美味しい洋食には欠かせないバターですが、その代替品として生み出されたマーガリンと、健康に良いのはどちらでしょうか? 肥満を気にする方には、どちらにしても過剰な摂取は要注意でしょうけど!!
バター(butter)とは、牛乳を原料とした食用油脂で出来た乳製品です。
ラテン語の『butyrum』を元にして、「牛のチーズ」を意味するギリシア語『boutyron』が由来とされています。牛(ウシ)以外の乳から作られることもありますが極めて稀なため、この記事では牛乳から作られるものに限り扱うことにします。
その起源は正確には不明ですが、少なくともメソポタミア文明の頃には存在していた様で、古代ギリシアの時代に中東から西洋(欧州)に伝わったとされています。しかし、オリーブオイルを食することが定着していた南欧州には馴染まず、欧州北方地域の食習慣に先行して定着していきます。
チーズとは異なり保存性が無いことなどから、当初、西洋では塗り薬、化粧品、潤滑油などとして使われていました。9世紀頃になってやっと本格的に食用として使用され始めましたが、随分と長い間、下層階級・貧民の食品とされていました。16世紀頃になってやっと貴族や上流階級も含めた一般的な食品となったとされています。また歴史的にはランプの燃料として使用された例もあります。
バターの作り方は、乳の中の脂肪分を凝固させるもので、入れ物の中の生乳を揺らし続けただけでもバターは出来きます。また100gのバターを作る為には、原料の牛乳が約4.8リットルは必要とされています。
常温においてはやや黄色味をおびた白色の固体で、ビタミンAをはじめとした各種ビタミンや栄養素を豊富に含んでいます。大きくは、原料乳を乳酸発酵させてから作る発酵バターと、そのまま作る無発酵バターとがあり、それらに食塩を添加した有塩バターと添加していない食塩不使用バターの4種類に分かれています。但し、国内で市販されているバターに関しては、発酵バターはほとんど流通していません。
我国では江戸時代に一部作られていましたが、本格的に生産が開始されたのは明治時代以降です。
バターの用途としては、一般的にパンやクラッカーなどに塗布して食したり、ソースの材料であったりします。また具材を焼いたり炒めたりする場合の油として利用したり、各種料理の調味料としても広く使用されます。更に、食塩不使用バターは洋菓子作りに多く使われています。
一方、マーガリン (margarine) は植物性油脂もしくは動物性油脂を原料とする加工食品で、19世紀末、戦争の混乱でバターの価格が高騰した際に、フランスのナポレオン3世の命令でバターの安価な代用品として作られました。
マーガリンは精製した油脂に発酵乳・食塩・ビタミン類などを加えて乳化し練り合わせた加工食品ですが、バターとの大きな違いは、バターの主原料は牛乳ですがマーガリンの主原料は植物性(一部は動物性)の油脂であることです。
日本ではJAS規格の定めにより、マーガリン類の中で油脂含有率が80%を超えるものがマーガリン、80%未満のものがファットスプレッドと分類されています。
マーガリンの名前の由来は、1813年にフランスの化学者であるミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールが、動物性脂肪の研究からマルガリン酸を発見したことが切っ掛けです。
マルガリンの語源はギリシャ語の『margarite(真珠の意)』であり、真珠のように美しく輝くという性質を表現したものと云われています。
その後、1869年にナポレオン3世が軍用、及び民生用に用いる為にバターの安価な代用品の開発を進めたところ、フランス人のイポリット・メージュ=ムーリエがニッケル触媒を用いる水素添加反応で植物油が硬化することを発見、更にこの反応を活用した硬化植物油を生み出します。そして、この硬化植物油により生成されたものが後にマーガリンと呼ばれるようになりました。
メージュ=ムーリエの考案したマーガリンですが、1871年にはオランダのアントニウス・ヨハネス・ユルゲンスがその特許権を買収して、その後、彼はサミュエル・ヴァン・デン・バーグと共にマーガリン・ユニ社を創業し、この伝統が現在のユニリーバ社に引き継がれて行きます。
日本には1887年に初めて輸入され、1908年には横浜の帝国社によって国産化が成功しました。
20世紀に入るとこの硬化植物油を用いたマーガリンの製造が世界中で開始されます。特に第二次大戦中のアメリカではバターの枯渇からマーガリンが大々的に製造される様になり、以降、食品として広く定着していきます。
さてバターとマーガリン、どちらも脂肪が多く含まれており、決して健康に良い食材ではないと思われます。しかし、パンのお供や各種の料理・菓子類など作る時、どちらを選べばより健康に良いのでしょうか?
バターもマーガリンも、カロリーや脂肪含有量はほぼ同じとされています。大さじ1杯当たりでは約100キロカロリーとなり、11~12グラムの脂肪を含んでいます。
以前は、主に植物性脂肪から作られるマーガリンの方が、動物性脂肪から作られるバターよりも健康に良いとされていましたが、最近では、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸(水素を付加して硬化した硬化油を製造する過程で発生)が健康被害の原因として大きくクローズアップされています。
トランス脂肪酸は心臓疾患や多くの現代病の原因である可能性が指摘されており、米国などではすでに食品中に含まれるトランス脂肪酸の量の削減が行われています。
しかし注意しなければいけないことは、決してバターが健康に良いのではなく、単なる「良くないモノどうし」の比較の問題で、バターに多い飽和脂肪酸もコレステロールの増加などで健康被害(肥満、動脈硬化など)を招く恐れがあることで知られているのです。
ところが皮肉にも、水素添加によって作られる通常のマーガリンはトランス脂肪酸を7~8%前後、ファットスプレッドの場合でも5%前後を含みますが、昨今、トランス脂肪酸の低減をメーカー各社が留意したことにより、逆に飽和脂肪酸の量が増加しているとの指摘もあります。
結論としては、体に良くない飽和脂肪酸を多く含むバターよりも、より危険なトランス脂肪酸を多く含むマーガリンの摂取が、はるかに重大な健康リスクと繋がると考えられるのです。
どちらも高カロリーで、健康には良くありませんが、やはりリスクを少しでも低減するためには、バターの方を選ぶのが正しい様です!!
-終-
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