前後とやや鈍化する見込みです。(スマホ専門マーケティング会社CyberZの予測、本年2014年3月25日発表による)
鈍化の要因は、なんと言っても我国のスマホ普及率が本年(2014年)3月時点で53.5%に達していることが大きいのですが、未だ成長の余力はあると考えられています。(総務省調べ)
さて、海外ではスマホ向けゲームの市場は急速に拡大を続けていますが、最近、同ゲームのダウンロード数が急伸しているのが、中国やロシア、インド、ブラジルなどの国々だといいます。国別のダウンロード数では、米国に次いで2位がブラジル、3位がロシアです。販売金額では1位が日本、次いで米国、3位が韓国であり、アンドロイド向けに限るとこの上位3ケ国で全体の約70%を占めています。
またハード別ではアンドロイド端末向けゲームが好調です。従来はアップルのiPhone向けが圧倒的に多かったのですが、大画面端末の普及も含めて、多数の機種が各国で販売されていることで市場が活性化している様です。Googleによれば、全世界のアンドロイド端末利用者の75%がゲームを楽しんでいるともいいます。
但し、現状は「グーグル・プレイ」が中国で提供されていないことが中国市場での伸長を阻んでいるのも確かですが・・・。
ゲームの種類も多種多様で、我国ではガンホー・オンライン・エンターテイメントの『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』やmixiの『モンスターストライク(モンスト)』、コロプラの『白猫プロジェクト』などのパズルシューティング&RPG要素の強いゲームが人気です。
海外では、英国のキングのパズルゲーム『キャンディクラッシュサーガ』などの所謂、カジュアルゲームから、フィンランドのスーパーセル(現在はソフトバンク社の資本傘下)の『クラッシュ・オブ・クラン』などの箱庭戦略ゲームまで、いろいろなタイプのゲームが人気を博しています。
しかし、日本市場はかつて携帯電話(フューチャーホン)市場で起きたと同様な、ここでもガラパゴス化(世界の中で日本だけが独自の成長・進化を遂げる現象)を示しており、先ずは1人当たりのゲーム購入金額が世界中でも突出して高いことが挙げられます。
今年(2014年)10月のデータでは、スマホ向けゲームに関して日本でのダウンロード総量は米国の4分の1(世界で5位)に過ぎないが、販売金額の合計では世界1位で米国の約125%となっています。
日本で人気ゲームの課金の仕組み(「アイテム課金」方式)は、基本料金は無料もしくは格安設定ですが、ゲーム内でより強力な武器・道具や優れた能力・キャラクターなどを得る為には追加の料金支払いが必要となります。この追加料金を支払うユーザーは全体の数%(6%くらいともいわれる)ですが、その中には月に数万円以上も使うというヘビーユーザーが多くおり、我国のスマホ向けゲームの市場規模を支えているそうです。
海外からみると、この様な月間で数万円も支払うユーザーが数多くいる国は(韓国を除くと)他には無く、極めて例外的と考えられています。それは、日本人にはパチンコやゲームセンター、そしてなによりも i-mode などを例にとるまでもなく、この様なコンパクトな遊戯に対価を支払う文化的な土壌があるからだと言われおり、これに比して欧米などではスマホ向けゲーム程度(の内容)には5ドル位でも払わないだろう、とされています。殊に新興国の市場や先進国でも若年の利用者は「無料じゃなければ使わない」という感覚が強い上に、類似のものや海賊版のゲームが登場してしまうと、直ちにそちらへ移ってしまいます。
更に日本での課金対象のコアユーザーの年齢層の中心は20~30代の独身の社会人が中心といわれていますが、この点でも海外との差(海外ではより若年層が主体)が際立っています。
また、昨今のパチンコ離れのトレンドも影響していると考えられています。その全てでは無いにせよ、ここ数年で数百万人単位で減少しているパチンコ・ファンの内の相当数の人々がスマホ向けゲーム市場に流入していると思われるからです。月に平均で約8,000円以上の利用金額を支払うマーケットが流れ込んで来ているとすれば、その購買力は決して侮れないものでしょう。(参考、Kijidasu!記事 【ザ・リサーチ】 『レジャー白書2014』発表によると、パチンコ人口は大台割れの970万人!!)
次に、ゲームの内容に関する利用者の好みも異なっている点があります。欧米ではスマホ向けゲーム市場では単純なライト/カジュアル・ゲームが主流で、シンプルなつくりで安定した運用が為されているコンテンツが好まれます。また、日本で人気のゲームの様な高度/複雑なものは(徐々に増えてきてはいるが)多くありません。支払いも海外ではアイテム課金ではなく、少額設定で売り切り販売をする方式が主流です。
広告宣伝の戦略についても、日本の様にテレビCMに大きな費用を費やしているゲーム会社は見かけません。海外では費用対効果が見込めない従来型のマスコミを利用した販促は行われておらず、フェイスブックなどのSNS等でユーザーコミュニティーを作る方法などが盛んであり成功もしている様です。但し、欧米とは違って、アジア圏などの新興国ではテレビCM等での告知・訴求はダウンロード数=利用者の獲得に貢献するという説も有力です。
業界全体としての課題は、世界的にも一部(人気上位)のゲームに人気が集中する傾向が顕著となってきていることです。
他社のゲームとの競争(全世界では競争相手は数十万本もあります)に打ち勝って顧客のスマホに自社のゲームをダウンロードさせる為には、宣伝や販促に高額のコストがかかると共に、特色あるゲームを開発するにも費用がかさみ、(特に規模の小さな企業の)アイディア勝負による新規参入が困難となってきていると言われています。
国内市場の鈍化を受けて、日本のスマホ向けゲーム会社も次々に海外進出を目指して行動を起こしている様です。
しかしながら、国内の成功体験にとらわれず、各国の国民性や文化的な特性をよく勘案した上で、市場のトレンドを把握しながら世界戦略を構築していく必要があるでしょう・・・。
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【参考】 本稿でのスマホ向けゲームのダウンロード数や販売金額については、スマホアプリに関す調査会社AppAnnie(アップアニー)の発表資料を参考にしています。
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