【東洋医学】 中医学に学ぶ(4) 体質別の食養生 〈33JKI00〉

五行図1images中医学に学ぶ、の第4回。今回は「体質別の食養生」と題して、気虚と気滞、血虚と瘀血、陰虚と痰湿の、不健康を招く六つの体質にそれぞれ対応した食事による体質改善の方法を簡単に説明する。

気虚(気が不足する)の改善法

注意点・・・①体全体を温めること、②胃腸に負担を与えない食事とすること、③食材は平性(温めも冷やしもしない、穏やかなもの)、湿性、熱性のものを中心とすること、④なるべく火を通して調理すること。

気虚の改善には、なんといっても疲労回復が重要。休息や睡眠を十分取ろう。

【症状別食材と調理法】

①胃腸が弱くいつも食欲がわかない・食事をすると胃がもたれる・軟便や下痢になりやすい

⇒ 穀類・いも類・豆類がおすすめ。特に長いも、大和いも、じねんじょなどの山いも類は胃腸の働きを援け整腸作用にすぐれている。これらをすりおろして「とろろ」にして、汁やスープなどに入れたり、他の食材と組み合わせて調理する。

②疲れやすい・いつもだるい・なかなか元気がでない

⇒ 牛肉や鶏肉などの肉類や、えび、うなぎなど。また朝鮮にんじんも、気を速やかに充実させる働きを持っている。これらを重点的に惣菜に活用しよう。

③風邪を引きやすい人や花粉症の人の場合

⇒ きのこ類、ブロッコリーやアスパラガスなどの摂取が良い。免疫力が上がる。

④冷え性の人

⇒ ニンニク、生姜、玉ねぎ、ねぎ、にら、山椒、シナモン、くるみなどがおすすめ。これらの食材を少しでも多く摂るように心掛けること。

【食材別の特徴】

①山いも類・・・平性、甘味。胃腸や腎の働きを援ける。下痢止め、血糖の低下にも役立つ。

②豆類・・・平性、甘味。胃腸の働きを高め、利尿効果もある。

③栗・・・温性、甘味。気を補い、腎の働きを援ける。

④うなぎ・・・平性、甘味。精力増強、疲労を回復し、利尿作用もある。

⑤牛肉・・・温性、甘味。気を養い、滋養強壮に役立つ。

【おすすめのお茶】

朝鮮人参茶、(シナモン・生姜入り)紅茶、ほうじ茶、杜仲茶、緑茶 

 

気滞(気の流れが滞る)の改善法

注意点・・・①酸味の食材を多く使用すること、②香味野菜を積極的に活用すること、③香りの食材は加熱し過ぎないこと、④平性、涼性のものを中心に使用すること。

気滞の改善には、ストレス解消が大事。また、お酒を控えることも大切だ。

【症状別食材と調理法】

①偏頭痛や情緒不安定、生理不順、月経前症候群などの人

⇒ 香りの強い、三つ葉、春菊、セリ、セロリやパセリなどの香味野菜が良い。このタイプの野菜の製油成分が気の巡りを強化してストレスを発散させる。但し、加熱時間は短めに。

