日本を象徴する富士山の山麓で、最近、謎の現象が相次いで発生しています。
これらの異常現象は、大噴火の予兆なのでしょうか・・・。
【何時、噴火が起きても不思議ではない富士山】
既に富士山編(1)で解説した通り、富士山は前回の大きな火山活動である宝永の噴火から300年以上を経て、そのマグマ溜まりには充分過ぎる量のマグマが蓄えられていると考えられます。
また2011年3月の東日本大震災と富士山直下の地震による影響で、そのマグマ溜りには、宝永噴火の時よりも大きな圧力(噴火が引き起こされるレベルの16倍にあたる1.6メガパスカル)が加わったとの説(独立行政法人 防災科学技術研究所 による) もあるようです。
この為、現状の富士山は自らの火山活動により、何時(いつ)、大噴火や山体崩壊が起きても不思議ではない状態で、その危険性はMAX状態である、と危惧されています。
更に、発生が間近であると懸念されている南海トラフ沿いの東海・南海地震や東南海地震の最新シミュレーション・モデルによると、その震動が(宝永地震と宝永噴火の連動と同様に)極めて高い確率で富士山噴火の引き金となると考えられています。
【散見される噴火の予兆】
近年、富士山が噴火する予兆ではないか、という現象の報告が多くなされています。そこで、ここ最近確認されている具体的な事象を以下に列挙してみます。
富士宮の異常湧水
2011年、富士宮市内の各所で、異常湧水(ゆうすい)が発生しました。もともと湧き水が豊富で有名な富士宮市ですが、同年の9月初め頃から大量の地下水が湧き出る現象が市内の淀師地区を中心に多く発生し、隣の富士市でも8月末以降、今泉地区などで道路が冠水する程に地下水の吹き出しが起きたといいます。
富士宮市も地下水を汲み上げるなどの対策を実施しましたが湧水は止まず、当時、市当局は同年夏は例年に比べて特に降水量が多かったこと(8月の降水量は前年比3倍、9月の降水量は前年比2.5倍)や台風の襲来(12号・15号と続いた)の影響が大きいとしていましたが、現在でも、この異常出水の明確な原因解明はなされていません。
この様な膨大な湧水は「水噴火」(火山学者の東大地震研究所教授、故・中村一明氏が命名したもの)なのでは、との説もあります。
水噴火は、通常の噴火活動と同じく仕組みで、本来、そこにマグマがあれば溶岩となって流れ出したものが、たまたま大量の地下水が存在した為、水だけが噴出したと考えられるものです。
上記、富士宮市での地下水が噴出したところでは、道路や用水路の壁などのコンクリート部分が白くなっている箇所がいくつも発見されました。これは、上昇してくるマグマの影響を受け、地下水が強酸性になっている為と考えられている(コンクリートはアルカリ性であり、酸性の成分と反応することで白くなる)のです。
過去には、1965年に長野県で発生した松代群発地震(その後の1979年の御嶽山の大規模な水蒸気噴火と関係していた可能性が指摘されている)の際にも、同様の酸性の湧水が見られたそうです。
つまり、一部の火山学者が指摘するように、富士山の地中にある永久凍土が、地殻の圧力増大とマグマの上昇により溶けて湧出しているのであれば、いたって危険な兆候といえるでしょう。
もちろん市当局の見解などと同様に、火山活動とは直接には関係が無く、単に降水量の増加が原因であり、もし仮にマグマの影響だとしたら湧き出した水は温泉になるだろう、との専門家の意見もあります。
河口湖「六角堂」の水位異変
2013年3月、河口湖では水位が急速に低下しました。それまで舟で渡っていた湖の東南に浮かぶ景勝地「六角堂」へ、干上がった湖底を歩いて渡れる程になりました。その後、水面は上昇しましたが、この現象の確かな原因は不明です。
今年(2014年)4月~6月にかけての現地調査では、河口湖東岸と西岸で湖畔の水位にわずかな差が発生しており、なんらかの地殻変動が起きていると推測されています。
単純な雨量の低下であれば、他の富士五湖の水位も低下するはずです。しかしこの時、河口湖だけが異常な程に水位が低下したのはなぜでしょうか。
泉ヶ滝(いずみがたき)の水枯れ
富士スバルライン5合目の登山道付近の水場「泉ヶ滝」では、岩盤からの湧き水が突然枯渇しピタリと止まりました。2011年3月15日の静岡県東部地震(M6.4規模)の発生以降、水量が激減していたそうで、近辺の小御嶽神社裏手の駐車場にも長さ10m程度の地割れが発生、2012年の前半にはそこから湯気らしきものが立ち昇っていたそうです。
