第二次世界大戦中に製造された“ウィリスMB”は、戦後に“M38”として米軍に制式採用される後継モデルと、これ(“ウィリスMB”)を民生用にモディファイした“CJ(Civilian Jeep)”シリーズへと別れ、それぞれに進化を続けてきた。やがて軍用モデルの方はフォード社製のジープ後継モデル“M151”の登場と共にシェアを減少させる。
一方の“CJ”シリーズは、幾度ものモデルチェンジを経てクライスラー社の“ラングラー(Wrangler)JK”型へと引き継がれ、多数のサブブランドモデル(“ラングラー”の他に“チェロキー”や“コマンダー”等)を有しながら、本年(2018年)にもフルモデル・チェンジを迎えたが、いまだにセブンスロットグリルの面構えは健在だ。
※“M38”は“ウィリスMB”の直接の後継車種で、1949年~1952年にかけて約60,000両が生産された。1952年からは改良型の“M38A1”の製造が行われ、1970年代まで続いた。
※“M151”はフォード社が開発したジープ型軍用車輌で、米陸軍では1960年代前半以降、1990年代の初期まで使用されたが、後に後継車のハンヴィー“”に更新された。この“M151”は、著作権や商標等の権利の関係でフロントグリルは横スリットになっている。
※戦後間もなく、余剰の“ウィリスMB”が民生用に“CJ-1/Agri jeep”として軍用とは分けて販売された。フォード社は終戦前に生産を打ち切っていたので、“フォードGPW”の余剰は出なかったと云う。
※1953年、ウィリス社はカイザージープ社に買収され、カイザーウイリスモータース社になった。その後、今度はAMC(アメリカン・モータース・カンパニー)社に吸収合併される。1987年には、ジープ部門がクライスラー社に買収されて現在に至る。
ところで、“ジープ(Jeep)”の名の由来は、いちばんポピュラーな説としては、「ゼネラル・パーパス(General Purpose、万能・汎用)」という語意から派生して自然と“ジープ(Jeep)”となったというものがあり、その頭文字のGPという発音が縮まって一旦『Geep』となり、次いで文字に書く時に“G”の代わりに“J”が使われることがよく無知や冗談から行なわれており、そのせいでJPを経て『Jeep』となったとするが、これも数ある説の一つに過ぎない。
また、「Government-use(政府用)」の“G”と「ホイールベース 80インチの車両」を表す識別符号の“P”を組合せTた“GP”から、上記と同様の経緯を経て『Jeep』と命名されたという異説もある。更に、漫画『ポパイ』に登場する“ユージン・ザ・ジープ”という謎の生物の影響を支持する説もあるが、どちらかと云うと珍説に近いだろう。
この様に明確な由来は不明確であるが、既に当該の小型偵察車が配備された前戦において、1941年にはこの通称が用いられ始めていたという記録が残っているが、1930年代後半から米陸軍では軍用トラック全般を“ジープ(Jeep)”と呼んでいたともされており、結局のところ定説はなく、誰ともなく周囲の者が呼び始めた自然発生的なものと考えられている。
ちなみに、新聞やラジオなどの報道機関では、ウイリス社の量産試作車は“クァッド(Quad)”や“ビープ(Beep”)とか“ミゼット(Midget)”と表現されていた。また同様にフォード社の初期のモデルは、“ピグミー(Pygmy)”や“ブリッツ・バギー(Blitz Buggy)”と呼ばれていたと云う。
※“ジープ(Jeep)”という言葉は、小型で活発なタイプの自動車なら、どの様なクルマにでも使用されていたとされる。
※ダッジWCシリーズの軍用トラックにも、兵士たちからWC-52などの様に“ビープ(Beep)”と呼ばれていたとの記録が残されている車輌もある。
そして初期開発に関わった各社においては、皆、自社の試作車が“ジープ(Jeep)”という不滅の名前で呼ばれた最初のクルマであると主張していた。ウイリス社はテスト・ドライバーの口を借りて、フォード社は技術者の発言から、バンタム社も当然ながら自らの試作車が本当の“ジープ(Jeep)”であったと表明していた模様である。
さて“ジープ(Jeep)”という名称は、第二次世界大戦後、ウィリス社によって商標登録されて、以来、“ジープ(Jeep)”は全世界で愛されて4輪駆動型オフロード・カーの代名詞となった。
その後は、製造メーカーの合併や買収などにより商標権は転々とし、現在はクライスラー社が商標を保持しており、現行モデルに至る迄、その名称は継承されている。
大戦中の兵士の回顧談では、ジープはよく盗まれたと云う。ドアが無かったから、当然ドアロックも無かったし、試作モデルの頃に付いていたイグニションキーが量産モデルでは起動スイッチになっており、個別のイグュションキーは不便だと考えられていた。
その為に泥棒目的や遊びで乗り廻す不埒な兵隊連中から“ウィリスMB”や“フォードGPW”を守る為に、ジープの運転者たちは苦労したが、一番の対策としてはディストリビューターのローターを外しておく方法が多く用いられたそうである。しかし、常習的な泥棒たちは予備のローターを用意してまでも盗みを続けたとされる‥‥。
【ジープ 性能諸元(Willys MBの仕様)】
水冷直列4気筒 定員4名+貨物250kg
排気量:2,190cc/54HP
全長:3,320㎜ 全幅:1,580㎜ 重量:1,377kg
生産台数:約647,900台
(バンタムBRC40+ウィリスMA/MB+フォードGP/GPW、凡そ62万台~65万台まで諸説あり)
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