昨今、いつ噴火してもおかしくないと言われている富士山ですが、今年、2015年は特に危ないそうです。現実に噴火が起きると、どの様な状況になるのでしょうか。
そこで富士山編の3回目は、噴火の実態に迫ります・・・。
【噴火被害の概要】
少し古いデータですが、政府(内閣府)が2004年に公表した報告によると、富士山の噴火で発生する経済的な損失は約2兆5,000億円に達すると推定されています。
ひとたび富士山で噴火が起これば、直接的な人的被害(噴石の直撃など)は周辺地域で1万3,600人に及びます。
噴煙は東方に吹き流されて首都圏にまで到達し、降り積もった火山灰によって電気設備等にトラブルが多く発生し、大規模な停電が起こることで公共交通機関も殆どが停止するとされ、都市機能は壊滅的な状態となります。
また溶岩流が駿河湾方面へ流れ下ることで、我国東西間の交通は数か月にわたりに分断されてしまいます。東名高速や東海道新幹線が溶岩に飲み込まれてしまった場合には、日本の経済活動全体に大打撃が及ぶ最悪のシナリオとなります。
火山灰の恐ろしさ
更に噴火の被害で恐ろしいのが、火山灰そのものにより引き起こされるものです。政府(内閣府)によると、富士山の噴火による火山灰はわずか数センチでも降り積もっただけで、水と混じり合って泥状になり滑り易く、自動車など移動は困難となります。
静岡と山梨の県境周辺で30センチ、首都圏でも2cm~10cmほどの降灰量が想定され、噴火後は数日間は外出が出来なくなります。
また火山灰は、積雪などよりも重量があり、建築物が押しつぶされる可能性もあると言われています。
宝永大噴火では上空20キロメートル以上まで噴煙があがったといわれていて、そうなると相当遠距離の地点でも航空機は飛行できません。
火山灰は細かく、融点の低いガラス質の物質を多く含んでいます。この火山灰が航空機のエンジンの燃焼室に吸い込まれると溶けてタービンの羽根などに付着して固まったり、エンジン内の冷却孔が塞がれたりして、エンジンが故障して重大な運航障害を引き起こしてしまうのです。また、操縦席の窓ガラスに傷がついて視野が塞がれたりして危険度が増大します。
最近の例では2010年の4月、アイスランドにあるエイヤフィヤトラヨークトル山の噴火で、欧州の約30か国の空港が閉鎖となり、1週間にわたり10万便もの航空機が運休しました。富士山の噴火でも、飛行機は火山灰に弱いために比較的長い期間、完全ストップとなるでしょう。
火山灰は前述のようにガラス質の物質を含みます。この物質を吸い込んで体調を崩す人の数も、数百万人単位になることが予測されています。火山灰で目が傷ついたり、気管支や肺に入り込んで呼吸困難や気管支炎を発生させる恐れもあります。
直接、噴火の被害を受けていなくとも、体調を崩した場合にも病院へ行くことも出来ず、交通状況が復旧するまで自宅等で待機するしかありません。防災科学技術研究所によると、火山灰は大気中に数か月間は滞留するので、長期間健康被害を及ぼすとしています。
宝永大噴火で富士山は、当時の江戸の町や相模、武蔵の国一帯に約7億立方メートル、現在の東京ドームで約560杯分もの火山灰を降り積もらせたといいます。そしてそれは数週間にわたって続いたとされます。
大停電による危機
航空機と同様の問題が、電力エネルギーの供給に関して発生する可能性があります。例えば、東京湾周辺に数多くある火力発電所では、主に外気を取り込んで燃料を燃やして発電するガスタービン式発電機を採用していますが、つまり航空機と同じことで、取り込む空気に火山灰が混入している場合にはタービンが一斉に故障・停止してしまうのです。
また、幸いにして発電所が発電を継続出来ても、水分を含んだ火山灰は電気を通電し易いので、送電線等に降灰すれば高圧電線が漏電して大規模な停電が起きます。更に火山灰の重みで送電線が切断されることもあり得るでしょう。
こうして火山灰の降下により、首都圏では大停電が発生する恐れもあり、当然ながら通信ネットワークにも支障をきたし、その場合は官公庁や企業などのコンピューターシステム、そしてATMなどの金融オンラインや証券取引のネットワークなども停止し、日本中の経済活動が大混乱に陥るでしょう。
水道もストップ、携帯電話も利用不能
