《和菓子探訪》 羊羹(ようかん) 〈2085JKI27〉

その他の羊羹

プレーンの羊羹以外の、他の食材入り羊羹の代表例を下記でご紹介しましょう。

1. 栗羊羹
栗羊羹とは、栗の甘露煮(甘く煮詰めたもの)が入った羊羹のことです。広く全国的に製造販売されていますが、特に栗の名産地などで多く見掛けます。

また栗羊羹には、煉羊羹・蒸羊羹何れのタイプも存在し、栗の食感が強いものとやや弱めのタイプがあります。本来、菓子のルーツが季節の果物や木の実であることを考えれば、ある意味、この羊羹は正統派の一品とも云えますね。

2. 芋羊羹
芋羊羹は、サツマイモ(甘藷)を主原料として作られる羊羹で、サツマイモを蒸して裏ごしして砂糖を加えて弱火にかけ練り混ぜ、型に入れて固めて製造される蒸羊羹です(その他一部に、寒天を用いて固める製法もあり)。ちなみに、東京・浅草に本店がある“舟和の場合、原材料のサツマイモ(甘藷)を手作業で皮を剥いて、着色料や保存料、香料等は一切使用せずに、砂糖と少量の食塩を加えるだけで製造しているそうで、甘さ控えめで素材の風味を活かした素朴な味わいが特徴となっています。

3.抹茶羊羹
抹茶を使用した独特の香りと口当たりの滑らかさが特徴的で、味わい深い抹茶とこの羊羹は相性がピッタリ。今や、その深い緑色をした羊羹は、定番中の定番菓子として親しまれています。そう言えば、葉緑素とビタミンB群などを含み、厚生省に特殊栄養食品として認可された抹茶羊羹なんていうのもありました。やはりその多くが茶処の名産であることが多い様に見受けますが、比較的多くの地域で販売されている羊羹の種類となっています。

4. 塩羊羹
昨今では全国で製造販売されていますが、塩羊羹の元祖としては長野県諏訪町の“新鶴本店”の塩羊羹が有名です。これは、厳選された北海道の十勝小豆と諏訪天の名で知られる茅野の寒天を使い、楢薪(ならまき)を炊いてとろ火で煉り上げ、その間に塩加減をしていくという昔ながらの製法を守り続けており、その色合いは(あく抜きの為に小豆の表皮を全部取り去ることから)薄墨色透明感があり、ほんのりとした塩気甘みが合わさった深みが特徴となっています。但し、“新鶴本店”のものを含めて何れの塩羊羹も長期保存が出来ませんので、ご注意ください。

5. 醤油や味噌羊羹
醤油羊羹とは、醤油を練り込んだ独特の風味を持つ羊羹です。全体的には甘じょっぱい醤油の味が特徴的ですが、この羊羹も、全国的に醤油の名産地近辺で製造されていることが多く、ご当地醤油を使用して特色を競っています。

関東地方だと、千葉県野田市近郊にある“御菓子司 喜久屋”の『醤油羊羹 御用蔵などが有名ですが、醤油メーカーの“キッコーマン”が宮内庁に納めている『御用蔵醤油』を使用しているそうです。

この羊羹は一般的な羊羹よりもその色味は赤茶色に近く、仄かに醤油の香りがして餡の甘さの中にわずかにしょっぱい醤油の味が混じり合う、渋めのお茶にベストマッチ/最適な羊羹です。

また味噌羊羹は、当然ながら味噌を練り込んだ羊羹ですが、これも最近では全国各地で製造販売されています。その味は意外性が高く、最初は誰しも多少抵抗感がある様ですが、実際に食べてみると餡と味噌のコラボが癖になる人が続出、当然、味噌の種類で味も変わると云うこの羊羹は、羊羹界の近年の隠れたヒット作なのです。

この様に現在では、様々な食材が練り込まれた羊羹が土産品やお茶受けとして親しまれています。使用される餡(小豆)に関しても、製法の違いから、粒餡やつぶし餡に漉餡・小倉餡、小豆の種類の違いから小豆餡・赤餡・白餡・うぐいす餡・ずんだ餡などがあります。

※粒餡は、小豆を煮て粒の残る状態で味付けして仕上げるものですが、対して小倉餡は、味付けした漉餡に小豆をふっくら炊いたものを混ぜて作るものです。

豆以外の材料でも上記の様にサツマイモが使われることもあり、味付けにも抹茶・塩・醤油・味噌・胡麻・黒砂糖・コーヒーなどや酒類の梅酒・ワイン等と、数多くの材料が使用されます。また混ぜ物にも、色々な果物(栗・蜜柑・柿・柚子・苺など)や木の実(胡桃や各種ナッツ類など)が用いられたりと、季節や地域の特徴を活かしたバリエーション豊かな羊羹が製造されているのです。

菓子店によっては、変わり種品や果物などを加える場合に期間限定とすることもあり、定番の商品以外にもその時々だけしか味わえない羊羹を探してみると楽しいと思います。

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