頑張れミドリムシ、地球を救え!! 〈304JKI10〉

ミドリムシ1mainimage_euglenaエネルギー不足や環境問題、そして食糧危機も、僕たちミドリムシにお任せください!!

明るい地球の未来は、僕たちが創ります(たぶん)。ちなみに、本名(学名)はユーグレナといいます・・・。意外と可憐? な名前でしょ

 

ミドリムシは、ユーグレナ目に属する鞭毛虫の仲間であるミドリムシ属 Euglena の総称です。体長わずか約0.1mm以下という小さな微生物(藻の一種)で、その姿を見るためには顕微鏡を使うしかありません。が、その小さな体には、人類が抱える問題を解決する無限の可能性が秘められているというのです。

ミドリムシとは

ミドリムシは単細胞生物で、そのほとんどが紡錘形です。二本の鞭毛を持ちますが、一本は非常に短く細胞前端の陥入部の中に収まっている為、しばしば単鞭毛であると誤解されています。もう片方の長い鞭毛を進行方向へ向けてくねらせるように動かして、独特のユーグレナ運動(すじりもじり運動)を行いながら進みます。

鞭毛の付け根には、ユーグレナという名の由来でもある真っ赤な眼点がありますが、これは感光点ではありません。この真っ赤な眼点の役目は、特定方向からの光線の進入を遮り、感光点の光認識に指向性を持たせる為だそうです。

また細胞内には楕円形の葉緑体を持っています。葉緑体は三重膜構造となっており、二次共生した緑藻に由来します。この緑色の体で植物の様に光合成を行って栄養分を体内に蓄えるだけでなく、鞭毛を使い動物のように移動することも可能なのです。つまり、鞭毛運動をする動物的性質をもちながら、同時に植物として葉緑体を持ち光合成を行います。こうした植物と動物、双方の性質を備えている生物は大変珍しい存在なのです。

因みに、オランダ人の科学者で「微生物学の父」といわれているアントニ・ファン・レーウェンフックが、1660年代に自作の顕微鏡を用いてミドリムシを発見しました。またミドリムシ(学名:ユーグレナ)はラテン語で美しい(eu)眼(glena)という意味を持っています。

人類の課題を解決

現代の人類が抱える、環境問題や食糧問題、そしてエネルギー問題などの主要な課題に対して、その解決策としてミドリムシの活用に期待が持たれています。

先ず最初に、人類が抱える様々な課題の中で、地球温暖化の防止は最重要なテーマのひとつです。そして、地球温暖化をもたらす二酸化炭素(CO2)の排出を抑制する為に、ミドリムシの活用が解決策として考えられています。

それはミドリムシが細胞内には葉緑体を持ち、光合成によりCO2を炭水化物等に固定化して酸素(O2)を作るからです。また、この生産効率がミドリムシはとても優れているのです。そしてこのCO2の固定能力の高さが、地球温暖化対策にとても有望であるとされているのです。

 

次に、発展途上国を中心とした人口の増加による食糧不足の問題に関しても、ミドリムシがその解決のカギとなるかも知れません。ミドリムシは既に説明した通り、植物の性質を持つことで光合成によって生育するので場所を選ばず、太陽光と水、そしてCO2があれば育つことが可能です。また、栄養素の生産効率はなんと稲の約十数倍とも言われ、その大きな特徴は植物性と動物性の両方の栄養素、ビタミンやミネラル、アミノ酸、DHA、EPAなどの不飽和脂肪酸などを59種類も含むことから、食品類への活用の可能性が鋭意、研究されています。

ミドリムシには吸収を妨げるセルロース(消化されにくい堅い細胞壁)がなく、人間の持つ酵素で容易に消化される細胞膜で覆われています。その為、人間がミドリムシ由来の食品を摂取した場合、大変、効果的に栄養素を体内に吸収することが可能で、その消化率はなんと93.1%と言われています。

この様な性質を有するミドリムシは、先進国の人々にとっての栄養補助食品やサプリメントとしてだけではなく、発展途上国などで微量栄養素の不足に苦しんでいる人々に向けた食料援助の基幹食材として流通される可能性もあるのです。