②肝機能が低下している場合

⇒ 果物の柑橘類、レバー、しじみ、くこの実などが良い。

③怒りっぽい、いつもイライラしている、憂鬱や不安症など

⇒ 酸味の強い柑橘類、例えば、みかん、すだち、オレンジ、など。また、春菊 三つ葉 セロリ パセリなどは肝の働きを促進し気分をほぐす。

④眼精疲労や視力の衰えの改善に

⇒ レバー、しじみや、クコの実、菊花、ブルーベリーなどがおすすめ。肝の疲労を回復したり目の症状を改善する。

⑤鎮痛・鎮静効果や睡眠効果を得たいとき

⇒ 香りの植物や野菜、例えば、ミント、ラベンダー、ジャスミンやカモミールなどが良い。みな鎮静作用が高いとされている。

【食材別の特徴】

①春菊・・・平性、辛味、甘味。気の巡りを促進、気分を向上させる。

②セロリ・・・涼性、甘味、苦味。気分を良くし、血圧も抑える。

③あさり・しじみ・・・寒性、甘味、鹹味。肝の働きを促して、利尿作用、解毒作用がある。

④いか・・・微温性、鹹味。血を補い、血行促進作用。

⑤みかん・・・温性、甘味、酸味。気の巡りを促し、渇きの改善やリラックス効果がある。

⑥オレンジ・・・涼性、酸味。気の巡りを促し、渇きの改善やリラックス効果がある。

⑦苦瓜・・・寒性、苦味。解熱、解毒作用がある。暑気払いの効果もある。

⑧ミント・・・涼性、辛味。気の巡りを促進。イライラの解消や頭痛の解消作用がある。

【おすすめのお茶】

ジャスミン茶、(ミント・カモミール・ラベンダー)紅茶、菊花茶、ラフマ茶

血虚(血が不足する)の改善法

注意点・・・①消化吸収を高め胃に負担を与えないこと、またそのため冷たいものや激辛食材は避けること、②平性、温性を基本に甘味、酸味を活かすこと、③黒い食材、赤い食材を活用すること、④偏食はせず、脂っぽいものは避けること。

身体の血となり肉となるものを、ゆっくり味わって美味しく食べることが血虚改善の基本。無理なダイエット、朝食抜き、偏食小食も良くない。

【症状別食材と調理法】

①冷え性の人

⇒ 烏骨鶏、黒ゴマ、黒豆、プルーン、ブルーベリーなどの黒色の食材と、トマト、にんじん、小豆などの赤色の食材の活用が肝要。これらの食材はポリフェノールやミネラルが豊富に含まれているので造血効果が高い。

②月経不順や不妊症の場合

⇒ 烏骨鶏や地鶏などの蒸し焼きやスープ。鶏肉の卵などが血虚には効果が高い。

③貧血(鉄分不足)の人

⇒ レバー、牡蠣、ほうれん草、小松菜などには鉄分が多く含まれているので、積極的に活用。

【食材別の特徴】

①にんじん・・・温性、甘味。気と血を補う効果がある。また眼精疲労の回復や胃腸の働きを強化する。

②黒ごま・・・平性、甘味。血を養い、滋養強壮、育毛の作用もある。

③いちご・・・平性、甘味、酸味。気と地を補い、身体を潤し疲労回復効果がある。

④レバー・・・平性、甘味。血を作り、視力回復に役立つ。

⑤烏骨鶏・・・温性、甘味。気と地を養い、滋養強壮の効果が高い。

【おすすめのお茶】

ほうじ茶、(ブルーベリーやプルーンなどを入れて)紅茶、くこ茶

瘀血(血の流れが滞る)の改善法

注意点・・・①美食や過食を避けること、また冷たい飲み物は控えること、②血をサラサラとする食材を多用すること、③温性、熱性や辛味の食材を基本とすること、④味の濃いもの、塩辛いものは避けること。

瘀血の改善には、食事の他に適度な運動が必要。また体を温めるために風呂に浸かることも良い。

【症状別食材と調理法】

①顔色がわるい人や唇が暗い人、冷え性の人、シミやそばかすが多い場合

⇒ 動物性脂肪や冷たい食物(アイスクリームなど)や飲み物などの摂り過ぎを控え、青い背の魚、例えばさんま、いわし、あじ、鯖などの食材を使用。黒きくらげも血行の促進効果があり、黒酢、黒豆、かに、なすなどの食材もよい。

②がんや心疾患、脳卒中などの場合

⇒ 血をさらさらにする食材、玉ねぎ、ネギなどの辛味野菜、また、いわし、さんま、鯖などの魚を多めに摂取するようにする。

③肩こり、頭痛や関節痛、生理痛など

⇒ 身体を温め新陳代謝を促す食材、玉ねぎ、ネギ、生姜、ニンニク、らっきょうなどの辛味野菜は、冷え、体の凝りや痛みのある人にお勧めで、山椒、シナモン、サフランなどは血行を促進し痛みを和らげる作用がある。また頭痛や関節痛、生理痛に効用がある。

【食材別の特徴】

①さんま・・・平性、甘味。気と血を補い、血行を促す。動脈硬化の改善に役立つ。

②いわし・・・温性、甘味、鹹味。気と血を補い、血行を促す。動脈硬化の改善に役立つ。

③桃・・・微温性、甘味、酸味。血を養い、血行促進、美顔美肌に役立つ。

④玉ねぎ・・・温性、辛味。身体を温め血液をさらさらにする。中性脂肪と血糖値の改善。

⑤にんにく・・・温性、辛味。体を温め血行促進、滋養強壮、疲労回復の効果が高い。

⑥らっきょう・・・温性、辛味、苦味。血行促進、胸の痛みや不整脈の改善に役立つ。

【おすすめのお茶】

ほうじ茶、紅花茶、バラ茶

陰虚(水の足りない)の改善法

注意点・・・①酸味と甘味の食材を同時に使用すること、②身体を潤わせる食材を使用すること、③平性や涼性の食材を基本とし、適度に寒性の食材を取り入れること、④冷たいものの摂取は控えること。

