【チエちゃん診療所】 『日和見菌』と『日和見感染症』について 〈304JKI10〉

%e7%b4%b0%e8%8f%8c123%e3%80%80virus01-002私たちの腸内には多くの細菌が棲んでいます。これらの腸内細菌の中には、健康な時には人体にとって無害であるのに、体力が弱まり「免疫力(めんえきりょく)」が低下すると、一転して感染症を引き起こす細菌もいるのです。これらの細菌を『日和見菌(ひよりみきん)』言い、それにより発症する感染症は『日和見感染症』と呼ばれています・・・。

 

日和見菌(ひよりみきん)とは

さて、それでは『日和見菌』とはどんな腸内細菌のことでしょうか? 日本語で「日和見(ひよりみ)」というのは「有利な方につこうと、形勢を窺うこと」という意味ですが、この日和見菌はそんな言葉に由来した細菌ですから、まさしくその名が示す通り、良い働きをする場合も悪い働きをする場合もある菌で、健康な時には身体に対して特に悪い影響を及ぼす事はありませんが、いざ身体が弱った(免疫力が低下した)場合には、悪玉菌に加担して体に良くない働きをしてしまう菌なのです。

つまり、善玉菌的な働きをすることも悪玉菌的な役割にも、どちらにもなり得る腸内細菌であり、腸内の状態によっては善玉菌が優勢な時には善玉菌と同じく人体に有効な働きをし、悪玉菌が優位な場合には悪玉菌を応援したり一緒になって有害な活動をするといった、その時々の強い勢力に味方をするというまさしく節操のない菌であり、ある意味ではとても厄介な腸内細菌なのです。

尚、一般的に健康な人体の腸内細菌の善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌の比率は、20:10:70くらい(15:10:75との説あり)と考えられていますが、この腸内細菌の比率に変動があった場合、例えば悪玉菌の比率が増して善玉菌が減った時などは残りの日和見菌が悪玉菌よりの効果を発揮して体に悪い働きをしてしまうのです。

その為、極力、善玉菌を増やす様に努めながら、腸内細菌のバランスが崩れない様に注意することが大切なのです。

また、日和見菌に様々な種類がありますが、例えば腸内細菌のバクテロイデスとかユウバクテリウムなどや無毒株の大腸菌、腸内だけではなく口腔などにもいる嫌気性連鎖球菌(鎖状に配列された球菌の総称)などが代表的なものです。ちなみに嫌気性のものは、空気が存在する場所より空気が無い所の方が繁殖しやすい性質を持つものです。

 

日和見感染症とは

本来、日和見菌は健康な人にとっては無害ですが、免疫力が大幅に低下している時、例えば重い病気に罹ったり、重度の糖尿病や腎不全・肝不全といった病気を患っている場合、更には大きな手術の後や過度のストレスを受けたりしている場合は大変危険な菌になり得ます。通常(健康な状態)であれば免疫の力によって増殖が抑えられている(潜伏感染していた病原性の低い)細菌=病原体が、にわかに増殖して感染症等を引き起こすことがあるからです。

また、老化の進行による体力減衰等の状態の高齢者、そして免疫不全の人はもちろん、(臓器移植等で)免疫抑制剤を使用していたりステロイド剤を服用している患者や、癌(がん)などの悪性疾患、白血病に悪性リンパ腫、後天性免疫不全症候群(AIDS)などに罹患した人なども、(同じく免疫力が落ちている為に)同様の症状を発症する恐れがあります。

そして、こうした免疫の働きが大きく低下し病気に対する抵抗力が弱まっている場合に、本来ならば感染を起こさない様な弱い細菌=病原体(弱毒微生物・非病原微生物・平素無害菌など)が原因で発症する肺炎や敗血症などの感染症のことを『日和見感染症』と呼ぶのです。

尚、日和見感染症を起こす原因となる細菌=病原体は、通常でも私たちの身の回りに多く存在しており、外部から人体に侵入してくる外因性の菌もありますが、あらかじめ人体に内在している内因性の常在細菌が多くあります。

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