みなさんにとって、時刻表は見るもの?読むもの?鉄道マニアの中でも「時刻表マニア」が存在します。私も時刻表は「愛読書」ですが、古いものでは筆者の手元に1966年8月の交通公社(JTB)出版の時刻表があります。今から約50年も前の、懐かしの時刻表を開いて、当時の文化や今との違いを比べてみようと思います。1回目の記事は、先日もブルートレイン「あけぼの」の廃止でニュースにも登場した上野駅から出発する夜行列車についてとりあげてみたいと思います。
上野駅は北への玄関口とも言われますが、いうまでもなく東北・上信越・常盤方面に向けたターミナル駅です。今は東京駅を出発する新幹線がちょっと立ち寄るような感じになってしまいましたが、まだまだ始発駅としての貫禄を十分に残している駅といえるでしょう。それも特に夜、「夜行列車」が上野駅を出発する様子はドラマのようであり、演歌の世界のようです。ところが今や、上野駅を毎夜出発する夜行列車といえば19:03発札幌行の「北斗星」のみです。まあ、それはそれで上野発の唯一の夜行列車なので貴重ではありますが、1966年の上野駅からどれだけの夜行列車が走っていたのでしょうか。19時以降に上野を出発して、一夜を明かして翌日終着駅に着くという列車だけをピックアップしてみました。特急・急行・鈍行(普通列車)合わせてその数、なんと28本!客車もあれば、電車もディーゼルカーもありますし、行き先も多種多様。時間軸を追って書き並べてみます。急行がほとんどなので、なにも書いていないものは急行です。
まず19:00青森行の特急「はくつる」を皮切りに、19:10青森行「第一十和田」、19:30福井行「越前」、19:45青森行「第一津軽」、20:00青森行「第二十和田」、20:35金沢行「黒部」、20:47青森行の鈍行列車、21:00秋田行「羽黒」、21:10青森行「第三十和田」、21:26金沢行「北陸」、21:30は二本同時刻に発車で秋田行「おが」と青森行特急「ゆうづる」、22:00盛岡行「北星」、22:03秋田行鈍行列車、22:10青森行「第二津軽」、22:24青森行の鈍行(快速区間有り)列車、22:35新潟行「越路」、22:40またまた青森行の鈍行列車、22:24常磐線経由青森行鈍行、22:50新潟行「天の川」、22:55坂田行「出羽」、22:58直江津行の鈍行列車、23:05盛岡行「きたかみ」、23:25盛岡行「新星」、23:30はまたも同時刻の発車で長野行「とがくし」と青森行「第四十和田」、23:40会津若松行「第三ばんだい」、そして締めは23:45直江津行「丸池」。
実に多種多様な列車が、通勤電車並みのダイヤで上野駅をあとにしていたのですね。ある人は寝台のベットで、ある人は硬い座席で、ある人は混雑する列車で床に新聞紙をひいて一夜を明かしたことでしょう。帰省する人、楽しい旅に出かける人、悲しい別れが会った人、それぞれの人生ドラマを乗せて北へ旅立つ人たちを乗せて、多くの夜行列車が走っていたのですね。そういう光景に想いを馳せて、時刻表を眺めていると空想の世界がかぎりなく広がっていくようではありませんか?