水道に関しても、水源地に降り注ぐ火山灰の影響で給水作業が停止になることもあり得ます。首都圏の数百万人もの人々が上水道を長期間にわたり利用できない事態も想定されるのです。
また水源の汚濁だけではなく、降灰地域の農作物への被害が大変心配されます。
更に携帯電話などの無線通信の仕組みやインターネットは、各地の基地局や中継システムが火山灰の影響で機能停止する可能性が高く、連絡・通信手段の途絶という大問題が発生するでしょう。
そして火山灰が携帯電話やスマホ、PC、テレビ、デジカメなどの家電品や精密機器の中に入り込むと修理さえ出来ないかも知れません。
日常生活の瓦解
東日本大震災の発災当時、一時的に首都圏のスーパーやコンビニからも一部の食品等が品切れになるという現象が起きました。かつてのオイルショックの時のようなトイレットペーパーなどの生活必需品の買い占め行為なども起きるかも知れませんし、誰しもが長期間の自宅待機を強いられると日々の生活にも困る可能性があります。
残念ながら現状では、富士山の噴火による周辺地域や首都圏への影響・被害に関しては、地震等によるものとは異なり、政府や各地方自治体などの公的機関による、しっかりとした被害の想定シュミレーションや対策計画が十分に検討、立案されていない模様です。
このままでは、首都圏直下型の大地震や東海地震と同等の被害が発生する可能性もあり、より準備が不充分な為に住民にとっては想定外の危険に晒される恐れがあります。未だ各地域での具体的な避難方法や手順などは決まっておらず、内閣府の検討会でも自治体間の広域避難についての協定の不備などが指摘されています。
富士山の大規模な噴火の影響は、周辺と首都圏の限られた地域だけの被害ではなく、現実には東日本大震災以上に日本全体に大打撃を与える自然災害なのだ、との認識が必要です。
【富士山麓周辺の現状】
山麓周辺の店舗や観光施設には噴石から頭部を守るヘルメットなどが備えられていますが、登山者や観光客が利用可能なものは5合目でも数十個程度しかないと言われています。当然、各山小屋でもヘルメットや担架を備えていますが、利用者全員分はありません。
夏山シーズン最盛期に登山道が火山灰の積灰で閉ざされ、登山客が数日間山小屋に閉じ込められた場合、食料も水も不足するとされていますが、現状の山小屋の限られたスペースでは対策物資の十分な備蓄は困難であるとされています。
地元の関係者は、自ら富士山の噴火に備えている登山客はいないと語ります。そこで可能な対策としては、避難壕の建設や危険・異常を知らせる拡声機を山小屋に設置したり、各々の登山客に自らヘルメットや非常用の食糧を持参するように訴求することが有効だとしながらも、確実に被災者を減らすためには登山者の数自体を減らすしかないとさえ言います。
つまり、地元からは入山規制の導入を真剣に考えるべきだとの指摘もあるのです。
怖い、恐ろしい、とだけ言っても何も始まりません。先ずは自分たちで可能な対策を講じましょう。
基本は大地震の対策と同様のようですが、加えて防塵マスクやゴーグルの常備あたりでしょうか・・・。
また、噴火の一報に接したら(可能ならば)屋内への火山灰の侵入を防ぐ手立てを実行しましょう。
-終-
【追加情報】 今年(2015年)7月の富士山の山開きまでに、登山道に面した山小屋などに登山者用ヘルメットが合計約3,100個が配備されることになった。富士宮、御殿場、須走(小山町)の3ルートには、静岡県の補助金で約620個を用意する予定。静岡県によると昨夏にこの3ルートを通った登山者は、約11万5,000人に上るという。大きな噴火などが発生した場合は、今回予定している山小屋などに配備されるヘルメットだけでは足りないため、引き続き登山者には持参を呼びかけるという。
また富士宮市によると、富士宮ルートには、ヘルメット、ゴーグル、マスクの計200セットを配備することになった。山小屋に各20セット、5合目のレストハウスに40セットを置く計画だ。御殿場ルートは計約120セット、須走ルートは計約300セットを配備する方向で調整しているが、御殿場市は7月の山開きまでに間に合わせたいとしている。
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