富士山中の地下水脈が何らかの原因により遮断されたのか、あるいは途中で蒸発しているのでしょうか。
北東側「滝沢林道」の部分崩壊
富士山北東斜面の5合目へ通じる「滝沢林道」(途中までは自動車の進入が可能)は、標高約1,850~1,900m地点のアスファルトの路面が約300mにわたって陥没し崩壊しているそうです。詳細な調査で、亀裂や歪曲は崩落現場の周辺にも複数個所見られることが判明しており、またここでも、周囲の木々が枯れ道路脇の擁壁のコンクリートに白色化現象が現れています。
林道崩落の原因については、公式には大雨による土砂の流出とされていますが、この付近で酸性の湧水が発生していたとすれば、やはり火山活動の影響を受けたものである可能性は否定できません。
また、8合目より上部の地中の凍土層が溶け始めたことが原因との説もあります。
進行する大沢崩れと地熱の上昇
頂上付近から山麓(標高2,200m付近)まで、富士山の西側を半分に切り裂く巨大な谷が「大沢崩れ」です。その崩壊は今でも進行しており、時折、大きな岩が転げ落ちていきます。
近くの大沢駐車場では北西斜面で大規模な雪崩が発生、スバルライン5合目のレストハウスが膨大な雪と土砂・破砕樹木に直撃され破壊されたこともあります。
原因は、急斜面の積雪が山肌の地熱で短時間に解けて崩れ落ちる「スラッシュ雪崩」と考えられていますが、富士山全体の地熱上昇による「万年雪」の融解が進行しているともされます。
幻の湖「赤池」が出現と消失
2011年の富士宮市内の異常湧水と同じ時期に、精進湖の東側に幻の池と言われる「赤池(富士六湖)」が7年ぶりに出現しました。
普段は水がない状態の赤池ですが、その出現は富士五湖の水位変化に左右されると考えられています。非常に多くの雨が降った後などに精進湖の水位が大幅に上昇すると、連動して現れると考えられてきました。
半世紀ほど前までは常時存在していた様ですが、精進湖と地下で繫がっているとされる本栖湖や西湖の湖水が発電用などに大量に使用されるようになってからは、普段はその姿を消してしまったとされています。
近年では1998年、2004年、2011年などに見られました。但し、大きさは他の湖よりずっと小さく直径50m程度の長円形の池です。
しかし赤池は2011年の秋(9月)以降、姿を現していません。豪雪が多くの雪解け水をもたらした年でも、出現していないのです。
そこで、この池の出現は雨量などとは関係なく、周りの地殻変動が地下水に影響を及ぼして赤池が出現するとの説もあり、この時(2011年)の出現も噴火の兆候ではないかとの考えもあるのです。
北西斜面が変形
噴火の予兆現象には山体傾斜の変化というものがありますが、富士山北西斜面の標高約2,090m地点で、富士第5観測所の傾斜計が3.11東日本大震災の直後に変化を計測し、いったん落ち着いたものの2011年8月にはまた変化が観測されました。以降、北西斜面では現在も小さな隆起が進行しているようです。
河口湖で気泡が発生
2012年7月には、河口湖で謎の気泡が大量に発生し、異常現象だと話題になりました。河口湖では1987年や2006年にも大量に気泡が発生する現象があり、富士山噴火の前兆ではないかと騒がれましたが、その時は何も起きずに済みました。この大量の気泡の発生理由は不明ですが、湖底の温度上昇が原因なのではないかとも言われています。
山腹から水蒸気が発生
2012年1月と2月に、富士山の北西斜面の中腹部分付近から水蒸気のようなものが出ているとの目撃情報がありました。
調査の結果、道路の切通し壁面の隙間から、ごく弱い湯気が出ているのが確認されました。但し、噴気音や硫黄臭は確認されず、温度も摂氏10度前後だったことや、その他の分析から気象庁は噴火の兆候ではないと発表しました。
また気象庁は、「たしかに湯気ではありましたが、温泉地のように湧き出しているように出ていたわけではありません。その日は外気がマイナス10度でしたので、そこに10度程度のかすかな水蒸気が出ていたのですから、ふだんよりも白く見えたと考えられます」、また「富士山には大小いくつもの空洞があって、そこから空気が湯気のようになって漏れ出てきたと考えられます」と説明しています。
南東山麓直下に活断層
