次に警視庁刑事部の組織とその役割について簡単に述べると、捜査一課は殺人、強盗、誘拐、放火などの強行犯を扱い、二課は贈収賄、詐欺、背任などの知能犯や経済事犯を担当、三課は泥棒やスリなどの窃盗犯を扱う。また、かつては暴力団や総会屋に関する事件を担当した四課があったが、現在は組織犯罪対策部に移管された。以前はよく「サンズイ(汚職)の二課」、「泥ケイの三課」、「マル暴の四課」と言われたそうである。
また捜査一課の刑事たちは、在庁待機時には(調書・報告書等の作成などの)デスクワークや昇任試験の勉強など、それぞれ自分の時間を過ごしており、これが毎日多忙な職務に追われる所轄署の刑事課員とは大きく異なる点である。但し一旦、重大事件の担当となると、昼夜を問わず長期間にわたり捜査活動に従事することにもなるのだが・・・。
刑事部の他の部署としては、(既述ではあるが)あらゆる事件の初動捜査に駆け付ける機動捜査隊や、事件現場での証拠品採集や死体の検視等を担当している鑑識課などがある。
尚、「泥ケイの三課」を舞台にした刑事ドラマには、TBS『確証〜警視庁捜査3課』があった。警視庁刑事部捜査三課5係のベテラン刑事である萩尾秀一警部補に高橋克実さんが扮し、コンビを組む女性刑事の武田秋穂巡査部長には榮倉奈々さんが配役されていた。捜一との軋轢の中、泥ケイ独自の視線から事件を解決に導く萩尾の姿を描く好作品で、今野敏さんの原作。
同じ原作をキャストを替えて、再度TBSが月曜名作劇場『確証〜警視庁捜査3課』としてドラマ化。萩尾秀一には吉田栄作さん、武田秋穂役は内山理名さん。物語の内容は丁寧に描かれていて悪くはないのだが、“萩さん”役を吉田さんが演じるとカッコ良過ぎてミスキャストだった!!
ついでに紹介すると、同じ高橋克実さんが主人公の上司(係長)を演じた刑事ドラマがテレビ朝日系『迷宮捜査』。反町隆史さんが警視庁刑事部捜査一課3係の刑事(名波洋一郎巡査)として、一匹狼でアウトローのキャラを演じているが、原作小説(緒川怜さん)での主人公のよりダークな雰囲気や一部の(公安絡みの)ストーリーが割愛されていて、少々印象が変わってしまった。更に反町隆史さん繋がりで紹介しておくと、フジテレビ系列の『捜査一課・澤村慶司』シリーズでも、彼は主人公の神奈川県警捜査一課の刑事、澤村慶司に扮している。尚、原作は堂場瞬一さんの秀作刑事小説。
ところでよく聞く話として、警視庁と神奈川県警が犬猿の仲ということは(この軋轢は、非常に多くの刑事ドラマで題材となっているから気になるところではあるが)、どうも本当らしい。特に窃盗や薬物事犯の捜査では確執が深いという。しかし殺人や誘拐などの凶悪・重大事件に関してはさすがに例外の様だ。但し、事前の通告も無しに勝手に他の警察本部のテリトリーで派手な捜査活動を実施すると、その後の調整が難しくなることも事実で、所謂、メンツを潰されるという事になってしまう。結局は本部長や部長級による調整で決着を図るしかない。
ちなみに、両警察組織の対立を描いた刑事ドラマには『隠蔽捜査』(TBS版)など多くがあるが、テレビ朝日系の『越境捜査』シリーズでの主人公、警視庁捜査一課捜査協力係の鷺沼友哉警部補(柴田恭兵さん)と神奈川県警の横浜警察署刑事課所属の宮野裕之巡査部長の(寺島進さん)の軽妙な掛け合いが毎回楽しい。
また捜査本部には特別捜査(特捜)本部、合同捜査本部、捜査本部などの種類があるが、特捜本部は警視庁特有の形態であり、つまり大阪府警や神奈川県警では特捜本部は設置されない。またこの特捜本部は(通常の)捜査本部と比較して、捜査員の動員に関して強制・拘束力が強い体制となっている。
ところで警視庁(本庁の庁舎)の場合は、取調室に窓はないそうだ。また、取調官とペアで必ず立ち合いの刑事(容疑者の供述を記録する)がいる。そして、警視庁捜査一課では、取調官は警部(係長)か警部補(主任)が行い、巡査部長が行うことは稀である。但し、他の課では巡査部長が担当することもあるし、他の道府県警本部では巡査部長が取調官となることは多くあるそうだ。
ここで取調ものとでも言うべき作品を幾つか紹介すると、少々古いものでは、日本テレビ系の『取調室』があった。これは、いかりや長介さん扮する水木正一郎警部補の(逮捕後の)取調べ作業の過程を毎回描いた異色の刑事ドラマ・シリーズで、笹沢左保さんの原作。
2時間ドラマのシリーズではTBS系の『女取調官』があるが、原作者(笹沢左保さん)が同じ上記の『取調室』のリニューアル版とも言われている。 内容は、佐賀県警の「取り調べのエース」と呼ばれている佐賀県警刑事部捜査一課の水木庄子警部補(賀来千香子さん)の活躍を描くものだが、しかしこの作品、都会を舞台とした殺漠たる刑事ドラマとは違い、全体のトーンがどこか地方色を反映してのんびりとしているのは気のせいだろうか…。
また、比較的最近のシリーズでは『緊急取調室』がテレビ朝日系の取調もの刑事ドラマ。主演は天海祐希さんで、男まさりの取調官・真壁有希子警部補を演じている。彼女が特殊犯捜査係(SIT)の主任から緊急事案対応取調班(通称:キントリ)へと異動、一癖も二癖もある犯人たちと犯人以上に癖の強い同僚刑事たち(大杉漣さん・小日向文世さん・でんでんさん)とタッグを組んで対決し、数々の灘事件を解決していく物語だ。上司はキントリの責任者の梶山勝利管理官(田中哲司さん)である。但し、現実には当然ながらこの様な組織は存在しない。