陰虚の改善には、適切な水分の補給とともに、飲酒の過多とタバコの吸い過ぎに注意する。また睡眠不足も大敵だ。

【症状別食材と調理法】

①目や口、喉などの乾燥や渇き、空咳が出る人

⇒ 酸味と甘味の両方を併せ持つ食材を使うとよい。例えば、トマト、梨やメロン、レモンなど。

②のぼせ、火照り、微熱や寝汗などの症状が絶えない人などの場合

⇒ 平性、涼性や寒性の食材が適している。豚肉や鴨肉、なまこ、牡蠣、あわびなどは水の不足による虚的な熱を冷ます効用があり、牛乳や豆腐などは、身体に潤いを与える。また、すっぽんはのぼせや微熱、寝汗などを改善する。

【食材別の特徴】

①トマト・・・微寒性、甘味、酸味。血を補い胃を整え、血行を促す。渇きの改善に役立つ。

②れんこん・・・寒性、甘味。体を潤し、渇きを抑制する。熱を冷まし、止血効果もある。

③白きくらげ・・・平性、甘味。体を潤し、免疫力を高める。滋養強壮や美顔美肌に役立つ。

④豆乳・・・平性、甘味。体を潤し、更年期障害の症状の対策に有効。

⑤豚肉・・・微涼性、甘味。体を潤し血を補い、疲労回復の効果が高い。

⑥梨・・・寒性、甘味、微酸味。肺を潤し、咳止めや去痰の効果が高い。

【おすすめのお茶】

緑茶、菊花茶、ほうじ茶、ミルクティ

痰湿(水の流れが滞る)の改善法

注意点・・・①甘味、辛味、鹹味をベースとして調理すること、②食物繊維を多めに摂取すること、③基本的には平性の食材を中心、冷えの人には温性、熱がこもる人には涼性や寒性のものを加えること、④食べ過ぎないように注意すること。

痰湿の改善は、生活習慣を改めることが必要。暴飲暴食を戒め、適度な運動を行う。

【症状別食材と調理法】

①中性脂肪やコレステロールが高い人

⇒ 肉や卵を控えて、いわしやさんま、鯖などの青い背の魚を中心に食すようにする。

②むくみや水太りの人

⇒ 緑豆、春雨、小豆、冬瓜、はと麦などが、余分な水分や老廃物の排出を促す。

③冷え性の人

⇒ 甘味、辛味、鹹味を中心に、平性、温性のもの。

④熱がこもりやすい人の場合

⇒ 甘味、辛味、鹹味を中心に、涼性、寒性のもの。

⑤過食・食べ過ぎた時

⇒ 甘味、辛味、平性、微温性。大根、玉ねぎ、山査子(さんざし)などを摂るとよい。

【食材別の特徴】

①玄米・・・平性、甘味。胃腸の働きを援け、気を補い、便通を促進する。

②ごぼう・・・寒性、甘味、やや苦味。解毒、利尿・便通作用がある。喉の痛みを抑える。

③昆布・わかめ・のり・・・寒性、鹹味。免疫力を高め、利尿作用がある。

④山査子(さんざし)・・・微温性、甘味、酸味。胃腸の働きを強化、脂肪の分解を促進。脂質代謝の異常も改善する。

【おすすめのお茶】

ウーロン茶、プーアル茶、はと麦茶、杜仲茶、緑茶、どくだみ茶

 

「中医学に学ぶ」シリーズは、 次回からは食養生を離れて病状・症状に応じた対策について解説していく。初回は「疼痛(痛み)解消法」の予定だ。

-終-

 

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投稿者: 准将

何にでも好奇心旺盛なオジサン。本来の職業はビジネス・コンサルとマーケッター。興味・関心のある分野は『歴史』、中でも『近・現代史』と『軍事史』が専門だ。またエンタメ系のコンテンツ(音楽・映画・ゲーム・マンガなど)には仕事の関係で随分と係わってきた。今後のライフワークとして儒学、特に陽明学を研究する予定である。kijidasu! 認定投稿者第一号でもある。