十数年前に、米中の企業とコラボして携帯電話を利用した翻訳(同時通訳)のサービスを企画したことがあります。
言葉の通じない者同士が会話をする時に、互いに携帯電話の翻訳サービスに電話をかけます。そして片方が自国語を話すと、同じサービスに接続している相手側には翻訳ソフトが指定の言語で語りかける、というものです。(当初は米中、次に日米、最後に日中間の翻訳に対応する計画でした)
しかし残念ながら、米国企業の開発していた翻訳ソフトの出来がいまいち。実用に耐えるレベルには随分と時間が掛かる見通しでした。
そこで痺れを切らした中国のプロジェクト参加会社は、翻訳ソフトがある程度の水準になるまでは、なんと人間の通訳が(数百人ががりで)翻訳するという、超アナログでかつ人海戦術で急場を凌ぐという、中国の企業らしい考えを示してきました。
結局はニーズはあっても採算性が悪く(いくら賃金の安い中国人を雇用しても人件費が高過ぎ)、2年近くの検討期間の末にこのビジネス・プロジェクトは解散となり、私もあえなくクビ、となった次第です。
さて今般、アメリカ・ニューヨークのWaverly Labs社が発表した『Pilot』は、イヤーピース型のウェアラブル翻訳機です。この補聴器の様なデバイスを耳に装着するだけで、異なる言語を使用する者同士がコミュニケーション出来るという優れものなのです。
これまでにも、スマートフォンやPCで使用する音声翻訳ソフトはいくつかありましたが、『Pilot』はイヤホン型で、そのまま耳に装着するウェアラブル・デバイスなので、より一層手軽に使えることでしょう。
『Pilot』は、スマートフォンと連動して操作します。先ず、翻訳利用者各自がこれを耳に装着して、専用アプリを起動します。互いに相手側の言語をリアルタイムで拾い、耳元から翻訳された音声が流れる、という仕組み。
当初の対応言語は、英語やフランス語、スペイン語、そしてイタリア語とのことですが、将来的にはアジア圏を含む全世界の主要言語に対応していく予定とのことです。
また、翻訳機として使用しないときには、Bluetooth対応型イヤホンとして音楽等を聴くことも可能です。
価格は2個1セットで250ドルからとされていますが、クラウド・ファウンディング(「Indiegogo」)を利用したプレオーダーで購入した場合は129ドルからで購入出来るそうです。カラーバリエーションは赤、白、黒の3色展開が予定されており、5月25日から予約開始。実際の販売は、今秋から来春にかけてを予定しています。
尚、Waverly Labs社では、相手が『Pilot』をつけていなくても自分の『Pilot』が相手の言葉を拾って翻訳する改良型の開発にもチャレンジするそうです。
この『Pilot』、デザインもスタイリッシュで使い易そうな雰囲気。でも結局は翻訳アプリの精度次第、私の過去の経験と同様の結果にならなければ良いのですが・・・。昔に比べて進化したとは云え、世に溢れている翻訳ソフトのレベルに満足出来る人は、まだそれほどはいませんよね。
但し、翻訳機会が増えて、またいろんなユーザーが使用すればするほど翻訳の精度は高まっていきます。こういったタイプのアプリはデータが大量に集積出来れば完成度は飛躍的にUPするので、やがては「言語の壁」がなくなる日が訪れるかも知れません。
しかしラテン語ベースの言語間や主語・述語の並び順が同じ言語の場合と比べて、特に日本語との機械翻訳は難しいらしいので、正直なところ日本語対応は期待薄です。ちなみに日韓の翻訳ソフトは以前よりレベルの高いものがありましたが、採算ベースにのる事業化は困難でしょう。
↓『Can You Hear Me in French?』 提供:Andrew Ochoa
この動画の会話、なんだかスムーズ過ぎて信用できません(笑)。それとも英語と仏語ならばこの程度の機械翻訳が可能なのでしょうか・・・。
-終-
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