筆者も親族に癌(がん)患者がいましたが、たしかに日本人には癌が多いようです。
医者と話していても、「死因が癌の近親者がいますか? 」などと聞かれると、やはりゾッとしますよネ。
昔はよく「早く、癌の特効薬が発明されないものか? 」と言われたものですが・・・実態はどうなんでしょう。
現在の癌(がん)の治療方法については、先ずは外科的な手術や放射線治療、そして化学療法(抗がん剤の投薬)等がありますが、そこに新たな治療法である免疫療法が加わる可能性が出てきました。
小野薬品工業のPD-1抗体を利用した、免疫療法を活用して癌細胞を攻撃する免疫治療薬/PD-1阻害薬『抗PD-1抗体オプジーボ』(以下、一般名のニボルマブ)の実用化のメドが明らかになったからです。
もちろん免疫療法に関わる新薬は既に多くが存在していますが、我国の国民健康保険制度において認可されたものは未だありませんでした。ニボルマブは、公的な医療保険で使用可能な初の免疫療法薬となり、年内にも発売される見通しと云われています。
ちなみに、PD-1分子が京都大学の本庶佑名誉教授らの研究チームにより発見されたのは1992年であり、この薬の実用化までには20年以上かかったことになります。
PD-1阻害薬は、分子標的薬の中でも免疫の働きを利用した癌治療薬の一つで、完全ヒト型抗 PD-1 抗体といったリンパ球の受容体の一種に作用して、免疫系のブレーキ役であるPD-1の働きを阻害することで免疫反応を覚醒・再活性させて、癌細胞を攻撃する仕組みです。
体内の異物を攻撃する免疫系は、その攻撃力が強すぎると自らの体までを傷つけてしまうため、攻撃を抑制するスイッチを備えていますが、癌細胞はこの抑制スイッチを騙して作動させることで免疫系からの攻撃から逃れていると考えられているのです。
ところで、癌の治療法の一つである一般的な化学療法(抗がん剤治療)は、癌の増殖を抑える仕組みのために数年で耐性ができ、結局は延命効果しかないとされます。また、分裂する細胞を無制限に攻撃し癌細胞と正常細胞を区別なく叩くために、強力な副作用を生じることが問題視されてきました。
しかし、人体の免疫系の抑制スイッチを解除させ、免疫系にがん細胞を攻撃させる免疫療法薬は、本来、人間に自然の備わっている免疫力を高めて癌細胞と戦わせるため、副作用の心配が大変少ないとも言われているのです。
今回、小野薬品工業が米国のブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)と共同で開発したニボルマブが対象とする癌は、悪性度が高い皮膚癌の一種である「悪性黒色腫」(以下、メラノーマ)です。
メラノーマは、皮膚の色素を生産する細胞が悪性化した腫瘍と考えられており、末期になると非常に悪性度が高いとされています。初期であれば、外科的な手術での切除が可能な場合もありますが、切除不能なメラノーマは極めて難治性の高い癌とされています。
小野薬品工業によると、今後はメラノーマ以外にも食道癌や肺癌など、他の部位の癌にも対象を広げていくそうですが、一方で、「免疫を活性化しすぎる可能性があるため、慎重に投薬する必要がある」とのことです。
また当然ながら、ニボルマブの投与でも効果が出ていない患者も一定の割合で存在していますが、他の抗がん剤や免疫療法と組み合わせれば効果が上がる可能性があるとも云われています。
こうして癌(がん)と戦う医療の最前線に、新たな武器が加わることは心強く思います。
しかし不安なのは、我国の健康保険制度の財政状態です。
新薬の承認と保険の適用は大変ありがたい話ではありますが、国民皆保険の制度が、多くの新たな高額の薬の導入に耐えられるかといった疑問も残り心配も募りますが、皆さんのお考えは如何でしょうか・・・。
-終-
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