2012年5月の文部科学省の発表により、富士山南東山麓の直下に断層があることが判明しました。
この断層は、活断層の可能性が高いとされ、北東~南西方向に伸びる長さ約34キロの逆断層で北西に傾斜しており、下端は富士山直下の深さ十数キロと推定されています。
この活断層が活動した場合はM7級以上の地震を起こすとみられ、大きな揺れが生じた場合は富士山東斜面で山体崩壊が発生、大量の土砂が雪崩のように斜面を降る「岩屑(がんせつ)雪崩」や、夥しい泥流が発生する恐れがあり、南東側の御殿場市方面に甚大な被害を及ぼすとされています。
最悪の場合、東名高速道路の閉鎖や海岸付近までも被害が及ぶと懸念され、「甚大な被害を周辺地域に引き起こす危険性がある」と報告書は結論付けています。
尚、富士山では約2,900年前に大規模な山体崩壊と岩屑雪崩が発生した後、泥流が御殿場付近を広範囲に埋め尽くす「御殿場泥流」が起きました。地震などが原因とされており、その時、今回発見された活断層が動いた可能性もあります。
その後、この断層が御殿場泥流発生の以後に活動した形跡はほとんどありませんが、「いつ何時(なんどき)、大規模な地震を引き起こしても不思議ではない」と識者は言います。
小笠原諸島の西之島で大規模な噴火
2013年11月には、小笠原諸島の西之島付近で海底火山の噴火により新島が誕生しましたが、現在では活発な噴火活動の継続で西之島と一体化しています。
この西之島のある小笠原諸島から北方に向けて、伊豆諸島の島々や箱根が火山列として連なっています。そしてその北端に最大級の火山、富士山が存在しているのです。
そして2011年3月の東日本大震災以降、この火山列にかかる北アメリカプレートやフィリピン海プレートからの圧力(ストレス)もより強大になっていると思われます。
富士風穴の氷筍が減少
富士山の麓に、夏でも溶けないという氷「氷筍」で有名な洞窟「富士風穴」がありますが、2011年の地震の後、氷筍が急激に溶け出す現象が起きたという報告があります。
また2012年初頭には、冬にもかかわらず氷が溶ける現象が起き、例年よりも地熱の上昇があるのではとも云われました。
但し、洞窟の氷が少ないのは、積雪が少なく乾燥状態が続く年の傾向だとして、噴火とは関係がないという意見もあります。
「西湖コウモリ穴」のコウモリの異常出現
2011年12月~2012年1月にかけて、富士河口湖町の「西湖コウモリ穴」の洞窟周辺で、コウモリが激増するなどの異変が起きました。船津胎内神社にある洞窟では、以前には見かけ無かったモモジロコウモリが見られるようになったりもしたそうです。
この原因としては、富士山噴火の予兆などではなく、2011年9月の台風で西湖の水位が大きく上昇した時に河口湖へ向けて大量の放水をした際に、コウモリが生息する多くの洞穴にも水が流れ込み、その為に住処を失ったコウモリが西湖コウモリ穴に移動、集まったというものがあります。
しかし、このコウモリ穴のコウモリたち(特にコキクガシラコウモリ)は、富士山の地下火山活動により、もともとの棲家の洞穴が崩壊した結果、何処からか集団で移動(退避)して来たと考える人もいる様です。
そして2012年2月には、その大移動してきたはずのコウモリがまた突然にその数を減らしたとのことであり、これは、(西湖コウモリ穴に繋がっている)人間の知らない気温の高い洞穴に移動したとの説もあります。
上記の内の多くの事象は、富士山中でマグマが上昇してきたことを間接的に示すものではないかと危惧されています。
勿論、中には不確かな情報も入り混じっており、また科学的な調査が為されていない、単なる伝聞に基づくものもあります。
つまり、ここに挙げる全てが、富士山の近日中の噴火の予兆とは言えませんが、その一部だけを取り上げて検討してみても、富士山は噴火へ向けて刻々と秒読み段階に入っていると考えられるのです。
東日本大震災で地殻の大変動期に入ったと言われる日本列島ですが、私たち日本人は、御嶽山の噴火で再度、そのことを認識するべきでしょう。
ある専門家によれば、非常に高い確率で3年以内に富士山は噴火するというのです・・・。そこで、いよいよ次回は噴火編です!!
-終-
富士山編(1)~現状 ・・・はこちらから
御嶽山噴火で改めて知る、日本の火山の怖さ!! 富士山編(3)~噴火 ・・・はこちらから
《スポンサードリンク》