情報通信研究機構(以下、NITC)が使用されていない24万にのぼるIPアドレス(ダークネット)にセンサーを付けて不正アクセスを観測した結果を2月に発表したが、昨年(2014年)はサイバー攻撃関連と推定されるアクセス数は256億6千万件に上ったという…。
NITCによると、この256億6千万件という数値は、2013年に21万アドレスのセンサーで計測した不正アクセスの数値から倍増しているという。
この点から、我国へのサイバー攻撃が急速に拡大していることが推測できるが、更に、現実のサイバー空間ではより攻撃の件数は多いとされ、危険性の増大に関する恐れは極めて大きくなっている。
民間も含めた重要なネットワーク・インフラや政府機関などの公的サイトなどを狙ったサイバー攻撃の脅威は、増大し続けているのだ。
政府機関への脅威件数だけをみても、2011年度は約66万件だったものが2012年度には約108万件へ増加した。更に2013年度には約508万件にも増えている。これは約6秒に1回の割合で脅威が発生したことになるという(内閣官房情報セキュリティセンター発表)。
更に個人や企業への攻撃も急増中で、警察庁が2月に発表した昨年(2014年)の不正送金の被害額は29億1,000万円に上り、前年(2013年)の倍以上に拡大している。
サイバー攻撃から、大事なサイトやコンテンツを守る為のセキュリティー活動には、「情報」、「技術」、「人材」の3点をバランスよく強化・拡大することが重要と言われているが、この中でも人材の不足が深刻であり、現在、我国では8万人もの人材が不足しているとの説もある。
政府機関や民間の情報サービス会社においても、セキュリティー対策の専門家を育成する動きが相次いでいるが、当面は人材不足の状況が続くと考えられている。しかしネットワークの最前線では待ったなしの戦いが繰り広げられているのが現実だ。そこで、ネット社会の安全を守る「ホワイトハッカー」を育成するのも、いま一つの有効な手立てかも知れないとの意見もある。
さて、オリンピックやサッカーW杯などのスポーツのビッグイベントはサイバー攻撃の格好の標的ともされており、ロンドン五輪では公式サイトに対して2億件を超える不正アクセスがあった。その為、日本政府は2020年の東京五輪を想定し、内閣サイバーセキュリティセンター(情報セキュリティセンターを改組)を1月に設置、日本への攻撃の急増が懸念されるオリンピック開催時期へ向けた対策を強化していくという。
また、多くの人々が使用しているスマホだが、アンドロイド向け不正アプリの数は2014年末で約430万個も発見されており、本年(2015年)末までにはおよそ800万個にもなると予測されている。スマホ等のモバイル端末を利用した決済市場がより拡大すれば、その脅威は一層深刻となるだろう。
更に、我国でも2016年1月から開始される徴税と年金などの社会保障に関する共通番号(マイナンバー)制度に関しても、サイバー攻撃の脅威が大いに危惧されている。
この様な状況下で、安心、安全なネット社会をいかに構築していくのか? 政府や企業だけでなく、国民一人一人の理解と対策・対応の努力が必要となってきている…。
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