また、ミドリムシはエネルギー問題の解決策にもなるかも知れません。ミドリムシは二酸化炭素を吸収して光合成を行う際に、その内部に油脂を溜める性質があり、軽油に似た燃料を精製することが出来るのです。しかも、この精製時には余計な廃棄物を発生させません。二酸化炭素を消費しながらクリーンな燃料を生み出すという、願ったり叶ったりの大変な優れものなのです。またミドリムシから抽出された油は、非常に軽質である為にジェット燃料に適している事もわかりました。しかもパームヤシやナタネなどの油脂植物と比較しても10倍以上の油脂生産能力を持っているのです。

エネルギー問題に関しては、化石燃料の代替として多くのバイオ燃料が登場していますが、他の(トウモロコシやサトウキビなどの)農作物から生み出されるバイオ燃料の場合は、その農産物を大量に消費してしまうことで新たな食料危機を招くことが懸念されています。そこで既存の農作物を利用すのと比べて、食糧不足や高騰の問題を引き起こさないミドリムシを利用してエネルギー問題に対処しよう、との動きが広まっているのです。

ミドリムシに関しては、医薬品や医療技術への応用も研究が盛んな分野です。例えば、ミドリムシに含まれているβ-グルカンの一種であるパラミロンは、ミドリムシだけが持つ天然成分です。この物質は、表面に無数の小さな凹凸や穴が空いていて、そこに油分や水分など体内の不要物を取り込んで体外に排出することが可能とされています。またミドリムシは、アディポネクチンという物質を含みますが、この物質は健康維持の為の超善玉物質とされ、動脈硬化や高脂血症、糖尿病などを予防すると言われ、抗ガン作用もあるという説もあります。他にはクロロフィル(葉緑素)が多く含まれていますが、クロロフィルには、造血、抗菌や抗炎など様々な作用があります。それからミドリムシには、乳酸菌を活性化させる力もあるとされています。こうした多種多様な働きから、医薬品への応用が大いに期待されているのです。

更にミドリムシの、高濃度のCO2の中という過酷な環境下でも成長が可能な生存能力の高さも注目に値します。その生育中の水中に大量のCO2を混入させてやれば、より光合成が活発化して増殖が進むのです。通常の植物ではこうしたことはあり得ません。常態の何倍もの濃度のCO2に晒されると成長は逆に阻害されるのが一般的な植物の反応ですが、ミドリムシに関しては通常の(諸説ありますが)数百倍~千倍くらいの濃度までは問題がないと言います。それどころか、収穫量が通常の30~40倍に増加するとされています。

課題と今後

この様に万能で人類にとって夢のような存在であるミドリムシですが、今までは大量培養(栽培?)が困難でした。

ミドリムシは栄養価が極めて高い為に、細菌、バクテリア、プランクトンなどにとっても大変な御馳走で、いくら培養しようとしても外部から他の微生物が侵入してミドリムシを食べ尽くしてしまうのです。そこで外界とは完全隔離され、また大量の二酸化炭素の供給と高温状態を維持する大型の(水槽/プール型)量産装置の建設が必要となります。

食糧にせよ燃料にせよ、ミドリムシをうまく活用出来れば資源が枯渇する心配はありません。ところが、大量に継続して生育させることが難しい状況が続いていたのです。

しかし最近では、日本国内でも一部の企業(ユーグレナ、神鋼環境ソリューションなど)が積極的に挑戦しているので、近々にも大量培養のメドが立つのではないかと期待されています。

 

他にも驚くような可能性を持つのがミドリムシです。日々、様々な分野で研究が進んでいます。

人間の皆さん、僕たちミドリムシを是非、応援して下さい!!

-終-

【参考記事】
日本経済新聞 『ユーグレナ、1部昇格が試すミドリムシの実力』

日本経済新聞 『藻類燃料で走る、飛ぶ 車やジェット旅客機で』

日本経済新聞 『神鋼環境、ミドリムシの量産技術確立 16年度にも食品向け』

 

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