2015年3月13日(金)(始発駅基準)をもちまして寝台特急「北斗星」は運転を取り止めます。ついに、この発表がありました。北斗星に関する思い出の記事は、ネット上にも大量に出ています。旅行雑誌や鉄道雑誌も軒並み、寝台列車の特集を組んでいます。去りゆくものへの哀愁、27年の歩みについて、書かれたものは見受けられますが私は「老朽化」について、調べてみました。
1988年の運転開始当初から、「北斗星用」に新製された車両はありませんでした。もともと寝台車として走っていたものを改造したり、座席車だったものを活用したりと、そもそもが新車といえないような状況だったのです。細かく説明していても、マニアでも混乱してくるような複雑な歴史があるので、車両にインタビューする形式で進めます。
ローレル賞です。2015年1月24日、たった今、札幌から到着したばかりの「北斗星」の皆さんに伺います。車両の皆さんをご紹介します。
EF510 513号機の機関車を先頭に、オハネフ25 4、オハネフ25 216、オハネ25 564、オハネ25 562、オハネ25 551、スハネ25 502、スシ24 505、オロネ25 505、オロハネ25 502、オロハネ24 553、オハネフ25 13、カニ24 506の12両の皆さんです。
今日も長旅お疲れ様でした。さて今回、「老朽化」が運転取りやめの理由のひとつにありますが、皆さんおいくつなんですか。
― 41歳の方が7両。42歳が3両。残りのお二方は35歳ですね。
人間でいえば、働き盛りといったところですが。
― 鉄道車両では、とっくに引退のピークを越えてます。日本では活躍の場がなく、海外に渡った方もいます。2008年のダイヤ改正で余剰になった18両のブルートレインがミャンマーに行きました。
― 当初は、関西にいたものが多いです。そこから北に移ってきました。常磐線の寝台特急「ゆうづる」で走っていました。上野から青森まで、常磐線を経由する列車でしたが、北斗星に発展解消された形でなくなってしまいました。青森行きの「あけぼの」で走っていたものもいます。その時に、札幌の所属になったもの、東京の尾久に残ったものと分かれたのです。今はまた、こうして同じ編成で一緒に走っています。
改造された方が多いと聞いていますが。
― 出来たばかりの頃の姿に近いのは、電源車を含めて4両だけです。その4両も北斗星が出来た頃には「グレードアップ車両」等と言われて、カーテンやカーペットなど、きれいに整備してもらいました。他は、面影のないくらいに変わっています。もともとは同じB寝台車で、同じ形をしていたのですよ。生まれつきA寝台車というものは、おりません。
座席車から改造された方もいるとか?
― オハネ25 562さんが、もとオハ14 537という座席車でした。簡易リクライニングシートが並ぶ、座席車です。オハネ25 551さんも同じ、オハ14 502という座席車からの改造です。平成4年の3月のダイヤ改正の時に追加で組み込まれたのです。その頃の北斗星の個室人気は非常に高く、足回りだけ残して車体は新造されることになったのです。
オハネ25 562さんが先程から私をじっと見ているのですが。
― (オハネ25 562)ローレル賞さん、あなたとは30年前に北海道でお目にかかってますよ。1984年10月20日、釧路から札幌まで急行「まりも4号」に乗ったでしょう?その時、あなたは私がオハ14 537だった時に、車中で夜を過ごされたのですよ。
え!まさか、あなたが寝台車に改造されて、今日上野でお目にかかるとは。不思議な気持ちです。あの時は、お世話になりました。快適な一夜を過ごせました。ところで、電車から改造された方はどちらですか。
― 食堂車のスシ24 505さんです。こちらも42歳の大ベテランです。電車時代のお名前はサシ481 65です。寝台特急ではなく、電車特急の食堂車として関西の向日町、金沢、秋田などに所属して「白山」「つばさ」といった特急で走っておられました。
― 太平洋戦争後に、戦災にあった電車を復旧改造して以来といいます。非常に珍しい事例です。屋根の形や、車体断面も違うので、一般の方もすぐにわかると思います。
老朽化と聞いていましたので、失礼ながらもっとボロボロという想像をしていました。
― おかげさまで、大事に利用していただいています。しかし、寒さの厳しいところを走っていましたから、腐食が進み車体も錆が浮いてきたり、結構お見苦しくなっています。デッキや洗面所なども、後輩の「カシオペア」に比べるとお恥ずかしい限りです。足回りも、相当痛んできました。もう、これ以上改造されて残ることはないでしょう。残された日々を、安全に走り切ります。
3月14日を控えて、すでに狂想曲は始まっています。この日も上野駅にはカメラを持ったマニアが押し掛けていました。カウントダウンに入った「北斗星」の車両たち。さみしい限りですが、40年に渡る彼らのドラマも、幕を閉じようとしています。
《スポンサードリンク》