食養生には、食材・食品を五つに分類して、それぞれの味や性質を活かして調理し食することで養生に役立てる、という考え方がある。
そこで今回は、食養生を支える食材・食品の五つの味(五味)と五つの性質(五性)について、ご紹介する。
中国には、古代より陰陽五行(いんようごぎょう)説という思想がある。自然界に存在するもの全ては木・火・土・金・水の五つの元素から成るという考えのもと、陰と陽の事物や事象がバランスをとり関連しながら世の中を運行しているとする思想だ。この思想に基づき、自然の恵みでもある食材・食品にも木・火・土・金・水に呼応する五つの「味(五味)」と「性質(五性)」があると考えられている。
それでは、食養生を進める上で重要とされる、この五味と五性について、簡単に解説していこう。
五味とは
中医学では味を五つに分けて「五味」とし、五味にはそれぞれ特有の働きがあると考えられている。
酸(さん)・・・酸味(すっぱい)=木=春。 集めて押さえ引き締める、固まらせる作用、生津(体液を生じさせる)により潤いを引き出す作用。肝を養うといわれる。
多汗、下痢、頻尿の改善に役立つ。夏に、酸味のものを食すと、その固渋作用が働き汗の出を抑える、とされる。
代表的な食材は、黒酢、梅、レモン、ザクロ、アンズなど。
◆苦(く)
苦味(にがい)=火=夏 。体の中の不要な水分を取り除き、余分な水分、熱などを主に便として排出する作用。発熱、便秘、胃のもたれ、不眠などを改善して食欲を増進する。心を養うといわれる。
苦味のものを食べると、便通がよくなる。
代表的な食材は、ニガウリ、アロエ、緑茶、コーヒーなど。
◆甘(かん)
甘味(あまい)=土=梅雨。疲れ、虚弱を改善したり、痛みを和らげ痙攣や緊張を緩める作用がある。また毒を中和し、脾胃(消化器)の働きを助ける。そして味全体をまとめ、栄養分を吸収しやすくする働きがある。脾を養うといわれる。
代表的な食材は、ハチミツ、水飴、米、やま芋、バナナなど。
◆辛(しん)
辛味(ピリからい)=金=秋。 気と血の巡りをよくして、発汗を促進する作用。肺を養うといわれる。
辛味は冷えや気の滞りを改善して痛みを止める。また高温で湿度が高い地域で辛味が好まれるのは、この作用が発汗を促し健康維持に不可欠だからだ。
代表的な食材は、唐辛子、ショウガ、ネギ、ニンニクなど。
◆鹹(かん)
塩辛味(塩辛い)=水=冬。 体の中のしこりを取り軟らかくする作用、便を軟らかくして排出(瀉下)を促す作用。体を潤すなどの働きもある。腎を養うといわれる。
塩辛味は便秘の改善、利尿、をもたらす。しかし塩辛味のものを食べ過ぎると下痢をすることがあるので注意が必要。 塩辛いという意味だけではなく、ミネラルが多くふくまれていることでもあり、ワカメ、もずくなどの海藻類や他の食材・食品にも当てはまることが多い。
代表的な食材は、牡蠣、昆布、ワカメ、天然塩、ナマコなど。
以上が五味であるが、現代ではこれに五味以外の淡味が加えられ、実際には六つの味がある、とされている。
◆淡味とは
体に潤い生み、脾臓の働きを援ける効果、また利尿を促進してむくみを改善する作用がある。代表的な食材は、 はと麦、トウガン、トウモロコシの髭、湯葉など。
五性とは
食材・食品の性質は、寒、涼、平、温、熱という五つの性質に分けられ、これを「五性」という。
五性は、その食材・食品が身体にどのように作用するかを表わしており、体の余分な熱を取り興奮を静める寒と涼と、体を温め気や血の流れをよくする熱と温は、それぞれ冷たさや温かさの程度の差で区分されている。また平性は、温めも冷ましもしない性質ということで、実際には食材・食品の七割ほどは寒涼性(寒や涼)にも温熱性(温や熱)にも偏らない平性の食物である。
◆温熱性の食材・食品
食べることによって体を温める性質のあるもの。
温熱性の食物には、コショウ、ニラ、ネギ、シソ、唐辛子、羊肉などがある。これらを食べると内臓の働きが活発になり、血や気の流れが促進され代謝も向上するといわれている。
◆寒涼性の食材・食品
食べることによって体を冷やす性質のあるもの。
寒涼性の食物には、ニガウリ、キュウリ、ナス、トマト、レタス、コンブなどがある。これらを食べると、体内で発生する炎症などを抑制し、また血液浄化、解毒、利尿促進といった働きがある。体内の老廃物を排出、除去する効果もある。
( 一つの食材・食品で複数の効果・作用を持つものもあるので、相反しないように注意が必要 )
食養生においては、日々の食事を健康維持・増進に活かすためには、この食材・食品の五味・五性を知ることが大事とされている。
季節や環境、個人の体質などを考慮しながら、味覚の組み合わせを変化させたり、不足分を補うバランスのとれた食事を摂るように心掛けよう。五味と五性の特徴をよく知って食材・食品選びに活かし、適正な調理方法を選択すれば未病の予防につながり、食養生の効果が最大限に得られることになる。
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